見出し画像

やっぱりかっこいい、痺れる私のヒーローたち≪Promise/プロミス≫

※ヒーローショーのレポートではございません。

9月5日、ユニセフシアターというユニセフ協会が運営する様々な映画の上映+講演付きのイベントに行ってきました。観た映画はイスラエルとパレスチナの子どもの交流を描いたドキュメンタリー「プロミス」で、講演はパレスチナ研究の第一人者である岡真理先生でした。

映画の感想と講演含めて感じたことを書き留めたいと思います。

映画「プロミス」

画像1

(画像出典:http://manryu.xrea.jp/israel.html)

パレスチナとイスラエルの子どもの交流は、字面ほど簡単なことではありません。彼らはこの映画が製作された1990年代の終わりも今も、隣り合って暮らしていながら交わりあうことはほとんどなく、互いの生活圏は無数の検問所とコンクリート壁とフェンスとによって分断されています。学校や大人から教わること、日常で経験することはお互いへの不信感を増させるばかり。

友達になんてなれっこない

と作中、両方を行き来して撮影を続ける監督に子どもが漏らすシーンもあります。

子どもたちそれぞれの育った環境、立場、経験から語られていくパレスチナ問題。誰が悪いのか。自分たちはどうするべきなのか。ただ、仲良く平和に暮らすことはできないのか――。

印象的なのは、お父さんが危険人物とみなされて裁判も起訴状も無しに収監されている、難民キャンプに暮らす少女サナベルの言葉でした。

「どうして分かり合えないなんて言うの?誰か私たちの思っていることをイスラエルの子どもに伝えてみたことがある?○○(友人の弟)を殺したのは大人よ。子どもに罪はない」

その前に、明るく取材に応じていた彼女がふいに涙を流すシーンがありました。お父さんとの面会も、ごくたまにほんの30分だけ。その後に出てくる言葉は重みがあります。

一同は彼女に押され、難民キャンプにイスラエルの子どもを招待するのです――。

招待された双子のイスラエル人の兄弟は、ひとしきり遊んでごはんも食べて、ディスカッションの時間になったときこう言います。

ここに来るまで、ハマス(パレスチナで和平プロセスに反対していた政党。イスラエル側からはテロ組織扱い)を信じる人たちは頭が変なんだと思ってた。だけど、今日一日過ごしてみて、僕がもし君たちの立場だったら、やっぱり同じ言葉を壁に書くと思う」

※キャンプの壁には「渇き果てた土地には血を注がん」というスローガンが。双子はそれを見ていました。

この言葉もとても印象的でした。そして、嬉しかった。外部の人間でもそう思うのだから、双子を招いたキャンプの子どもたちはなおさらだったでしょう。

けれどその後、彼らが交流を続けることは叶っていません。2年後に取材したときには、電話はするが検問所は越えられていないと。

彼らは今30代になっているはずです。当時の交流をどういう風に感じているのでしょうか。どういう境遇を生きているのでしょうか。イスラエル側の双子は兵役義務がありますから、もう占領軍の兵士という立場を経験したはずです。かつての友に銃を向けることをどう感じたのでしょうか。

一人一人に会えることなら会ってみたい。

この映画の””もきっととても大切な証言になると思うからです。

講演を含めて

講演では映画の背景となったパレスチナ問題の歴史やその発端、現在のパレスチナの状況などをお話しいただき、知らないこともあって段々身体が小さくなりながら聞いていたのですが、質問で最近話題になったUAEとイスラエルの国交正常化の話がありました。

こうした動きでもってイスラエルの加速度的な占領・入植・占領して入植した土地の併合を止めるのが有用か、というご質問でしたが、アラブ諸国の姿勢は

「併合に反対するより、もう儲かる方に走ろうかな」

というものだと岡先生。これまでは歴史的に、パレスチナの大義はアラブ諸国の大義だ、と強気でイスラエルの国際法違反に反対してきたのに、儲かればそれでいいという価値観に変わってきている。

一方で、これを聞きながら思い出していたことがありました。

私がパレスチナでホームステイをしていたとき。プログラムを通してだったので料金は支払っていたのですが、ある日家族から「あのお金は受け取っていない。(その組織に)寄付した」と言われたのです。

別に、裕福な家庭ではありません。自営業でむしろよくまかなっているなと思うくらい、家族の人数も多いし。びっくりしてなぜかと尋ねたら、彼は

お金は大事じゃない

と言い切りました。

私の中では見事な対比ができあがり、うわ、やっぱりパレスチナ人かっけーー!と心の中で拍手。

プロミスのサナベルをはじめとする子どもたちも、相手を慮り、いたわって、占領下で抑圧されている現実を大人のような冷静さで生きています。それを素敵なことだとは言えないけれど、やっぱり、私にとって彼らは尊敬するヒーローなのです。

〈プロミス予告編〉

--------------------------------------------------------------------------------------
☆アカウント登録なしでもスキできます。よろしくお願いします。

Facebook  https://www.facebook.com/kakehashi.notwall
Instagram https://www.instagram.com/kakehashi0212/
HP https://kakehashi-palestine.com/
--------------------------------------------------------------------------------------

架け箸はこれからも継続的にパレスチナを訪れ、日本に出回らない生の情報を発信したいと思っています。いただいたサポートは渡航費用や現地経費に当てさせていただきます。