不二家の社外取締役に女優の酒井美紀氏が内定 〜コーポレートガバナンスを考える〜

このような報道がありましたので、上場会社のコーポレートガバナンスを客観的に俯瞰している公認会計士として、皆さんの思考がクリアになるような情報を提供します。

報道によると次のとおりです。

「2020年、酒井さんには『ペコちゃん70周年アンバサダー』に就任していただきました。その経験を生かしていただき、今回社外取締役に就任していただくことになりました。酒井さんは主婦でもあるので、その立場も生かしていただき、経営に助言をいただきたいということで、取締役にという運びになりました。株主総会前ということもあり、そのことを広報する予定は、まだありませんでした」(不二家広報室担当者)

結論

個人的な結論としては、助言をもらうだけなら、何もボードメンバーでなくても良いと思っています。それこそアンバサダーのままでも本当に必要なら助言はもらえるでしょう。

取締役になれば、会社の重要な意思決定の全てに議決権を有することになります。主婦の立場からの助言をもらうというだけでは、ボードメンバーの適格性に対する疑問に答えたことにはなりません。

ダイバーシティ経営

不二家に限らず、ここ最近、会社経営から距離のあった有名人を社外取締役に起用する人事が流行しています。

これは、ダイバーシティ経営の流れを受けたものかと思います。

 女性をはじめとする多様な人材の活躍は、少子高齢化の中で人材を確保し、多様化する市場ニーズやリスクへの対応力を高める「ダイバーシティ経営」を推進する上で、日本経済の持続的成にとって、不可欠です。

要するに、競争優位を確保するために経営者も多様な人材を確保しましょうねということです。

しかし、経営に知見のない方に議決権を渡すことまで必要でしょうか。

コーポレートガバナンスコード

東京証券取引所の市場区分再編を控えて、2021年にコーポレートガバナンスコードの改訂が予定されています。

その改訂作業において、金融庁の有識者会議では、次のとおり意見書を取りまとめています。

コロナ後の企業の変革に向けた取締役会の機能発揮及び中核人材の多様性の確保

https://www.fsa.go.jp/singi/follow-up/siryou/20201208/01.pdf

 デジタライゼーションが加速し、企業活動と社会の持続可能性の両立を求める声が急速に高まる中で、企業が今までの経営人材だけでこうしたコロナ後の経営課題を先取りすることは容易ではない
 取締役会には、こうした事業環境の不連続性を踏まえた上で、経営者の迅速・果断なリスクテイクを支え、重要な意思決定を行うことが求められる。
 この観点から不可欠なのが、取締役の知識・経験・能力、さらには就任年数に関する適切な組み合わせの確保である。取締役会において事業戦略に照らして必要なスキルが全体として確保されることは、取締役会がその役割・責務を実効的に果たすための前提条件と考えられる。こうした取締役会のスキル (知識・経験・能力)の構成の考え方は、取締役の選任に当たって適切に開示され、投資家との対話を通じて共有されることが求められる。

なるほど、ここだけ読むと、全体として多様なスキルを確保するためには、主婦目線みたいなものも有用かもしれません。

しかし、これには続きがあります。

 この際、独立社外取締役は、企業が経営環境の変化を見通し、経営戦略に反映させる上で、より重要な役割を果たすことが求められる。特に当該企業に限られない幅広い経営経験を備えた人材を取締役会に迎え、そのスキルを取締役会の議論に反映させることは、取締役会機能の実効性向上に大きく貢献すると期待される。

あくまで経営経験があることが前提なんです。その上で幅広い知見を備えているかが問われるわけです。

おわりに

株主総会では、以上の観点から質問が出ることでしょう。皆んなが腹落ちするような、会社からの明確な回答を期待しています。

※酒井美紀さんの資質については存じ上げません。本稿は、一般論として情報提供を行うことが趣旨です。


最後までお読みいただきありがとうございます😊少しでもお役に立ったらスキ(❤️)していただけると嬉しいです。note会員でなくても押せます。