マガジンのカバー画像

国税関係

38
元国税職員による税務調査の記事や税務職員になるための情報を掲載しています。
運営しているクリエイター

#とは

税務調査の話 その7 〜非違事項別解説① 売掛金〜

元国税職員による税務調査のあれこれ。今回から非違事項(誤りや不正による要是正項目)別の解説をしていきます。いよいよ筆者の経験をお披露目するシリーズとなります。初回は売掛金について。 これまでの記事(税務調査の話その○) 売掛金の調査は基本中の基本駆け出しの国税職員(事務官)が最初に見方を覚えるのが売掛金の計上漏れです。 売上は、商品を引渡した時やサービスを提供したときなどに計上することなになっています。請求書をお客さんに送付しているかどうかは関係ありません。 小規模企

税務調査の話 その8 〜非違事項別解説② 現金売上の除外〜

元国税職員による税務調査のあれこれ。前回に引き続き非違事項(誤りや不正による要是正項目)別の解説をしていきます。今回は不正の一つである売上除外のうち、現金売上の除外を取り上げます。 これまでの記事(税務調査の話その○) 売上除外とは売上を意図的に帳簿上計上しないことを売上除外といいます。ただし、単に売上を計上しないだけでは、複式簿記を前提にすると、相手勘定の現金や預金(現預金)の残高と合わなくなってしまので、何らかの細工をしなければなりません。なお、売掛金や受取手形はいず

税務調査の話 その9 〜非違事項別解説③ 振込売上の除外〜

元国税職員による税務調査のあれこれ。前回に引き続き非違事項(誤りや不正による要是正項目)別の解説をしていきます。今回は不正の一つである売上除外のうち、振込売上の除外を取り上げます。 今回の記事は長いですが、割と力を入れて書いたので最後までお読みいただけると嬉しいです。読むのが大変という方は、”筆者が経験した事案"という項目だけでもお読み下さい。 これまでの記事(税務調査の話その○) 振込売上の除外売上代金の回収手段として最も多いのが銀行振込です。社歴の浅い企業だと100

税務調査の話 その10 〜非違事項別解説④ 処分・認定賞与等〜

元国税職員による税務調査のあれこれ。前回に引き続き非違事項(誤りや不正による要是正項目)別の解説をしていきます。今回は、少し毛色の異なる処分について取り上げます。 これまでの記事(税務調査の話その○) 処分とは会計では、複式簿記を前提にしていますので、期末の売上の計上漏れを修正すると、その相手勘定である売掛金の修正も必要となります。仕訳で書くと次のとおりです。 税務上は、複式簿記を明示的に取り扱いませんが、同じような考え方をとります。 売上計上漏れの処分は何ですか?

税務調査の話 その11 〜非違事項別解説⑤ 雑収入除外〜

元国税職員による税務調査のあれこれ。前回に引き続き非違事項(誤りや不正による要是正項目)別の解説をしていきます。今回は不正の一つである雑収入除外を取り上げます。 これまでの記事(税務調査の話その○) 基本は売上除外と同じ雑収入除外も売上除外と同じ収入の除外なので、その性質や除外方法(簿外預金等)ついては、基本的に売上除外と同じです。詳しくは、こちらの記事の「売上除外とは」という項目をご参照下さい。 売上を除外するのはかなり大胆な行動であるため気が引けるという心理が働きま

税務調査の話 その12 〜非違事項別解説⑥ 仕入〜

元国税職員による税務調査のあれこれ。前回に引き続き非違事項(誤りや不正による要是正項目)別の解説をしていきます。今回は仕入を取り上げます。 これまでの記事(税務調査の話その○) 仕入の水増し実在する仕入の金額を過大に計上することです。単純な水増しとキックバックに大別されます。 (1)単純な水増し 請求書や領収証等といった証憑書類な金額を書き換えるなどして、実際の金額より高く見せる方法です。お金の動きが記録に表れない現金仕入の場合、水増し分のお金は社長個人の財布に入れて、

税務調査の話 その13 〜非違事項別解説⑦ 在庫〜

元国税職員による税務調査のあれこれ。前回に引き続き非違事項(誤りや不正による要是正項目)別の解説をしていきます。今回は在庫を取り上げます。 これまでの記事(税務調査の話その○) 在庫に関する非違在庫管理の方法が継続記録法か棚卸計算法かに関係なく、売上原価は、期首在庫+当期仕入−期末在庫で計算されるので、期末在庫を過少に計上すると、売上原価が過大になるため、課税所得は低く算定されてしまいます。 このため、期末の棚卸が適切に行われているかについては、税務調査でしっかり確認が

税務調査の話 その14 〜非違事項別解説⑧ 外注費〜

元国税職員による税務調査のあれこれ。前回に引き続き非違事項(誤りや不正による要是正項目)別の解説をしていきます。今回は外注費を取り上げます。 これまでの記事(税務調査の話その○) 基本的には仕入と同じ小売業・卸売業以外では、売上原価の大きな割合を占めることが多い外注費ですが、商品や原材料等のモノの動きを伴わないだけで、不正の態様は仕入と同様です。仕入については↓を参照 外注費については、モノの動きが伴わないこと、一人親方等の個人に対するものも不自然ではないことなどから、

税務調査の話 その16 〜非違事項別解説⑩ 人件費中編〜

元国税職員による税務調査のあれこれ。前回に引き続き非違事項(誤りや不正による要是正項目)別の解説をしていきます。今回も前回に引き続き人件費を取り上げます。 これまでの記事(税務調査の話その○) 法人税法上の損金不算入規定役員報酬に係る定期同額給与、事前確定届出賞与、業績連動給与等、法人税法上には、課税所得の調整により適正な課税から逃れることを防止するための規定があります。 税務調査においても、これらの規定から損金不算入となるものが損金に算入されていないかといった観点のチ

税務調査の話 その17 〜非違事項別解説⑪ 人件費後編〜

元国税職員による税務調査のあれこれ。前回に引き続き非違事項(誤りや不正による要是正項目)別の解説をしていきます。今回は人件費のうち、源泉所得税固有の非違を取り上げます。 これまでの記事(税務調査の話その○) 固有の非違法人税の調査では、売上除外や架空外注費等の処分が認定賞与になると、源泉所得税が追加で課税されます。詳しくは以下の記事をご参照ください。 これは法人税の課税処理に引っ張られるものであり、基本的には法人税の調査の枠組みの中で併せて処理が行われます。 一方、源

税務調査の話 その18 〜非違事項別解説⑫ 経費前編〜

元国税職員による税務調査のあれこれ。前回に引き続き非違事項(誤りや不正による要是正項目)別の解説をしていきます。今回は経費を取り上げます。 これまでの記事(税務調査の話その○) 基本は仕入・外注費と同じ不正の手口については、仕入・外注費と基本的には同じです。詳しくはこちらをご参照下さい。 本稿では、経費に特有の(特徴的な)非違事項について記述します。 個人的経費の付け込み法人の場合は役員個人の経費を会社の経費に計上し、個人事業主の場合は家事費を事業所得計算上の必要経費

税務調査の話 その19 〜非違事項別解説⑬ 経費中編〜

元国税職員による税務調査のあれこれ。前回に引き続き非違事項(誤りや不正による要是正項目)別の解説をしていきます。今回も前回に引き続き経費を取り上げます。 これまでの記事(税務調査の話その○) 他科目交際費交際費となる支出を交際費以外の科目(会議費等)で処理していることです。 法人税では、交際費の損金不算入制度(経費にできない)があります。戦後間もない時代、冗費を節約して資本蓄積を促進する目的で、日本全体で効果のあやしい交際費の無駄遣いはやめようということで導入されました

税務調査の話 その20 〜非違事項別解説⑭ 経費後編〜

元国税職員による税務調査のあれこれ。前回に引き続き非違事項(誤りや不正による要是正項目)別の解説をしていきます。今回は誤りやすい経費について取り上げます。 これまでの記事(税務調査の話その○) 調査官からすると申告是認(何も指摘できないこと)は是非とも避けたいところです。そのため、過去の経験から誤りやすいと思われる処理を丹念に調べることが多いです。 本稿では、筆者がよくチェックしていたものをいくつかご紹介します。なお、これら以外にもたくさんあると思いますが、網羅性は意識

税務調査の話 その21 〜非違事項別解説⑮ 貸倒損失〜

元国税職員による税務調査のあれこれ。前回に引き続き非違事項(誤りや不正による要是正項目)別の解説をしていきます。今回は貸倒損失を取り上げます。 これまでの記事(税務調査の話その○) 貸倒損失の正しい処理については、筆者の税務調査の経験上、税理士の中でもきちんと理解していない方が多かった印象です。それでは、税務調査の観点からみていきましょう。 貸倒損失が認められる場合法人税基本通達9-6-1〜9-6-3に規定されています。 1 金銭債権が切り捨てられた場合(9-6-1)