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税務調査の話 その19 〜非違事項別解説⑬ 経費中編〜

元国税職員による税務調査のあれこれ。前回に引き続き非違事項(誤りや不正による要是正項目)別の解説をしていきます。今回も前回に引き続き経費を取り上げます。

これまでの記事(税務調査の話その○)

他科目交際費

交際費となる支出を交際費以外の科目(会議費等)で処理していることです。

法人税では、交際費の損金不算入制度(経費にできない)があります。戦後間もない時代、冗費を節約して資本蓄積を促進する目的で、日本全体で効果のあやしい交際費の無駄遣いはやめようということで導入されました。時限立法である租税特別措置法に規定されていますが、累次の改正を経て今なお残り続けている制度です。

現在は、1人当たり5000円以下の飲食費はこの制度の対象外であったり、それ以外の飲食費でも半分は認めてあげたりしているほか、中小法人では一定額(600万円)まで全額損金として認められています(定額控除限度額)。詳しくは、こちらをご参照下さい。

調査官目線としては、交際費で増差を取るのは難しくなってきているのではないでしょうか。

筆者が税務署にいた頃(リーマンショック前)は、もう少し厳しい規定でした。飲食費の特例はありませんでしたし、中小法人の定額控除限度額も400万円、更に400万円以下でも支出額の10%は損金不算入となっていました。

ということで、交際費の支出額が小さい中小法人でも、会議費、福利厚生費、旅費交通費等の総勘定元帳を通査して、交際費となりそうな飲食費等をチマチマと積上げるようなこともやっていました。3年間も遡れば数百万円になることも珍しくなく、この10%である数十万円が増差になるので、税務署の一般調査部門としては、是認回避の手段としてはなかなか有効でした。交際費の処分は留保ではなく社外流出なので、売掛金の期ずれのように「そんあの意味あるのか」という批判もかわせるのがミソです(笑)

ややテクニカルですが、処分についてはこちらをご参照下さい。

しかし、現在の中小法人では、前述のように600万円までは他科目交際費を認定しても増差が出ないので、この手が使いにくくなっていると思われます。

ということで、他科目交際費の調査は、資本金1億円超の大法人(国税局調査課所管法人)か、中小法人でも元々の交際費の支出額が突出している会社で重点的に行われていると思います。

おわりに

今回は交際費に絞って記事にしました。次回はその他の誤りやすい経費を取り上げます。お楽しみに!

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