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税務調査の話 その14 〜非違事項別解説⑧ 外注費〜

元国税職員による税務調査のあれこれ。前回に引き続き非違事項(誤りや不正による要是正項目)別の解説をしていきます。今回は外注費を取り上げます。

これまでの記事(税務調査の話その○)


基本的には仕入と同じ

小売業・卸売業以外では、売上原価の大きな割合を占めることが多い外注費ですが、商品や原材料等のモノの動きを伴わないだけで、不正の態様は仕入と同様です。仕入については↓を参照

外注費については、モノの動きが伴わないこと、一人親方等の個人に対するものも不自然ではないことなどから、不正が行われやすい傾向にあります。

筆者が経験した事案

内装工事を請け負う小さな建設業の会社の話です。工事については、雇用している従業員のほか、常用の一人親方(外注費)を数名使って行っています。

外注費の支払については、現金で行われていましたが、業者柄特に不自然ではありません。請求書や領収証にも特に不審な点は見当たりませんでした。

小さい会社の場合、現場ごとの原価管理を行っていないことも多いため、会社の内部にある資料では不正の端緒を掴むことはできませんでした。

ということで、外注先ごとに毎月の支払額をメモして、税務署に戻ってからKSK(国税総合管理システム)で外注先の課税事績を調べてみました。KSKについてはこちらを参照

すると、課税事績は確認できたものの、そのうち一人については、ここ数年確定申告が行われていませんでした。一人親方の場合、外注先で確定申告をしていないケースも多いので、架空外注費かどうかはまだ分かりません。なので、速やかに反面調査に移行します。

早速、請求書に記載されていた住所に臨場しました。一人親方なので個人のお宅です。ちなみに、電話連絡でアポ取りしてから臨場する場合もあれば、アポなしで臨場する場合もあります。これは調査官の好みによりますね。今回はアポなしでの臨場です。

インターホンを鳴らしても出てこないので、「○○税務署でーす!」と何度か呼び掛けてみたところ、ようやく家主が姿を見せました。課税事績で高齢であることは把握していましたが、思っていた以上に年齢を感じさせます。

「○○さんでよろしいですか?」と尋ねると、耳に手を当てる仕草をされました。筆者は声が大きい方なので、これで仕事ができるのかなと疑問が湧きました。

ひとまずお宅に上げていただき、お話を伺うことになりました。すると、確かに調査先の会社で内装工事を行っていたが、自分は既に引退していること、体力も衰えていてとても工事ができる状態ではないことなどを話していただけました。

これで架空外注費はほぼ確定です。証拠がヒアリングだけの場合、通常は、証拠固めとして、その場で供述録取書を作成して、署名押印を求めるのですが、その作業もおぼつかない感じだったので、敢えて作成はしませんでした。

ヒアリング内容を社長にぶつけると、あっさりと架空外注費の事実を認めました。請求書については、外注先の引退時に白紙のものを全て引き取り、毎月自分で作成していたとのこと。支払っていたとされる現金は個人的に費消していたので、処分は認定賞与とし、不正の規模は数年間のトータルで数百万円となりました。

おわりに

架空外注費については、全くのでっちあげであることも多く、ご紹介した事例は、割と珍しいケースかと思います。次回もお楽しみに!

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