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"Goal Oriented"で優れたプロダクトロードマップ策定のための5つのステップ

プロダクトマネージャーにとって、プロダクトが進むべき道のりを規定するプロダクトロードマップの策定は最も重要な仕事の1つです。

しかし、プロダクトロードマップの策定は、顧客ニーズ、競争戦略、技術変化など様々な要素を考慮する必要があり、実はかなり難易度が高く奥が深いものでもあります。

本記事では、プロダクトマネージャーが優れたロードマップを策定するための5つのステップを解説します。

自社のUltimate Goalと現状のギャップを明確にし、ユーザー視点や競合分析、市場の変化を踏まえてゴールを設定する方法から、ゴールから導き出された施策の評価、"Goal Oriented"なプロダクトロードマップへの落とし込み方まで、具体的な方法論を紹介します。

これからプロダクトロードマップの策定に取り組む方はもちろん、既にロードマップを運用されている方にとっても、自社の戦略を見直すきっかけになるはずです。ぜひ最後までご覧ください。



【STEP1】プロダクトロードマップ策定の材料を揃える

プロダクトの中長期のロードマップを策定するにあたっては自社のビジョン、顧客ニーズ、競合環境など様々な要因を総合的に踏まえて考えることが求められます。

それをいきなり考えようと思ってもなかなか難しいため、まずは以下のプロダクトロードマップ策定の補助線となる問いへの回答を考えることで”材料”を揃えることをお勧めします。


a. 自社のビジョン視点

  • 自社のUltimate Goal(究極のゴール/存在理由)はなにか?

  • そのプロダクト/サービスのUltimate Goal(究極のゴール/存在理由)はなにか?

  • 自社やプロダクト/サービスのUltimate Goalと現状の差分を見た時に、決定的に足りていないものはなにか?

  • 他の業種で自社のサービスと構造が似ていて成功しているサービスにはどのようなものがあるか?そのサービスが実現していることで、自社にも活かせそうなことはなにか?


b. ユーザー観点

  • このプロダクトの買い手/利用者は根本的には何を解決したくてこのプロダクト/サービスを購入したり利用しているのか?

  • プロダクトの買い手/利用者が解決したいジョブを解決できている度合いは100点中何点か?残りの点数を埋めるために何が必要か?

  • 現状、ターゲット層から自分たちのプロダクトはどのような認知をされているか?その認知は自分たちが理想とする認知と合致しているか?合致していなければ、どうすればそのギャップを埋められるか?

  • パーセプションフローの各段階(初期状態→認知→興味→購入→試用→満足→再購入→発信)で何がボトルネックになっているか?言い換えると遷移率が低い段階はどこか?

  • 現状の顧客とは別に新たに獲得したい顧客層はいるか?


c. 競合視点

  • 直接競合はどこか?ユーザーが同じ課題を解決するために採用している既存の手段はなにか?

  • 競合にされて最も困る打ち手はなにか?(→それを自社が先んじてやる)

  • 競合に比べて自社が顧客から特に支持されていること(優位性)で、より磨くことで顧客の支持をより得られる伸びしろはなにか?

  • 競合の成功事例から、自社の事業に応用できる戦略や打ち手は何か?

  • 競合に比べて自社が劣っていることはなにか?顧客が自社と競合を同時に検討した際に、競合に流れてしまっている理由はなにか?

  • あえて悲観的に5年後に自社の事業がうまくいかなったとして、その理由を想像したときに、競合観点で思い浮かぶ失敗理由にはどのようなものがあるか?(→その可能性を潰す打ち手を考える)


d. 市場/技術の変化視点

  • 今後3~5年の社会、市場、技術の変化において自社にとって追い風となる変化にはどのようなものがあるか?

  • 今後3~5年の間に自社の強みやポジションにダメージを与えるような社会、市場、技術の変化にはどのようなものがあるか?

  • あえて悲観的に5年後に自社の事業がうまくいかなったとして、その理由を想像したときに、社会/市場/技術といった外部の変化という観点で思い浮かぶ失敗理由にはどのようなものがあるか?(→その可能性を潰す打ち手を考える)

  • 新しく生まれている技術の中で自社のサービスに活かせそうな技術の種はなにか?その技術が実用レベルに達したら自社サービスにどんな形で活かせるか?


【STEP2】問いから浮かび上がったゴールの項目を3軸で評価して優先順位付けする

STEP1の問いへの回答から浮かび上がった達成したい項目それぞれについて以下の3軸で1, 3, 5の三段階でスコアリングします。

a. ユーザーへのインパクト … ユーザーに対してポジティブな影響がどれくらい大きいか
b. 緊急度 … 競争環境や顧客からのリクエストなどを加味
c. 実装工数の低さ … 施策案化していないので超ざっくり評価でOK。実装工数が低いほど5点

そして、上記3点のスコアを足し上げたスコアを計算し、それを参考にしながらゴールの優先順位を決めます。

注1) スコアはあくまでヒートマップスコア的なものとして扱い、最終的な優先順位はチームで議論して決める
注2) スコアは足し上げではなく掛け算での集計方式もあるが、どちらにするかはエッジケース(5, 5, 1)と中間ケース(3, 3, 3)のどちらを優先したいかでチームで決める(足し算ではエッジケースが勝ち、掛け算では中間ケースが勝つ)。


ユーザーが企業ユーザーと一般ユーザーなど、2サイド以上に分かれる場合はそれらを細分化したスコアリングを行います。


また、種々のKPIの中で特定の指標を伸ばしたい場合は、ユーザーへのインパクトを指標ごとに細分化したものを作成してスコアリングを行います。

例)写真投稿SNSの場合
投稿率の改善を最重視し、次点で起動頻度の改善を重視しているフェーズの場合、投稿率改善へのインパクトが5点の施策の中のスコアリング順でまず優先度を判断し、その次に投稿率改善へのインパクトが3点の施策と起動頻度改善へのインパクトが5点の施策のスコアリング順で優先度を判断するなど。


【STEP3】優先度を高く評価したゴールについて、それを実現するための施策をブレストする

この段階ではまだ実現したい状態=ゴールの粒度で、施策レベルには落とし込まれていないため、優先度の高いゴールそれぞれについて、それを実現するための施策をブレストしましょう。


【STEP4】洗い出した施策を有効度と工数で評価する

この時点で挙がっている施策はまだ玉石混交のため、ヒートマップ投票などを通して対応するゴールの実現へのインパクトが高そうな施策を絞り込みます。

そして、それらの施策に対してざっくり何週間で実現できそうかを粗見積もりをしましょう。その際に、この必要期間をプロダクトロードマップの期間に使えるとロードマップ作成がラクなため、現実的なエンジニアの投下リソース下での期間を粗見積もりするのがオススメです。


【STEP5】優先順位付けしたゴールと対応する施策を”Goal Oriented”なプロダクトロードマップのフォーマットに落とし込む

前提としてプロダクトロードマップは、“Feature Oriented”なロードマップではなく、”Goal Oriented”なロードマップをつくるべきです。

“Feature Oriented”なロードマップ、つまり「いつどんな機能をリリースするかの記述に終始したロードマップ」では、「なぜその機能をそのタイミングでリリースするのか」という理由が曖昧になったり、中長期的な戦略と実装スケジュールの連動が薄くなりがちだからです。

そうではなく、達成したい状態=ゴールが時間軸の中で設定されており、それに紐づく形でリリースする機能が規定されている"Goal Oriented"なロードマップをつくりましょう

それにより、各リリースがしっかりとプロダクトの成長ストーリーとひも付きやすくなりますし、各機能が本当に成功したかを判断しやすくもなります。

”Goal Oriented”なロードマップのフォーマットとしては以下を推奨します。

https://www.appcues.com/blog/choosing-the-right-product-roadmap-type


また、以下の2つの時間軸でロードマップを策定するのがオススメです。

① 3ヶ年程度の長期でプロダクトのビジョン実現をステージごとに整理したもの
② 上記のロードマップのうち直近1年間を細分化してロードマップ化したもの


こうした一連のプロセスを経ることで、闇雲にプロダクトロードマップを考える場合と比べて圧倒的に良いロードマップがつくれるはずです。


さいごに

2月に「生成AI時代を勝ち抜く事業・組織のつくり方 」という本を出しました!

プロダクトロードマップを考える上で、生成AI技術の活用は避けて通れないテーマだと思います。プロダクトづくりに関わる方はぜひ本書を通して生成AIへの理解や、それを事業・プロダクトに活かす具体的な方法論を学んで頂けますと幸いです!


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