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バカの極み(ほぼワイの妬み)



中学時代、部活でむちゃくちゃいじめを受けた私を心配した両親によって、家庭教師をつけてもらう事になった。両親は常に死ぬ気で働いていたので、経済力はあったからだ。
お陰で成績は安定したのだが、いかんせん私はバカだった。

というか、基本お勉強が大嫌いだったのだ。

成績は安定して中の中くらい。オール3というやつで、突出した能力もなかった私は、次第に家庭教師を困らせていた。と思う。
そもそもこの家庭教師。めちゃくそ頭が良かったのだ。

このクソ田舎の最高峰優秀高等学校を卒業し、どこかは知らんが東京で数学の勉強をした彼女は、もう経歴からして頭よかった。

基本情報として、クソ田舎ゆえ公立校のレベルは総じて低くはない。まあ低いのもあるにはあるがピンキリで、基本的に私立バカ、公立頭いい、的な価値観がある。
そんなわけで最高峰優秀校も無論公立校だが、その名を地元で知らない奴は居ないし、時々全国レベルで話題になるほどレベル高い学校だった。

そんな学校の卒業生が、なぜかうちに来る事になった。で、どうやら普段はフリー家庭教師をして小遣い稼ぎをしてるらしい。
当時彼女は25、6。
タイトルが妬みなんで書いてしまうが、私がその年のころはリーマンショック真っ只中なため、フリー家庭教師などしてる暇はなかった。セクハラを受けながら必死で日銭を稼いでいたよ。

頭いいっていいなー。実家暮らしっていいなー。家庭教師もうかるもんね。

などとは思わない。なんなら25、6の私も実家暮らしだったし、頭いいのは努力だもんね。
少なくともお勉強は努力だ。
と思っていたが、天才にとって勉強はマジにゲーム感覚らしい。

かれら天才は、勉強で問題が解けることが楽しいらしい。達成感だそうな。例の賢い家庭教師はそう曰う。

はっ、知らんがな。
バカはな、この一門正確に解けないと、進路先が無くなるんだよ。それなのにテストだ宿題だ、次から次へと難題よこしやがって。分かんないしとてもつまんない。社会人になったら分からなくても皆普通にしてるよね。これ全部時間の無駄じゃないの?と本気で興味のない教科書をしかたなく開く。
けど、その興味のない世界からふるい落とされないように、必死に醜く争う。
これがバカにとっての勉強である。

また、受験となると、田舎では地元でうまく人生歩めるかの命題もかかってる。つまり学歴カーストがかかってくる。そんな状況になるのだ。そんなもん楽しめるか。

当時公立校に落ちると、最低数年は地元で嫌なレッテルを貼られるので、絶対に落ちたくないし、あんまりおバカ学校には行きたくなかった。ガチで永久的に下に見られる。
ちなみにもう20年近く経つが、意地悪な同級生と、瞬間意地悪してきた同級生が公立校に落ち、やむ終えず落ちた人間用の墓場みたいな私立に行ったのを私は覚えてる。多分このさきもずーっと覚えてる。
こういう胸糞悪い奴だっているのだ。

頭の良い人というのはこういう思いを抱かずに済む。ただコツコツと、ゲームのレベル上げごとく勉強を楽しくやれば、結果(成績)もついてくるため楽しいらしい。
本当知るかクソが!!
お前らが順調にゲームを楽しめるのは、我々バカプレイヤーがいるからだと心得てほしい。踏み台がいなくては頂点など登れはしまい。

たまたま運良く地頭よく生まれた家庭教師は、私のこの腐った性根をまったく理解することはなかった。
勉強は達成感あるじゃん。覚えるだけじゃん、たのしいじゃん。何がそんなに苦痛なの?と。

多分だが、家庭教師の努力で得られるモノと、私の努力で得られるモノは、質も量も全然違うのだろう。だから彼女は、努力という言葉も行為も大好きなように見えた。

実例に例えてみよう。私には東大一発合格した知り合いがいる。彼女は私が1週間30分練習したものを、たった30分でやってのけた。その差7倍。
おそらくそういう現象が、家庭教師と私の間に起きていたのだが、そのことに家庭教師は気付きもしなかった。
時間は平等。人も平等。どうやら彼女は本気でそう思ってるようだった。

彼女は努力からのサクセスストーリーが大好きだったし、それを体現することを自分自身にも、私に対しても望んでいた。
故に家庭教師をしながら、常勤講師をしている際には、その忙しさをこなし切る自分は最高に美しい!と高揚しているようで、めちゃんこ目ん玉輝いていた。

ならばとっとと採用試験受かれよ。

なんの因果か、公立校の常勤講師を2年もやってしまった私は思う。
皆さん覚えておいてください。バカでも大学でて教員免許とれば教壇立てます。
我が子を守りたい保護者の皆様、児童生徒の皆様覚えておいてください。
学生さんは…まあいいんじゃないかな。
流石に言いたいことわかるよね。

そして月日は流れ、私は私立高校入学、家庭教師は正規採用となり、互いの関係を解消した。それから一度も会っていない。

そう。私は結局私立高校に進学した。ただ、墓場私立は免れて、遠すぎて誰も行かなかった、レベル高めに見える私立にいった。一般受験するとそこはレベルが高いのは事実で、田舎的学歴ロンダリングをするにはうってつけの私立高校だった。

別にロンダリングしてねぇけど、田舎の世間の目はこんなもんだ。
いい公立校に入学させた親がいう、
「ジャムちゃんは私立だもんね」
の一言に、さまざまな意味合いが含まれてしまうのを、肌で感じまくっている。今でもたまに。

その私立に入学した理由は、最初に話したイジメだった。
おそらくいじめっ子たちの成績を加味すると、自宅から程近く、学力レベルも程近い公立校にいじめっ子たちも集中することが予想された。

ならば成績の高い公立校に行くしかないのだが、私にもうそんな気力体力はなかった。
それでも、よく毎日学校に通ったと思う。
と、この文章通りに怠惰だった自分を正当化する。
でもな、本当にあの状態で勉強まで頑張るの、今の私にも無理だと思う。
未だに、彼らの自宅には火を放ちたいし、学校自体にもそう思っているのにだ。


家庭教師はこのような、当時の私の行動がまったく理解出来なかったらしく、よくこう口にした。
「レベル高い学校にいったら、いじめなんてないよ」
いやいや、そんな訳なかろうよ。
今、はれて正規採用となったんだから色々イジメの調査表に目を通してほしい。
それとも、私がバカで、バカな人間の近くにいたから不幸が起きたとでも言いたかったのだろうか。
真相はさておき、あなたが何も知らないだけだよ。

そもそも同じレベルの人間をまとめたら、争いは起きる。あの国とこの国がイマイチ仲良くないのはなんでだろうね。そうことだろうよ、と我が夫は言っている。

また彼女は、好んで両親への感謝を教えたがった。当時の私も感謝がない訳ではなかったが、それでも彼女は当時の自分の経験で感謝するとはなんぞや、と、半ば押し付けがましく伝えたがった。

「一人暮らしするといいよ、本当に親に感謝できるから。」

うーん、そんだけお賢い頭でも、そこまで親にしてもらわないと感謝すらできないの?(彼女の一人暮らし経験は主に学生時代。話を聞く限り経済的にはおんぶに抱っこ状態)
と、当時のおバカ頭ですらうっすら疑問だった。そして彼女と同じ歳になった際には、この人本当に裕福で何一つ不自由なく育ったんだと思ったし、さらに10年近くたったら、我が子はこんな風に育ってほしくないとさえ、感じている。

彼女は、結婚し、のちに一児の母となった。
そして私の母は、娘が結婚できるか不安がっていると、元家庭教師につたえたらしい。
すると元家庭教師は満面の笑みでこう言ったそうな。
「私に出来たんだから、ジャムちゃんにもできるよ」


知るか。
なんだなんだ。私に出来たって、何と比べてんだ。謙遜のつもりか。
そういうとこだぞ。滲み出ちゃう優越感。
もはや妬みと卑屈さで真っ黒になっていた私には、彼女の言葉は何一つ正しく耳に入らない。

お勉強のできる人って、なんて時々バカなんだろう。
努力、感謝。理想的な家庭教師というべく、優等生らしく振る舞っているのだが、自分より背が低く、すこしぽっちゃりな体型の妹には、名字ベイブー様と書いたお手紙を送りつけることは、罪悪感を持つこともなく、平気でできた。
しかもそれを他人に平然と言ってのけるのだ。もはやただのサイコパス。

家庭教師のしたことはただのイジメに他ならない。しかも姉妹間。キモチワルイ。
多分いまだに罪の意識なんてない。
これでも郵便って届くんだーって思ったと、無邪気に笑っていた。
一人っ子でよかったと心底思った。
あとこの人ともうすぐ縁が切れるのも、素直に嬉しいと感じていた。

彼女が教員になったばかりのころ、評判は悪かったらしい。当たり前だろう。児童も親もバカじゃない。みんなバカじゃない。
腰据えて働いて、そのことにようやく気が付いたのかもしれない。

もうあれから10年以上すぎた。彼女もしたたかにうまいこと教師をやれていると思う。
サクセスストーリーを信じ、それを子どもたちに目を輝かせながら伝える、よく居る先生になったのだろう。

彼女は私のことを、よく面白いと言った。
頭の中身を見てみたいと話していた。
そしていつか有名になりそうとも。

まあ有名にはなれそうもないけど、多分あなたが見たところで、理解することはできないと思うので、こちらに堂々と記しておく。

でも、もう全て忘れてしまったんだけど、あなたが教えてくれた勉強法はきっと全部正しかった。だから私はオール3が保てたんだと思う。それには本当に感謝している。
ただあなたが眩しすぎただけ。
きっとそうだよ。お互い同じ人間なのさ。
そうですよね、先生。

あとくだんの東大一発合格の知り合いは、かなり久しぶりに会ったにも関わらず、晴れの場の、成人式で堂々と嫌がらせしてきたので、やっぱり天才はおバカかもと、妙な確信をもっている。
おわり。

追記:
本来こちらのタグはよい先生を書くべきなんだと思うけど、大人になった今でも良いな、と思う先生が全く見当たらないので、こんな文章になっちゃいました。
よいこは色々な先生をみて、たくさんの事を学んでね。

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