怪しいセミナーに参加したら男性の見方が180度変わった話
数年前、信頼している友人に誘われて、あるセミナーに参加した。
参加者は会社経営者や個人事業主など、自分でビジネスをしている人が多いが、ビジネスセミナーというよりは自己啓発的なセミナーだ。
私はこの頃ひとりでエステサロンを運営していたので、個人事業主仲間がたくさんいて、友人もそのひとりだった。
不穏な空気が流れだす
誘われて行ったそのセミナー(セミナーAとする)はとても良かった。今までも学んでいたが、イマイチわからずにいたことがすべて解決したと思えたぐらい良かった。
しかし、不穏な空気を感じたのは、セミナーAの次に受講して欲しいという、『セミナーB』の紹介動画が流れ出した時だった。
私は思った。
「ヤベーところに来てしまった・・・」
スクリーンに映し出されたのは
大きなスクリーンに映し出されたのは、涙しながら抱き合う姿や、ハイテンションに喜ぶ人々の姿。バックミュージックには感動的で壮大な音楽。
怪しさを感じて肩に力が入っている私は、不信感満載なそぶりに気づかれないよう、チラリと周りを見渡す。
明らかに引いている人も目につく中、このセミナーBをすでに受けている友人とその友人たちは、感動の眼差しで紹介動画を見ている。
「ヤベーところに来てしまった・・・」(2回目)
生き返った彼女
その日受けたセミナーAが終わったあと、友人に言われた。
「セミナーB、絶対受けたほうがいいよ!人生変わるよ!」
確かに友人は変わった。そもそも、今回受けたセミナーAも、ずっと誘われていたが断り続けていたものだった。
しかし、久しぶりに会った彼女があまりにも輝いていたから受けることに決めたのだ。
例えるなら、陸の上に放置され乾いて死にかけた魚が、水に帰って縦横無尽に泳ぎ回っているような感じだ。彼女は生き返っていた。
でも紹介動画が本当に怪しすぎた。
このセミナーBに行ったら高額な水晶とか壺を売りつけられるのではないかというレベル。
しかも3日間。絶対に帰してもらえないでしょ!
そう思った私だったが、後日参加を決意する。
全員グル?セミナー参加を決意した経緯
結局、セミナーBに参加することにした私。
なぜかというと、その後、別のこれまた素敵な友人とお茶をした時に言われたのだ。
「実は私もそのセミナー受けたことあるんだ。すごくおすすめだよ。私はセミナーBのおかげで変われたと思ってる。」
ドーン!!
まじ・・・。全員グルか?と思った。
それと同時に、普段人に何かを勧めることが無い上に、こんなに安定感のある人におすすめされ、セミナーBに対する不信感が一気に払拭された。
その場でセミナーBの申し込みをポチる私。
結構な値段だったが、決める時は早いのだ。
「お金は後からでも取り戻せるが、時間は取り戻せない。」
それが私の信条。
いざ、セミナーへ
初日は大型台風が直撃し、外は土砂降りの雨と暴風だった。
傘をさすのも意味がないぐらいの状況だったが、私の決意は固かった。
今行かなければ、きっともう行こうと思わないだろうと感じたからだ。
嵐の中のセミナー初日
初日はグループ決めをした。グループの決め方は秘密なので言えないが、思ったよりも普通の決め方だった。
友達同士で参加している人や、知り合いがいる場合は必ず別のグループになる。
初日の感想を端的に言うと、自分の自己中心的な考えと思いやりのなさを痛感して終わった。
今まで気づいていたような、いなかったような、隠しておきたい自分を引っ張り出された感覚だった。
同じグループの人たちも似たような感想だった。ゲームのようなものを通して、自分たちの在り方や隠れたパラダイムが掘り起こされ、それを恥ずかしいと思う。そんな感想。
でも誰も責めたりしないから、安心して自分を出せる。
それがセミナーBの肝なのだ。
やっぱり怪しいセミナー2日目
そんなこんなで気づいたら2日目は号泣している自分がいた。
あの紹介動画と同じじゃないか・・・!
しかし、大人になってからこんなにすがすがしいまでに、人前で号泣したことがあっただろうか。
周りを見ると、大の大人たちがワンワンを嗚咽を上げて泣いている。
男性も半分ぐらいいたが、みんな泣いていた。信じられない光景。
そして冷静に見るとほんとに怪しい!
怪しいけど、自分をさらけだせる安心感が半端じゃない。
そうして、私は、大きなパラダイムシフトが起きる運命の3日目を迎える。
運命の3日目でパラダイムシフト
3日目は、1、2日目のグループで一緒になっていない誰かとペアを組む。
ペアを組んで話すのだが、私が組んだのは、見た目EXILEにいそうな男性。正直苦手な見た目だ。
日焼けした肌に金のネックレス、口ひげがいかつさを醸し出している。ザ・経営者という雰囲気。
しかし、ペアを組みませんか、と声をかけられてしまったので仕方がない。
なぜか昔からこういう人に声をかけられやすいのだ。
ワークが始まる。対面で色々と話すのだが、ペアの男性は見た目と裏腹に、とても物腰の柔らかい話し方だった。
男性は言っていた。
「男は、自分が生まれた時と両親が死んだ時の3回しか泣いちゃダメと小さいころから親に言われ続けていたんです。だから俺泣けなくて・・・。でも、昨日約束やぶっちゃいました。」
え・・・かわいい。抱きしめたい!今すぐあなたを抱きしめたい!私の感情が動いた。
男性に対してかわいいなど思ったことがなかったのに。そんな自分に衝撃。
「それで、困ったことに、一度涙が出たら、事あるごとに涙がすぐに出てきて止まらないんです。男なのに情けないですよね。」
「泣いていいですよ。十分頑張りましたよ。」
思わず私も言葉が出た。慰めでなく、本音だった。
失礼かもしれないが、男性がこんなにかわいいと思えたのは初めてだった。
そしてまた号泣・・・。
このセミナーBに来ている男性は、経営者がほとんどだ。
サラリーマンや医師もいたが、言ってみれば、みんな世の中を引っ張っていくようなエネルギー溢れる人たちだ。
そんな人達があちこちで号泣し、嗚咽を漏らしている。
不思議な光景を見ながら、私の心の中にある塊が溶けていくような感覚になった。
男も女もツライよ
女なんだからと言われ、女性らしく振舞うことを求められる。
それに窮屈さを感じて、女であることが嫌な時期があった。
同時に男性を嫌だと思う気持ちもあった。
しかし振り返ってみれば、私も同じだったのだ。
「いつまで泣いてるの?男のクセに!」
元彼に投げかけた言葉である。
セミナーBを受けるまで私は知らなかった。
日本の男性がこんなに感情を抑圧して、歯を食いしばって生きていることを。
男なんだから泣くんじゃない。
男なんだから強くあれ。
男なんだから稼いで来い。
男なんだから・・・・
女性らしさを求められるのはツライ時もある。
しかし、男性もなんら変わらないのではないか。
むしろ、弱さを簡単に見せることができないぶん、逃げ道が無く、重圧が大きいのではないか。
そう気づいたセミナーの帰り道、辺りを歩いているおじさんたちがみんな少年に見えてきた。
男性がなんとなく嫌だったという気持ちが、すっかり消えていることにも気づいた。
ジェンダーフリーで得意なことを生かせばいい
もしかしたら若い世代の人たちは、男だからとか女だからという概念がなくなってきて、もっと自由な思考なのかもしれない。
しかし、私たちアラフォー世代以上はまだまだ、世の中に押し付けられたジェンダー価値観にがんじがらめの人も多いのだ。
ただ、個人的な考えを言えば、男性には男性の得意分野、女性には女性の得意分野があると思っている。
もちろん個人差はあるが、男性と女性が体力や思考回路が違う生き物なのを受け止めて、お互い助け合えば良いだけだと思う。
なんなら、男とか女とか関係なく、個人の得意分野で助け合えばいいというシンプルなことなのだ。
みんな、泣いていいよ!感情を解放しよう!
思いっきり泣ける友達をつくろう!