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マルコムXとモハメド・アリの邂逅の夜『あの夜 マイアミで』

サム・クックを演じたレスリー・オドムJr が助演男優賞でアカデミー賞にノミネートされていて、観てみた。もともとは2013年の戯曲で、1964年2月25日にカシアス・クレイ(後のモハメド・アリ)がヘビー級のチャンピオンになる日の物語。

マルコムXが出てきていることでわかるように、公民権運動に対して、この黒人のヒーローたちがどのように向き合っているか、というのがドラマの中心だ。マルコムは自分が幹部になっているNOI(ネイション・オブ・イスラム)の教祖の不正を告発して教団を辞め、自身の教団をスタートさせようとしているところ。カシアス・クレイはイスラム教に改宗して、モハメド・アリと名乗る直前。黒人だけでなく白人にも受けた、サム・クックは自身の音楽出版社を持ち、権利を自分たちが持つことで、正当な黒人アーティストの利益を獲得した、単なる優秀なソウルシンガーではないビジネスマン。ジム・ブラウンはNFLのランニングバックで後に映画スターにもなる人気者だった。

そして、マルコムはこの翌年1965年2月に、公式にはNOIのメンバーに銃撃され、命を落とす。モハメド・アリは1967年に「良心的徴兵拒否」でベトナム戦争の従軍を拒否し、WBC,WBAのヘビー級チャンピオンの地位を剥奪され、1971年までボクシングができない状況に置かれた。サム・クックは公民権運動のアンセムとなった曲「A change is gonna come」を1964年に発表したけど、12月にはモーテルで射殺される。

カシアス・クレイがモハメド・アリと名乗ることを決めた日、なにがモーテルの一室で話し合われたのか、記録には残っていない。そのスキマに脚本家が入り込んで「最高の夜」の物語にした。

亡くなったチャドウィック・ボーズマンが出演した『Ma Rainy's Black Bottom』は1920年代の話で、マルコムXが生まれたのが1925年なので、この2つの物語はつながっている。ボーズマンがアカデミー賞の主演男優賞の本命って言われてるので、これも楽しみ。両方の作品が戯曲で、熱い会話劇。BLMのコンテクストもあって、注目されている。両方とも引き込まれた、素晴らしい作品。


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