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本と触れ合う時間のない書店員

私はふだん、書店員として働いているが、正直あまり本と触れ合えていない。
もちろん、仕事中はほとんどずっと本を触っている。
レジ打ちや品出し、返品作業だってそうだ。
ただ、触ってはいても触れ合えてはいないのである。

書店員としての仕事はけっこう忙しい。
大量の本を棚に出したり、メールで出版社とやり取りしたり、お客さんの問い合わせに対処したり。
そんな中だと届いた本の内容もわからず、ただただ棚に並べるような仕事になってしまう。
そんなふうにしていると、棚がどこかよそよそしく、軽いものになってしまう。

これは、本の商材としての性質にもよる。
本はぶっちゃけ利益率がとても低い。
例えば、ラーメン屋が出してるラーメンなら利益率は7割になるのだが、本は2割である。
1000円の本が売れても、利益は200円にしかならない。
そのため、薄利多売にならざるを得ず、そんな中で一冊一冊に構っている余裕は正直ない。
ただでさえ、周りの本屋はいくつもつぶれている。
書店員の心はいつも焦っている。

こんなふうに慌ただしい日々を送っていると、疲れが溜まってくる。
休日の終わりごろは「仕事 行きたくない」でツイッターを延々と検索してしまうし、5日連続で出勤するのがしんどくなってしまう。
このままじゃ書店員を続けられなくなる。
そう思った私は、仕事中に本と触れ合う時間をつくることにした。

具体的には、本を読んでPOPを書く時間である。
やってみると、これがだいぶいい感じ。
今までは優先度順に仕事をこなすだけだったのだが、本を読んでPOPを書く時間があることでリズムを整えられ、以前より仕事に振り回されなくなった。

また、本の内容がわかれば棚作りにも自信がわく。
以前はよそよそしかった棚が、徐々に血の通った棚になってくる。
そうすると、仕事にもやりがいが出てくる。

書店員にとって本に触れ合えないというのは、どこか本末転倒な気がする。
システム的に忙しくなりやすいのはわかった。
資本主義の中では、本を本として捉えるのではなく、商材として捉えることが推奨されているのもわかった。
ただ、そんな中でも主体的に本と触れ合う時間をつくっていきたい。
せっかく本が好きで書店員をやっていて、本に囲まれる仕事ができているのに、それをしんどく感じるだけなのはもったいないし、なんだか悔しいからである。

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