夏森かぶと

書書店員として働きながら、エッセイを書いたりオンライン古本屋をやったり。 著者(ZI…

夏森かぶと

書書店員として働きながら、エッセイを書いたりオンライン古本屋をやったり。 著者(ZINE)に『本のある日常』『本のある生活』『本と抵抗』。 夏森書店:https://mercari-shops.com/shops/gcFHGUY9pPCxeGkfKhWmfC

マガジン

  • 本のある日常

    書店員として働く私が、本のことについて書いたエッセイ集です。

  • 仕事と生活のバランス

    仕事と生活のあれやこれや。

  • 週末日記「本を買ったり読んだり」

    書店員が本を買ったり読んだりする週末の日記です。

最近の記事

  • 固定された記事

【新刊案内】3冊目のZINE『本と抵抗』を刊行します

1冊目『本のある日常』、2冊目『本のある生活』に続き、このたび3冊目のZINE『本と抵抗』を刊行します。 既刊の2冊は正直驚くほどの反響があり、1冊目『本のある日常』は2刷、2冊目『本のある生活』は全国16の本屋さんで取り扱っていただいていただきました(2024/04/17現在)。 3冊目のZINE『本と抵抗』も「いいものができた」と感じているので、読んでいただけるとうれしいです! お知らせ 2024/05/23 文学フリマ東京38に出店し、3部作合計で59冊を販売す

    • ミステリー小説にハマる

      私が長年親しんでこなかったジャンルにミステリー小説がある。 なんだか堅苦しい感じがするし、名作と言われるものには海外文学が多く、なかなか手が伸びなかった。 そんな私が書店員になって働いてみて、あることに気づく。 ミステリー小説は売れるのだ。 ミステリー小説には根強いファンがいて、その方たちが買っていくイメージ。 特に海外のミステリー小説なんかは、その傾向が顕著だと思う。 実際に私が働く本屋で飛ぶように売れたのが、ディーリア・オーエンズ著『ザリガニの鳴くところ』だ。 2021

      • 調子が悪いときは銭湯に行く

        私は調子が悪くなると銭湯に行く。 5年ほど前、仕事になじめずこの先どうしたらいいかわからなくなっていたときも、毎週のように銭湯に行っていた。 銭湯でお湯につかることでどうしようもない現実から少し距離を取ることができる。 現実から切り離された避難所のような場所を「アジール」と呼ぶらしいが、私にとっては銭湯がまさにそんな場所だった。 服を脱ぐことで一時的に社会との縁を切り、動物のように何も考えずただお湯に浮いていれる場所。 そんな銭湯でゆっくりすることで、また数日間をなんとか過ご

        • オンライン古本屋始めました

          「夏森書店」というオンライン古本屋を始めた。 というのも、いよいよ我慢の限界が来たからだ。 私はふだん書店員として働いており、いずれは独立したいと考えている。 だけど、現状では一向に独立できる気配がない。 働くにつれて出版業界の厳しさが身にしみるし、低い給料では独立できるような資金もたまらない。 独立するなら早いほうがいい。 若いうちなら失敗してもダメージが少ない。 でもそんな事情とは関係なく、生活するだけで精一杯な日々は淡々と過ぎ去っていく。 そんなふうに悶々としている

        • 固定された記事

        【新刊案内】3冊目のZINE『本と抵抗』を刊行します

        マガジン

        • 本のある日常
          47本
        • 仕事と生活のバランス
          10本
        • 週末日記「本を買ったり読んだり」
          8本

        記事

          家庭菜園で資本主義に抵抗する

          1ヶ月。 時間の大半を捧げて働いて、月末にやっと給料がもらえる。 だけど、その給料は生活の中で泡のように消えていく。 あんなに苦労して稼いだお金なのに、使うのは簡単である。 そうしてまたお金を稼ぐために、また1ヶ月働かなければいけない。 そんな日々が嫌になって、家庭菜園を始めようと思い立った。 貴重な休日。今まではあまり行く機会のなかったホームセンターに足を運ぶ。 プチトマトを作りたいとは思ったものの、何を買えばいいのかわからない。 店員さんに教えを請い、鉢植え、土、玉砂利

          家庭菜園で資本主義に抵抗する

          「本が好き」とは言いづらい

          私は現在、書店員として働いている。 私個人としては、本が好きだから書店員としては働いているところが大きい。 でも、「本が好き」というのはなかなか人に言いづらい。 というのも、「好き」にはレベルがあり、そして上には上がいるからである。 私は昔から本が好きだったと思う。 小学生の頃、朝読書の時間は苦ではなかったし、国語の教科書も好きだった。 家に帰ってから本を読むことはあまりなかったが、それでよかった。 ゲームをしたり友達と遊んだり、もっと楽しいことがあったからだ。 高校でも

          「本が好き」とは言いづらい

          退職するのは難しい

          私は新卒で入った会社を2年で辞めている。 そのときに痛感したことがあるのだが、それが退職するのは難しい、ということだ。 具体的には、「退職します」と言い出すのがとても難しい。 まだ2年しか経っていないのに、新しい仕事を教えてもらったばかりなのに。 そんないくつもの「なのに」が「退職します」という言葉をせき止める。 そして、「退職します」と伝えたら上司にどう思われるかわからないし、しばらくしたら同僚にも退職の事実は伝わる。 そんな中で、まだ1,2ヶ月も仕事を続けなければいけない

          退職するのは難しい

          仕事のある生活に慣れてきたのかもしれない

          朝、起きると「ああ、今日も仕事か」と絶望に近い感情が胸に湧き起こる。 目覚めがそんな感じだから、出勤するまでも「行きたくない」とつぶやきながらグダグダと準備をするハメになる。 爽やかな朝の目覚めとは縁遠い生活を送っている。 ただ、そんな私が最近思うのが、休日は休日でしんどいかもしれない、ということだ。 私は一日中、家の中にいるということができない。 家にこもっていると、嫌だったことを反芻してしまって疲れたり、暇な時間に孤独感に襲われたり、アニメや本の過剰摂取で頭がボーッとし

          仕事のある生活に慣れてきたのかもしれない

          好きなことと給料のバランス

          「好きなことを仕事にしよう」 最近、このフレーズが合い言葉のように使われているように感じる。 だけど、この考え方には一つ大きな問題がある。 好きなことを仕事にすると、給料が低くなりがちなのだ。 私は本が好きという理由で、書店員として働いているのだが、やはり給料は低い。 もう歳は30になり、大学時代の友達が続々と車を買いマイホームを建てている中で、自転車をこぎこぎ細々とアパート暮らしをしている。 好きな仕事ができているぶん普段はいいのだが、通帳を見たり結婚式に行って周りと比べ

          好きなことと給料のバランス

          無職の俺をゲーセンに連れてってくれた友達の話

          当時、私は無職だった。 東京に出て、新卒で入った会社でうまくいかず、体調を壊して地元に帰ってきていた。 何をするでもなく、実家でゴロゴロと過ごす日々。 そんなとき、友達の高橋が私を遊びに誘ってくれた。 高橋との付き合いは小学校からで、彼がたびたび連絡をくれたおかげで縁が続いている希有なやつである。 実家まで高橋の車で迎えに来てもらう。 こんなふうにして友達と遊ぶのは久しぶりだ。 車中では、King Gnuの「白日」が流れていた。 そうして着いたのは、イオンだった。 まあ、

          無職の俺をゲーセンに連れてってくれた友達の話

          文学フリマ東京本屋紀行

          2024年5月18日、文学フリマ東京の前日。私は成田空港に降り立った。 今まで『本のある日常』『本のある生活』『本と抵抗』という3冊のZINEを書いてきて、「どれ腕試しに」という気持ちでいよいよ文学フリマに初出店する。 「どうせなら一番でかい文学フリマに参加してみたい」というミーハーな気持ちで、電車と飛行機を乗り継いでやってきました花の大都会。 そして、こんな機会もなかなかないので、東京の本屋さんもめぐろうという思惑だ。 成田空港から京成線に乗って、さっそく東京へ。 初日の

          文学フリマ東京本屋紀行

          2週間後、文学フリマに初出店する

          2024年5月19日(日)に文学フリマ東京38に出店する。 思えば、こういったイベントに憧れを持つようになったのは、5年ほど前にコミケに行ったときだった。 たくさんの人が自分でつくった同人誌を販売していて、「自分で作品を作っている大人がこんなにいるのか」と驚きと喜びで手のひらがジンジンしたのを覚えている。 自分で作品を作りたい、という思いはずいぶん長い間、漠然とした気持ちとして自分の中に横たわっていた。 その一方で、何かに手を付けてもすぐに投げ出してしまい、何かを成し遂げた

          2週間後、文学フリマに初出店する

          ああ、豊かな読書時間

          よく、読書は豊かなものだと言われる。 それはもう言われすぎて、もはや紋切り型の常套句のようなものになってしまっており、私なんかはその言説に反発すら覚えるようになってしまったのだが、それでもやはり読書というものは豊かだなあ、と思うときがたびたびある。 最近、特にそれを感じた読書体験が2つ続いたので、この文章を書いている。 1冊目は『シェイクスピア&カンパニー書店の優しき日々』。 仕事がほとほと嫌になってしまった記者が、パリの有名書店「シェイクスピア&カンパニー書店」で過ごした

          ああ、豊かな読書時間

          2連休にこだわっていた私が、隔日休みのよさに気づいた話

          会社員にとっていちばん大切なものは何か。 それは、休日である。 私は今まで2連休にこだわっていた。 シフト制の書店員になり祝日がなくなっても、週に1回の2連休だけは死守してきた。 というのも、1日ごとの休みでは休んだ気がせず、また1日の中で体調を整えないといけないため遊びに行くのも難しいと思っていたからだ。 2連休をしっかりと確保することが、働くうえでの私のプライドになっていた。 そんな中、事件は起こる。 同僚から「子どもの送り迎えのために、とりあえず1ヶ月シフトを変わっ

          2連休にこだわっていた私が、隔日休みのよさに気づいた話

          調子の悪さに比例して読書量が増えていく

          年度末は忙しさのあまり調子を崩す人は多いと思う。 かくいう私もその一人で、この3月は膨大な仕事に追われ、また上司との面談を控え関係がギクシャクしてしまいストレスフルな状況だった。 私は生活の調子が悪くなると、すがるようにして本を読むクセがある。 そういうわけで、3月は27,143円分の本を買い、16冊の本を読むことになった。 どうして、つらいときに読書量が増えるのか。 自分の現状と似たような内容の本を読み、「わかる。つらいよね」と支えてもらいたいからである。 例えば、私は3

          調子の悪さに比例して読書量が増えていく

          休み明けは仕事に行きたくない

          9時、アラームに起こされる。 頭が覚醒するにつれて絶望が胸を満たしていく。 うわ、今日から仕事じゃん…… どうしても現実を受け入れられず、布団の中で「仕事 行きたくない」とツイッター検索し、同じ気持ちの人を見つけて自分を慰める。 指に任せて、延々とスクロール。 「仕事 行きたくない」 「仕事 行きたくない」 「仕事 死にたい」 9:30になり、そろそろ準備しなきゃと、布団から身を剥がすようにして起きる。 朝、自分の身体を動かすのはやる気ではなく、遅刻するかもしれないという

          休み明けは仕事に行きたくない