夏森かぶと

書店員として働きながら、エッセイを書いています。 著者(ZINE)に『本のある日常』…

夏森かぶと

書店員として働きながら、エッセイを書いています。 著者(ZINE)に『本のある日常』『本のある生活』『本と抵抗』。 ツイッター:https://twitter.com/kbt0401 お問い合わせ:kbt1101@gmail.com

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  • 仕事と生活のバランス

    仕事と生活のあれやこれや。

  • 本のある日常

    書店員として働く私が、本のことについて書いたエッセイ集です。

  • 週末日記「本を買ったり読んだり」

    書店員が本を買ったり読んだりする週末の日記です。

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【新刊案内】3冊目のZINE『本と抵抗』を刊行します

1冊目『本のある日常』、2冊目『本のある生活』に続き、このたび3冊目のZINE『本と抵抗』を刊行します。 既刊の2冊は正直驚くほどの反響があり、1冊目『本のある日常』は2刷、2冊目『本のある生活』は全国16の本屋さんで取り扱っていただいていただきました(2024/04/17現在)。 3冊目のZINE『本と抵抗』も「いいものができた」と感じているので、読んでいただけるとうれしいです! お知らせ 2024/05/23 文学フリマ東京38に出店し、3部作合計で59冊を販売す

    • 好きなことと給料のバランス

      「好きなことを仕事にしよう」 最近、このフレーズが合い言葉のように使われているように感じる。 だけど、この考え方には一つ大きな問題がある。 好きなことを仕事にすると、給料が低くなりがちなのだ。 私は本が好きという理由で、書店員として働いているのだが、やはり給料は低い。 もう歳は30になり、大学時代の友達が続々と車を買いマイホームを建てている中で、自転車をこぎこぎ細々とアパート暮らしをしている。 好きな仕事ができているぶん普段はいいのだが、通帳を見たり結婚式に行って周りと比べ

      • 無職の俺をゲーセンに連れてってくれた友達の話

        当時、私は無職だった。 東京に出て、新卒で入った会社でうまくいかず、体調を壊して地元に帰ってきていた。 何をするでもなく、実家でゴロゴロと過ごす日々。 そんなとき、友達の高橋が私を遊びに誘ってくれた。 高橋との付き合いは小学校からで、彼がたびたび連絡をくれたおかげで縁が続いている希有なやつである。 実家まで高橋の車で迎えに来てもらう。 こんなふうにして友達と遊ぶのは久しぶりだ。 車中では、King Gnuの「白日」が流れていた。 そうして着いたのは、イオンだった。 まあ、

        • 文学フリマ東京本屋紀行

          2024年5月18日、文学フリマ東京の前日。私は成田空港に降り立った。 今まで『本のある日常』『本のある生活』『本と抵抗』という3冊のZINEを書いてきて、「どれ腕試しに」という気持ちでいよいよ文学フリマに初出店する。 「どうせなら一番でかい文学フリマに参加してみたい」というミーハーな気持ちで、電車と飛行機を乗り継いでやってきました花の大都会。 そして、こんな機会もなかなかないので、東京の本屋さんもめぐろうという思惑だ。 成田空港から京成線に乗って、さっそく東京へ。 初日の

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        【新刊案内】3冊目のZINE『本と抵抗』を刊行します

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          8本

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          2週間後、文学フリマに初出店する

          2024年5月19日(日)に文学フリマ東京38に出店する。 思えば、こういったイベントに憧れを持つようになったのは、5年ほど前にコミケに行ったときだった。 たくさんの人が自分でつくった同人誌を販売していて、「自分で作品を作っている大人がこんなにいるのか」と驚きと喜びで手のひらがジンジンしたのを覚えている。 自分で作品を作りたい、という思いはずいぶん長い間、漠然とした気持ちとして自分の中に横たわっていた。 その一方で、何かに手を付けてもすぐに投げ出してしまい、何かを成し遂げた

          2週間後、文学フリマに初出店する

          ああ、豊かな読書時間

          よく、読書は豊かなものだと言われる。 それはもう言われすぎて、もはや紋切り型の常套句のようなものになってしまっており、私なんかはその言説に反発すら覚えるようになってしまったのだが、それでもやはり読書というものは豊かだなあ、と思うときがたびたびある。 最近、特にそれを感じた読書体験が2つ続いたので、この文章を書いている。 1冊目は『シェイクスピア&カンパニー書店の優しき日々』。 仕事がほとほと嫌になってしまった記者が、パリの有名書店「シェイクスピア&カンパニー書店」で過ごした

          ああ、豊かな読書時間

          2連休にこだわっていた私が、隔日休みのよさに気づいた話

          会社員にとっていちばん大切なものは何か。 それは、休日である。 私は今まで2連休にこだわっていた。 シフト制の書店員になり祝日がなくなっても、週に1回の2連休だけは死守してきた。 というのも、1日ごとの休みでは休んだ気がせず、また1日の中で体調を整えないといけないため遊びに行くのも難しいと思っていたからだ。 2連休をしっかりと確保することが、働くうえでの私のプライドになっていた。 そんな中、事件は起こる。 同僚から「子どもの送り迎えのために、とりあえず1ヶ月シフトを変わっ

          2連休にこだわっていた私が、隔日休みのよさに気づいた話

          調子の悪さに比例して読書量が増えていく

          年度末は忙しさのあまり調子を崩す人は多いと思う。 かくいう私もその一人で、この3月は膨大な仕事に追われ、また上司との面談を控え関係がギクシャクしてしまいストレスフルな状況だった。 私は生活の調子が悪くなると、すがるようにして本を読むクセがある。 そういうわけで、3月は27,143円分の本を買い、16冊の本を読むことになった。 どうして、つらいときに読書量が増えるのか。 自分の現状と似たような内容の本を読み、「わかる。つらいよね」と支えてもらいたいからである。 例えば、私は3

          調子の悪さに比例して読書量が増えていく

          休み明けは仕事に行きたくない

          9時、アラームに起こされる。 頭が覚醒するにつれて絶望が胸を満たしていく。 うわ、今日から仕事じゃん…… どうしても現実を受け入れられず、布団の中で「仕事 行きたくない」とツイッター検索し、同じ気持ちの人を見つけて自分を慰める。 指に任せて、延々とスクロール。 「仕事 行きたくない」 「仕事 行きたくない」 「仕事 死にたい」 9:30になり、そろそろ準備しなきゃと、布団から身を剥がすようにして起きる。 朝、自分の身体を動かすのはやる気ではなく、遅刻するかもしれないという

          休み明けは仕事に行きたくない

          本を読んだら生きやすくなった

          よく30歳を超えると生きやすくなる、なんてことが言われる。 逆に言えば、20代は大概の人が生きづらさを感じるときなのだろう。 私も社会人になってからうまくいかず退職したり、しばらく無職としてすごしたりと不器用な20代を送ってきた。 そんな私も今年で30歳を迎え、確かにちょっと生きやすくなってきたな、と感じる。 でもそれは、単に年齢を重ねたからではなく、社会人になってから始めた読書のおかげが大きい。 本という媒体はグレーゾーンを尊重するものだと思う。 白か黒かではなく、グレ

          本を読んだら生きやすくなった

          休日に何をすればいいかわからない

          毎週、休日を持て余している。 何をすればいいかわからないからだ。 エッセイを書いたり読書をしたりと、趣味はある。 でもそれで丸一日過ごせるわけじゃない。 午前中をそれらに費やしたとしても、午後にはぽっかりと時間が空く。 そんなときにどうしたらいいのかわからない。 何かに熱中していないと孤独を感じるタチで、暇な時間ができるとソワソワしてしまう。 友達に相談したら、「そんなの、ごろごろすればいいじゃん」と言われたが、そのごろごろができないから苦しんでいる。 自分の中のよくわから

          休日に何をすればいいかわからない

          一箱古本市で本を売る

          一箱古本市を知っているだろうか。 本屋さんじゃない人でも、気軽に自分の本を売ることができるイベントだ。 本のフリーマーケットと言えば、想像しやすいかもしれない。 そんな一箱古本市に、私は今までで4回ほど参加している。 一箱古本市はとにかくお客さんとの距離が近い。 本棚を挟んで、すぐ目の前のお客さんが本を眺める。 おずおずと手を伸ばし、気になった本をパラパラとめくる。 そして、気に入れば、小銭を手渡しして本を買ってもらえる。 戸惑ったのは、お客さんに「この本おもしろかった?

          一箱古本市で本を売る

          【短編小説】雪かき

          「いらっしゃいませー」 コンビニのドアが開いて、お客さんが入ってくる。 ああ、いつものじいさんか。 近所に住んでるのだろう、毎日朝の決まった時間にやってくる。 そして、パンと牛乳を買い、おぼつかない足取りで帰って行く。 今日はジャムパンだった。 朝食を買いに来るということは、ご飯を作ってくれる人もおらず、一人で寂しく暮らしているのだろう。 「ありがとうございましたー」 ああはなりたくないな。そう思いながら小さな背中を見送る。 その日の休憩時間、たばこを吸いに外に出てみる

          【短編小説】雪かき

          ふだんは読まない本を読むという冒険

          読書歴が長くなってくると、「自分が好きそうな本」というのが大体わかってくる。 そして、そうした本ばかり買って読むようになる。 たとえば私だったら、ちょっと暗めのエッセイや哲学、人文学などの人文書ばかり読んでいる。 だけど書店員をやっていると、ふだんは読まないような本を読む機会に恵まれる。 お店で売れている本はどうしても気になってしまうし、「これは売りたい」と思った本はできるだけ自分でも読むようにしている。 そんな自分の興味から少し外れたような本を読むと、毎回驚くのだが、わか

          ふだんは読まない本を読むという冒険

          電車で本を読むという抵抗

          通勤電車の中ではできるだけ本を読むようにしている。 もちろん読書がしたいからであるが、最近は私が本を読む姿を見てもらうことによって読書に興味を持ってもらおうという草の根活動も意識している。 読書に興味をもってもらうには、面白そうに本を読んでいる姿を見せるのが一番だろう。 それを電車の中で実践しているのだ。 電車の中で読書している人は本当に少ない。 たまに車両内を見渡してみるが、本を読んでいる人は一人もいないことが多い。 乗客のほとんどがスマホをいじっている姿を目にすると、書

          電車で本を読むという抵抗

          本の帯どうするか問題

          長年私を悩ませている問題がある。 そう、本の帯をどうするか問題である。 もともと几帳面な性格もあり、本の帯が捨てられない。 ただ、その几帳面な性格ゆえに読んでいるときは帯が手に当たって気になる。 かといって、本から外して取っておくと、本棚の上に謎の本の帯がワシャワシャしているコーナーが出来上がる。 本の帯はけっきょくどうするのが正解なのか、いいかげんこの問題に結論を出したい。 まず、どうして本の帯を捨てられないのか。 それは、なにかもったいない感じがするからである。 本の帯

          本の帯どうするか問題