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調子の悪さに比例して読書量が増えていく

年度末は忙しさのあまり調子を崩す人は多いと思う。
かくいう私もその一人で、この3月は膨大な仕事に追われ、また上司との面談を控え関係がギクシャクしてしまいストレスフルな状況だった。
私は生活の調子が悪くなると、すがるようにして本を読むクセがある。
そういうわけで、3月は27,143円分の本を買い、16冊の本を読むことになった。

どうして、つらいときに読書量が増えるのか。
自分の現状と似たような内容の本を読み、「わかる。つらいよね」と支えてもらいたいからである。
例えば、私は3月に『転職ばっかりうまくなる』という本を読んだ。
この本は20代で転職を6回した著者が、様々な会社を渡り歩いた体験を綴ったエッセイである。

残業するのはつらい。だんだんおなかが空いてきていらいらしてくるし、疲れて頭が回らなくなったり、眠くなったりする。帰りの電車に乗ると、みんなぐったりした顔をしていて、よけいに悲しい気持ちになる(中略)。日が沈む前に帰った方が、ぜったいに良いのだ。

『転職ばっかりうまくなる』

こんなふうに当たり前のことが書いてあるのだが、仕事を長く続けているとこの"当たり前"がわからなくなってくる。
あきらかに仕事量が多いのに、つらく感じるのは自分のメンタルが弱いせいだと思ったり、仕事が終わらないのは自分の能力不足のせいだと思ってしまったり。
自分の気持ちよりも社会の基準を優先してしまい、どんどんしんどくなっていく。
20代で転職6回というのは、人によっては「そんなに転職するなんてわがままだ」と感じるかもしれない。
だけど、自分の気持ちに正直に転職していく姿は、仕事で悩んでいる私にとって気持ちいいものだったし、「やっぱりおかしいのは私じゃなく社会だよな」と勇気をもらえた。

もう一冊、しんどかった3月の私に寄り添ってくれた本が『「能力」の生きづらさをほぐす』という本。
この本は現代にはびこる「能力主義」に警鐘をならし、「仕事ができなくてもそれはあなたのせいじゃない」と言ってくれる。

「能力」は環境次第でいくらでも移ろうもの。個々の身体のなかに確固として存在する臓器のようなはっきりとしたものではない。誰となにをどのようにやるか、これ次第!

『「能力」の生きづらさをほぐす』

3月に特に私が悩んでいたのが、仕事の負担が増えていたことだ。
それなのに4月からさらに新しい仕事が増えるかもしれず、「まじもう無理」と心が折れていた。
そんな中でも「自分のタフさが足りないのでは?」という心の声が反響し、どこにも逃げ場がなくなっていた。

そこで、前に読んでいた『「能力」の生きづらさをほぐす』のことを思い出して本棚から引っ張り出し、仕事の休憩時間に少しずつ読み進めた。
「誰となにをどのようにやるか、これ次第!」
ぐちゃぐちゃだった頭の中に、この言葉が光のように射した。
辛い現状は自分のせいではなく、上司を含む仕事の環境によるものが大きいと思えた。
そうやって開き直って、「つらいと思うことはつらい」と上司との面談にのぞみ、こちらの気持ちを涙ながらに伝えて仕事の負担を減らすことができた。

調子の悪さに比例して読書量が増える。
それは、自分の経験や知識だけじゃどうにもならない状況に陥ったときの緊急行動なんだと思う。
本を読むことで、崩れかかっていた自分をなんとか肯定し直せる。
酒を飲まなきゃやってられない夜があるように、本を読まなきゃやっていけない生活がある。

だから、次にまた調子が悪くなったときに好きなだけ本を買えるよう、読書貯金をしておこうと思う。
それが未来の私の支えになることを私は知っているから。

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