マガジンのカバー画像

最期を支える人々  −母余命2ヶ月の日々−

53
運営しているクリエイター

#訪問医

2015.6.10 「ひとまず、安心」

2015.6.10 「ひとまず、安心」

 母の負担を減らすためには、共に暮らす家族に、母に頼らず生活してもらわねばならない。父は糖尿病で、定期的な通院や毎食前のインシュリン投与を必要としていた。これらは全て母頼みだったため、低血糖で倒れるリスクが高まっていた。足が悪い父がひとりで通院すると、薬局に薬を取りに行けないことも問題だった。

 そこで、既に叔母がお世話になっているA医師に父の往診も依頼した。同時に、かかりつけ薬局を決め、薬や医

もっとみる

2015.8.12 「安心のために」

 母から「口から血がでてきた」と携帯メッセージが届いた。驚いた私は緊急通報のボタンを押すようにと電話をして実家に向かった。

 私の到着前に、ヘルパーが駆けつけ、ケアマネジャー経由で訪問看護師にも連絡が届いた。

 血を見ると不安が増幅する。母はうろたえていた。主治医に確認すると、大量の吐血は考えにくいが、じわじわとした出血は続くという。「24時間看護師が傍にいる」という環境が必要なタイミングが迫

もっとみる

2015.9.8 「教えていただきました」

 母が息を引き取ったあと、訪問医に連絡をした。30分も経たずに、駆けつけてくださった。ふと時計を見ると、日付が代わっていた。

 丁寧に死亡確認をし、診断書を書いてくださった。母と共に暮らしていた叔母の往診から始まったご縁。叔母のため、家族のために頑張る母の姿を知っていて下さる先生だった。

 ぽつぽつと言葉を選びながら、母のことを話してくださり、父を励ましてくださった。最後に「骨折した、食欲がな

もっとみる