- 運営しているクリエイター
記事一覧
2024年8月前半に観た舞台の感想(全部ではないけれど)
『BALLET The new classic』
バレエ門外漢なので的外れかもしれないが、ラシックバレエの既成概念を、ジェンダーの越境から果敢に攻める企画と受け取った。具体的には男性は衣裳、女性は振付で、美しさと断端さの両立に感じ入ったのだが、『ロミオとロミオ』のわかりやすさはその挑戦を矮小化したのでは。
果てとチーク『はやくぜんぶおわってしまえ』
今回の再演でようやく観られた。前評判に違わぬ作
2024年3月に観た舞台①
世田谷パブリックシアター『う蝕』 @シアタートラム
「脚本の横山拓也、脂が乗ってる」と、まず感じた。
大きな災禍が起きた直後の小さな島らしき場所に、主に仕事で集まった男性6人の会話劇で、登場人物の約半分がすでに死んでいるんだけど、それが明かされるまでのせりふの軽さが絶妙だった。絶妙というのは、死んでいるとわかってから思い返すと、切なさや悲惨さや優しさや無常感など、いくつもの解釈が乱反射するよ
歌舞伎座八月公演『新・水滸伝』で思い出した大事な縛り
始まってしばらくすると、不意に胸が締め付けられるような感覚を覚えた。かつて何度も感じたことのあるこの空気、これは一体何だろうと辿っていくと、「ああそうか、二十一世紀歌舞伎組だ」と思い出した。『新・水滸伝』は、2008年に横内謙介が二十一世紀歌舞伎組のために書き下ろしたものなので当たり前と言えば当たり前なのだけれど、この作品の奥に広がっていて、ずいぶん長いこと忘れていた“ある感じ”がリアルに立ち上が
もっとみる舞台に吹く旋風(つむじかぜ)の正体は……。明後日プロデュース『青空は後悔の証し』
久々に、頬がしびれるほどの疾風に打たれる感覚を持った。理解しようと足に力を入れ、必死に目を凝らすが、突き放すように強い風が絶えず吹いてきて、点が見えてもなかなか線にならない。
戦争や災禍など、大きな社会問題を作品の中心に置き、現代との接続をわかりやすく見せた、ここ数年の岩松了はここにはいない。
ひたすら個人の心にフォーカスし、それも、心の闇に分け入って謎を解くのでなく、奥を覗けば闇しか出てこないの
ぐうたららばい『海底歩行者』 ──夫婦を海底に引き付けたものは。
10月18日、こまばアゴラ劇場で、ぐうたららばい『海底歩行者』を観た。深い深い暗さとその肯定が埋め込まれた作品で、おそらくこれこそ、作・演出の糸井幸之介が本来抱えているであろう嗜好と志向だと思う。
ぐうたららばいは、劇団FUKAI PRODUCE羽衣の座付き作・演出家・作詞作曲家であり、近年は木ノ下歌舞伎の『心中天の網島』の演出でも注目を集めた糸井が、「羽衣とはちょっと違う、ビターな音楽劇をやり
ニナガワの子供達をイワマツの養子にという夢は叶わないですか? さいたまネクスト・シアター『雨花のけもの』
故・蜷川幸雄が2008年末に立ち上げたさいたまネクスト・シアターが、この公演を最後に解散する。
蜷川は、芸術監督を務めていた彩の国さいたま芸術劇場で、演劇経験を問わない高齢者を集めたさいたまゴールド・シアターと、プロの俳優を目指す若者を集めたネクスト、2つの俳優集団の育成に取り組み、晩年は双方を混ぜて海外の複数の劇場から招聘される作品づくりに至った。けれどもその死から5年、どちらの集団も継続が難
『チック』再演──知らないことの多さに震えながら、少しだけ前へ進む。
良い作品の再演ほど「初演であんなに感動したのに、本当は何もわかっていなかった」と反省する率が高い。
『チック』がまさにそうで、2年前、興奮してツイートを連投したけど、改めて観て痛感した。私は何もわかっていなかった。
『チック』は、明日から夏休みという日、友達のいない14歳のマイクが、ほとんど話したことのない転校生のチックから「ちょっと借りてきただけで、そのあたりをぐるっと回ったら返すから」
『スワン666』 飴屋法水たち のこと
千秋楽にもう1度観に行くので、そのあとの感想はまた変化するだろうし、何回観ても全容をつかむことは他の作品以上に難しいだろうから、不充分な内容になることを承知で書く。(実際に追記しました)
── ── ── ── ── ── ── ──
演劇を観ていて私の中で時々発動する作品の分け方がある。それは、フイギュアづくりに例えると、粘土を少しずつ盛ったり削ったりして完成に近づけていくやり方と、つく