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【コラム】モラルなのか、異文化なのか…

突然ですが、私はなんでも「線引き」したいタイプの人間です。

「白黒」はっきりさせられるものが好きで、しかし、世の中
「グレー」なものの方が大半だと知った頃から、仕方なく「白黒グレー」の3色分けが頭の中でなされます。
もちろん意味のない行動だと言うことは自覚しています。笑

そんな私にとって、昔から難しさを感じている「線引き」があります。
それが、「この行動はモラルに反することなのか?異文化なのか?」と言うことです。

CA時代、毎月90時間前後、国際線を中心にフライトをしていると、本当に多くのビックリ事例に遭遇しました。
「モラルに反する」と言うと大袈裟なものもありますが、日本では見かけない光景に理解が追いつかないことが、本当に多かったです。

例えば・・・

(中国・廈門線)
座席の上にペット用トイレシートのようなものを敷いて、幼児のトイレをそこでさせる。
⇨衛生面・秩序面など、その全てにおいてまずい状況なので、すぐにやめてもらうようご案内しましたが、一緒にフライトしていた上海ベースのCAもドン引きしていたので、これは「モラル違反」に分類。

(インド・デリーなど)
エコノミークラスの狭い座席で、男性(夫)が女性(妻)に膝枕してもらい爆睡。嵩張るからか?ターバンは外して座席上の物入れに収納。
女性も嫌な顔せず、「当たり前」のような雰囲気。
1組や2組の話ではなく、よく見る光景だったため、「異文化」に分類。

(メキシコ)
ミールサービスも終わり、寝るには早い、けれど退屈だという状況で、急に音楽を流して踊り始める。(知らない人同士)
クラブやフェスを思わせる光景に、一瞬笑いそうになったが、お休みになっている方へも迷惑な上、いつ揺れるか分からない機内でのダンスは危険な為、やめていただくようご案内。
「異文化」兼「モラル違反」に分類。

簡単に「モラル・異文化・両方」の3つに分類してみましたが、このように対応に困ってしまう状況は、全国至る所であるのではないでしょうか。

それは「対外国人」だけではなく、同じ日本人同士でも、世代・性別・育った環境の違いでも、このような状況は起こりうります。

「モラル・ルール」に反しているのであれば、注意をしてやめていただく必要がありますが、「異文化・多様性」なのだとしたら、お互いの考えを尊重し合って受け入れていく必要がある。

そこで大切なのが、「軸」となる指針だと考えます。
判断をする上で材料となる「指針・方針」を持つことが、このような対応に大きく役立ちます。

例えば、機内において大切にしなければならない軸は、
「安全・快適・機内秩序が守られているか?」

・座席でのトイレに関しては、その3つに反しているのでNG。
⇨(安全)食品衛生・機内衛生× (快適)におい・光景× (機内秩序)人目の触れるところで洋服を脱がせている

・座席での膝枕は、シートベルトを着用していることが確認された為、その3つに対して周囲への派生はないと判断してOK。

・突然音楽を流してダンスは、一見楽しそうではあったが、安全と快適に問題があるのでグレー寄りの黒。
⇨(安全)怪我をする&させるリスク (快適)音が出ている・うるさい

ここで大切な注意点、しかし、やりがちなことがあります。
それは、自分の中にある「普通はこうするべき」や「こんなのおかしい」と決めつけて対応することです。

「普通子供でもトイレに行かせるよね」
「公共の場で膝枕なんておかしい」
「飛行機で音楽を流して踊るなんてありえない」

これは、誰が決めたのか分からないルールの押し付けになりかねず、相手への納得感を得づらくなるデメリットもあります。

最近よく例として挙げられる、
「グリーン車に赤ちゃん連れで乗車するのは非常識」というものが、
まさにこれに当てはまります。
自分の持つ「アンコンシャス・バイアス(無意識の決めつけ)」によって意見を押し付け合うような状況は、SNSを中心によく見られる議論形態です。

赤ちゃんの鳴き声だからダメなのか?
大きなイビキはいいのか?
それならPCのタイピング音は?

納得感がまるで生まれず、ただどちらかが嫌な思いをするだけ。
このようなことが重なってしまうと、「異文化理解」や「多様性」という言葉に拒否反応を示すようになるのも当然です。

大切にするべき「軸・方針」と、多様に受け入れる「柔軟性」。

異文化理解や異文化コミュニケーションにおいて、とても大切になるポイントです。
人が異なれば、その「当たり前」も異なります。

学生たちのレポートを読んでいると、この「決めつけ」に近い価値観が多くみられます。
自分と異なる価値観の人を、どのように受け入れるのか?
自分と異なる価値観の人と、どのようにチームを築くのか?
一見自分とは異なると感じる価値観の中に、共通点はないのか?

対応の難しさを受け入れて、私も含め、大人が試行錯誤しながらも柔軟に変化していく姿を、学生や子供たちにも見せていきたいものですね。

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