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ときどき映画の話をします。

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2023年の映画/美術展ベスト10

 2022年の年末に書いて以来1年ぶりのnote更新となってしまいました。2024年はもう少し何か書けるように頑張ります。 2023年映画ベスト10①『伯爵』パブロ・ラライン ②『エターナル・ドーター』ジョアンナ・ホッグ ③『ウーマン・トーキング 私たちの選択』サラ・ポーリー ④『バービー』グレタ・ガーウィグ ⑤『ショーイング・アップ』ケリー・ライカート ⑥『アシスタント』キティ・グリーン ⑦『ヨーロッパ新世紀』クリスティアン・ムンジウ ⑧『ブルーザー』マイルズ・ウォーレン

    • 2022年の映画/美術展/新譜/新刊ベスト10

      2022年公開映画ベスト20①『アルゼンチン1985 歴史を変えた裁判』サンティアゴ・ミトレ ②『スペンサー ダイアナの決意』パブロ・ラライン ③『戦争と女の顔』カンテミール・バラーゴフ ④『アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ』ラドゥ・ジューデ ⑤『ユンヒへ』イム・デヒョン ⑥『FLEE フリー』ヨナス・ポヘール・ラスムセン ⑦『ニューオーダー』ミシェル・フランコ ⑧『MEMORIA メモリア』アピチャッポン・ウィーラセタクン ⑨『バルド、偽りの記録と一握りの真実』ア

      • いやぁ、音楽って本当にいいものですね。

         2022年11月27日(日)、ACIDMAN結成25周年を記念したフェス「SAITAMA ROCK FESTIVAL "SAI" 2022」に行ってきました。結成20周年記念の2017年の「SAI」にも行っており、5年ぶりにさいたまスーパーアリーナを訪れました。  フェスに行くのは2019年8月のロッキン以来実に3年3ヶ月ぶり。こんなに長い間フェスに行かなかった(行けなかった)んだな~。コロナ禍が長すぎてもうそれ以前の生活様式の記憶がおぼろげです。  ACIDMANは19

        • イタリア・スイス・フランス旅行記④リヨン

           尊敬するお友達を訪ねてリヨンに来ました。フランスは9度目ですがリヨンは初めてです。 映画の聖地 リヨンと言えば映画発祥の地。リュミエール兄弟が自身の発明したシネマトグラフを用い、この街で世界初の映画を撮影したのが1895年のことです。  兄弟が住んでいた邸宅は、美術館、図書館、公園、映画館などを含む総合芸術施設「リュミエール研究所」となっています。毎年10月にはリュミエール映画祭が開かれます。  敷地にずらっと並ぶ金色のパネルは「Le Mur des Cinéastes

        2023年の映画/美術展ベスト10

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        • 2020年ベスト
          7本
        • 2019年を振り返る
          12本

        記事

          イタリア・スイス・フランス旅行記③ヴェネツィア・ビエンナーレ2

          ヴェネツィア2日目 昨日に引き続きヴェネツィアです。ヴァポレットでリアルト橋をくぐって中心部に向かいます。  こちらはアカデミア橋。  貸し切りのゴンドラも運航していますが、その数はコロナ前よりも少ないようです。  ビエンナーレに行く前に、2009年に開館したプンタ・デラ・ドガーナ現代美術館へ。17世紀に建設された世界最古の税関があった建物を安藤忠雄がリニューアルしたものです。私がヴェネツィアを訪れた2007年にはまだなかったのでぜひ寄ってみたい場所でした。  プンタ

          イタリア・スイス・フランス旅行記③ヴェネツィア・ビエンナーレ2

          イタリア・スイス・フランス旅行記②ヴェネツィア・ビエンナーレ1

          ヴェネツィア0日目 ローマ・テルミニ駅からヴェネツィア・サンタ・ルチア駅まで、トレニタリアの夜行列車で向かいます。当初は成田→ローマ→ヴェネツィアと空路で直接向かうつもりだったのですが、ローマで降りて夜行に乗ればヴェネツィアの一泊分のホテル代が浮くのではとひらめいて夜行で行くことにしました。  列車に乗ったものの、どう見ても席がありません。自分の席に他人が座っているというわけではありません。席が存在しないのです。私の席番号は20Dですが、列車内に示されている番号は19の次が

          イタリア・スイス・フランス旅行記②ヴェネツィア・ビエンナーレ1

          イタリア・スイス・フランス旅行記①ローマ

           こんにちは。お久しぶりです。10ヶ月ぶりの投稿になります。  最近何をしていたかというと、2022年5月に司法試験を受け、9月に合格を頂きました。11月末から1年間の司法修習期間に入り、2023年に弁護士登録となります。  また、文藝春秋からお声掛けいただき、WEB別冊文藝春秋で「透明ランナーのアート&シネマレビュー」という連載をしています。毎週1本映画か美術展について1万字ほどのレビューを書いています。週1連載は大変ですが好きなものを好きなように書いて楽しくやらせてい

          イタリア・スイス・フランス旅行記①ローマ

          2021年の映画/展覧会/書籍ベスト10

          展覧会ベスト10山城知佳子「リフレーミング」 at 東京都写真美術館 ピピロッティ・リスト:Your Eye Is My Island at 水戸芸術館 アナザーエナジー展:挑戦しつづける力―世界の女性アーティスト16人 at 森美術館 Everyday Life:わたしは生まれなおしている at 東京都美術館 MOTアニュアル2021 海、リビングルーム、頭蓋骨 at 東京都現代美術館 KYOTOGRAPHIE ポストコロナ社会を創造するアーツプロジェクト at 東京藝大美

          2021年の映画/展覧会/書籍ベスト10

          トランスジェンダー映画としての『マトリックス』とその歴史的意義(翻訳)

           18年ぶりの新作『マトリックス レザレクションズ』が公開されます。このシリーズを生み出したラナ&リリー・ウォシャウスキー姉妹が自身のジェンダー・アイデンティティを公表する以前から、『マトリックス』はクィア・リーディングの対象とされてきました。  『マトリックス』をトランスカルチャーに位置づける試みについて、米国のトランス映画研究者Caden Mark Gardnerの記事 「Sensing Transgender: Lana and Lilly Wachowski’s "

          トランスジェンダー映画としての『マトリックス』とその歴史的意義(翻訳)

          韓国クィア映画の過去、現在、未来(翻訳)

           米国在住の韓国映画研究者Kelley Dongが韓国クィア映画の歴史について記した記事「Queer Korean Cinema」を翻訳して紹介したいと思います。 韓国映画とクィア 韓国映画研究者Jooran Leeの2000年の論文「Remembered Branches: 韓国同性愛映画の未来に向けて」は、次のような一文で始まります。  韓国では同性愛をテーマにした映画の公開が当局により禁止されていました。『ブエノスアイレス』(1997)は学生が字幕をつけてゲイバーや

          韓国クィア映画の過去、現在、未来(翻訳)

          女性のユートピアを求めて――アルゼンチンクィア映画「The Daughters of Fire」と映画史への挑戦(翻訳)

           以前「2010年代ラテンアメリカクィア映画の傑作15本」というnoteの中で『The Daughters of Fire』というアルゼンチン映画を紹介しました。これまで観たどの映画とも違う画面とプロットに度肝を抜かれ、すべての要素が圧倒的で、オールタイムベストに入れるほど強烈な印象を残しました。  というわけで、『The Daughters of Fire』と監督のアルベルティーナ・カリ(1973-)について書かれた記事「Seeking Utopia at the End

          女性のユートピアを求めて――アルゼンチンクィア映画「The Daughters of Fire」と映画史への挑戦(翻訳)

          イザベル・サンドバル――トランスジェンダー映画監督の「異質」な眼差し(翻訳)

           e-flux Journalに掲載された記事「Isabel Sandoval Seeing as the Other」を翻訳して紹介します。  イザベル・サンドバル(Isabel Sandoval, 1982-)は、NYを拠点に活動するフィリピン出身のトランスジェンダー映画監督です。これまでに3本の長編劇映画を製作し、『リンガ・フランカ』(2019)では監督、脚本、製作、編集、主演を務め、ヴェネツィア国際映画祭に76年ぶりに出品したトランスジェンダーの映画監督となりました

          イザベル・サンドバル――トランスジェンダー映画監督の「異質」な眼差し(翻訳)

          myfff『思春期 彼女たちの選択』監督インタビュー(翻訳)

           今年もマイ・フレンチ・フェスティバル(myfff)の季節がやってきました。フランス語圏の最新映画をオンラインで鑑賞できる全世界同時開催の映画祭です。今年は長編短編含め30本が配信され豪華なラインナップとなりました。  個人的に観てほしい作品は以下の4本です。 君は愛にふさわしい(Tu mérites un amour)アフシア・エルジ 『クスクス粒の秘密』アフシア・エルジの初監督作。カンヌ批評家週間 奥様は妊娠中(Énorme)ソフィー・レトゥール 2020年カイエ・デ

          myfff『思春期 彼女たちの選択』監督インタビュー(翻訳)

          小学館「学習まんが 世界の歴史」無料公開によせて

           1月7日(木)までの期間限定で小学館「学習まんが 世界の歴史」1~17巻が無料公開されています。  小学館では2020年3月、『小学館版学習まんが 少年少女日本の歴史』全24巻をインターネット上で無料公開しました。公開期間中には150万人を超える方々に、計1億3000万ページ以上(当社調べ)をご覧いただき、休校期間中の自宅学習にご活用いただけたのではないかと思います。  そして今回、年末・年始の休みを迎えるにあたり、学習まんが世界史ジャンルNo.1の『小学館版学習まんが

          小学館「学習まんが 世界の歴史」無料公開によせて

          『燃ゆる女の肖像』と中絶について

           『燃ゆる女の肖像』における中絶のシーンについて、ジェンダー研究者のCassia Rothが書いた記事"Portraying Abortion in Portrait of a Lady on Fire"を翻訳して紹介します。  過去10年間の映画やテレビにおける中絶の描写はいっそう複雑なものになっています。HBOの「GIRLS ガールズ」をみると、シーズン1の第2話「下半身パニック!」ではジェッサは中絶手術の予約をしますが、それをすっぽかして行ったバーのトイレで流産してい

          『燃ゆる女の肖像』と中絶について

          2020年の映画ベスト10

           映画産業にとって受難の年となった2020年でしたが今年もさまざまな傑作がスクリーンやディスプレイを賑わせました。劇場公開作とオンライン配信作の中から今年の10本を紹介します。 1.燃ゆる女の肖像 2020年は『燃ゆる女の肖像』ためにあったといっても過言ではありません。今後長く語り継がれるマスターピースとなるでしょう。どれだけ言葉を尽くしてもこの映画の美しさを語ることはできません。この映画がたくさんの人に愛され、社会に影響を与え、触発されたクリエイターたちが次世代の傑作を生

          2020年の映画ベスト10