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イタリア・スイス・フランス旅行記④リヨン

 尊敬するお友達を訪ねてリヨンに来ました。フランスは9度目ですがリヨンは初めてです。

映画の聖地

 リヨンと言えば映画発祥の地。リュミエール兄弟が自身の発明したシネマトグラフを用い、この街で世界初の映画を撮影したのが1895年のことです。
 兄弟が住んでいた邸宅は、美術館、図書館、公園、映画館などを含む総合芸術施設「リュミエール研究所」となっています。毎年10月にはリュミエール映画祭が開かれます。

 敷地にずらっと並ぶ金色のパネルは「Le Mur des Cinéastes」(シネアストの壁)。リュミエール研究所に招待された世界の映画人の名前が刻まれています。

 今年10月の映画祭に招聘さたのはアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥでした。除幕式でご満悦のイニャリトゥ。

 日本人では吉田喜重、林海象、黒沢清の名前がありました。クロード・ルルーシュ、ジョニー・トー、ニコラス・ウィンディング・レフンなど錚々たる面々が並んでいます。

 リュミエール研究所の所長を務め、2021年にこの世を去ったベルトラン・タヴェルニエ。

 邸宅の一部は「リュミエール美術館」となっており、当時の貴重な資料が多数展示されています。

 「佛國自動幼画協會」と書かれた上映会告知ポスター。驚くべきことにこれ、1897年のものなんです。リュミエール兄弟が最初の映画を撮影したのが1895年。その後すぐ上映機材やスクリーンを船に積んで世界一周し、日本をはじめとする各国での上映会を実現させたのです。できたばかりの謎のメディアをいきなり世界にお披露目しに行くなんて先見の明ありすぎですね。

 敷地内には書店・DVDショップも併設されており、数え切れないほどの映画がありました。ここに見えるのは
『本気のしるし』
『幸福の黄色いハンカチ』
『唐朝エロティック・ストーリー』
『花様年華』
『暗黒街 若き英雄伝説』
『エボラ・シンドローム 悪魔の殺人ウィルス』
『太陽の少年』
ですね。(中題英題邦題覚えるのたいへん!)

世界遺産

 お友達の案内で旧市街に来ました。リヨンの旧市街は街並みがまるごと世界遺産に指定されています。12~15世紀にかけて造られた石畳の路地が今もその姿を保っています。

 その中心に位置するのがサン・ジャン大聖堂。6世紀頃にこの地に教会が建てられ、1476年に現在の姿となりました。

 身廊とファサードはゴシック様式、後陣(アプス)はロマネスク様式です。

 17世紀に作られたサン・ジャン教会の天文時計。正確なカレンダーが内蔵されており、2019年まで(!)正確な時を刻んでいたそうです。

 アンリ4世とマリー・ド・メディシスの結婚式が行われたことを示す碑。

 虹!

 リヨンといえばサン=テグジュペリ。リヨンの空港の名前は「リヨン・サン=テグジュペリ国際空港」(LYS)です。

 サン・ジャン聖堂の近くに星の王子さまグッズのショップがありました。

 旧市街の古本屋さん「Librairie Diogène」。8万冊の蔵書を誇るそうです。

 17世紀の本がごく普通に棚にびっしりと並んでいます。日本人の感覚ではちょっとびっくりですね。(漢字圏の活版印刷の難しさ、製本、和紙、湿度などさまざまな文化的差異があります)

 あらゆるジャンルの古書が揃う素敵なお店でした。

リヨン・ビエンナーレ

 まったく知らなかったのですが、9月から12月までちょうど第16回リヨン・ビエンナーレが開催されていました。市内20以上の会場で多くの催しが行われています。

  巨大なテット・ドール公園の中にあるリヨン現代美術館。

 「レバノン文化が花開いた時代」をテーマにした展示でしたが、なぜレバノンなのかよく分かりませんでした。なぜか甲冑あるし……。

 テット・ドール公園には植物園や動物園があり、憩いの場として親しまれていました。

 ギメ歴史自然博物館はとてもよかったです! 改修中の古い建物を大胆に使い、現代アートと融合したダイナミックな展示が展開されていました。

 日本でも人気が高く、2018年にはアカデミー賞にもノミネートされたレバノン人監督ナディーン・ラバキー。新作はアニメーション映画でした。まさかここでラバキーの新作が観られるとは!

 ちょうど今度のイスラーム映画祭でラバキーの作品が上映されるようです。

Mohammad Al Faraj 1993- サウジアラビア

Clement Cogitore 1983- フランス

Kennedy+Swan ドイツ
お絵描きAIとのコミュニケーションの齟齬を題材にした映像作品です。

Young-Jun Tak 1989- 韓国

Hashel Al Lamki 1986- アラブ首長国連邦
こういう国際展は(多くの作家を見せるため)映像作品が少ないのですが、この会場は多いですね。

Ugo Schiavi 1987- フランス
これは超大作!!

 続いてはヴィルールバンヌ現代美術館へ。

Pierre Unal-Brunet 1993- フランス

Louise Mervelet 1994- フランス

Adji Dieye 1991- イタリア

Amandine Arceli 1991- フランス

Olof Marsja 1986- スウェーデン

Jimmy Beauquesne 1991- フランス
すべてインスタレーション、かつ作家が全員私と同世代ですね。なかなか楽しかったです。

美食の街

 リヨンは交易の結節点として発達した商業の街であり、さまざまな食材が集まることから「美食の街」として知られています。郊外には三ツ星レストラン「ポール・ボキューズ」があります。

 ここがベルナシオン! 美味しそう~(目がハート)

 

 偶然立ち寄ったポール・ボキューズ広場。肉、野菜、お菓子などさまざまな食材を売るお店が軒を連ねています。かなり広いです。

 お友達のご家族に連れて行っていただき、リヨンの大衆ビストロ「ブション」(Bouchon)で伝統料理「クネル」(Quenelles、魚のすり身のグラタン)と「ロニョン」 (Rognons、腎臓の煮込み)をいただきました。
 「クセのある郷土料理なので口に合わないかも」と言われていましたがとても美味しかったです。この旅唯一のちゃんとしたお食事でした。ありがとうございます(*´ー`*人)

 夕暮れのローヌ川。綺麗ですね。

 最後に1枚だけ私の興味関心に沿う画像を載せます。この写真、なぜ撮ったかわかりますか?

 改札の奥がメトロ(地下鉄)、こちら側がトラム(路面電車)乗り場。そう、地下鉄と路面電車が同一平面で乗り換えられるんです! これは美しい! 大興奮してしまいました。

 私は都市工学オタクなので旅先の街の都市計画を見るのが大好きですが、リヨンは公共交通機関がとても多層的に整備されていました。「多層的」というのは私が好んで使うキーワードで、たとえば子供が1歳の家族と12歳の家族、通勤客と旅行客では必要なアプローチがそれぞれ異なるはずです。公共交通機関の整備にあたってそれらを包括する都市計画(グランドデザイン)があるか、ということを重視しています。

 地下鉄は多くの乗客を運べますが、費用がかかり簡単に建設することはできません。路面電車はバリアフリーですが、街のすみずみまで走らせることはできません。バスは道路さえあれば走れますが、路線図や乗り方が初心者には分かりにくく、いつ来るかも読めません。

 リヨンはこのようにレンタサイクルも充実しています(最近日本でも増えてきましたね)。小回りのきく自転車は都市交通において有効ですが、若者にとっては便利でも高齢者や子供連れは恩恵にあずかれません。それぞれの手段にはそれぞれのメリットとデメリットがあり、それらを包括する絵を描けるかが都市計画のコアなのです。

 それではバスでスイスへ向かいます。Au revoir, à bientôt.

(スイスへ続く)

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