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【作家と戦争】何才で敗戦を迎えたか?が作品を決めている?

野間宏(1915年生まれ)
武田泰淳(1912年生まれ)
埴谷雄高(1909年生まれ)
梅崎春生(1915年生まれ)
椎名麟三(1911年生まれ)
加藤周一(1919年生まれ、評論家)
中村真一郎(1918年生まれ)

この作家たちは1946、47年に
デビューした「第一次戦後派」と
呼ばれた作家たちです。

1909年生まれなら
敗戦1945年は、36才で、
1918年生まれなら、
敗戦は、27才で迎えてるんですね。

私、思うんですよ。
もう完全な成人で敗戦になった人と、
15~20才の青春期で敗戦を迎えた人では、
人格に与えるインパクトは
まるきり違うのではないかしら?と。

もう大人になっていた野間宏が
書いた『真空地帯』などは
戦争はなはから「悪」です。
軍人ははなから「悪人」です。

価値観が固まってから
戦争を体験した人の世界観です。

これに対して、
「第二次戦後派」とされる作家が
います。
大岡昇平(1909年生まれ)
三島由紀夫(1925年生まれ)
安部公房(1924年生まれ)
島尾敏雄(1917年生まれ)
堀田善衛(1918年生まれ)
井上光晴(1926年生まれ)

三島由紀夫や安部公房は
24年や25年生まれ。
敗戦の1945年は、
20才や21才で迎えています。

安部公房は中国・旧満州にいて、
敗戦の翌年、引き揚げてきました。

島尾敏雄は17年生まれで
敗戦の年は28才と既に成人ですが、
島尾さんは敗戦直前、
特攻隊員として死に装束に身を包み、
今か今かと飛び立つ日を待ち、
まさかの敗戦、
まさかの生き残りとなったんです。
生き残ってしまったという喪失感が
創作を決定づけたのでしょうか。

もう1人、大岡昇平も
1909年生まれで、
敗戦は36才で迎えました。
かなり年上デビューですが、
大岡は戦中にフィリピンで捕虜となり、
帰国してから執筆活動を始めた
遅咲き作家でした。
捕虜体験が作家への道を
決めたのかもしれません。

第二次戦後作家は、
作品の構造やテーマが多層な印象。
戦争は悪だけど、悪にも色々ある、
価値観の崩壊や再生がないまぜな
日々を送っていたに違いありません。
何かを無邪気に信じることは
もう出来ないと痛感してたんでしょう。

素朴な反戦小説は書かれなかった
という点に、第二次戦後派の
大切な核心がありそうです。

だって、8月15日敗戦の日を境に
日本人の価値観が瓦解し、
180度変化したのですから。

ところで、思うんですよ。
今、私たちを苦しめる疫病禍も、
何歳で体験しているかで、
人生観に大きな影響を受けたり
受けなかったりするでしょうね。

今の状況では、
対面コミュニケーションや
対面恋愛は、
以前のようにはできなくて…
それが思春期や青春期であれば、
人格形成に大きな影響を
受けるでしょうね。

何才で試練を受けるか?
年表を眺めていく時、
大事にすべきポイントの一つかも
しれませんね。

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