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おきにいりの本棚

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尊敬するnoterさんの、好きすぎて何度も読みたい!!noteたちです。
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2021年3月の記事一覧

差し上げたのに掲出する

ひろくんのわんわん

夏に生まれたひろくんは、さいきんけっこう泣きがひどい。
冬は寒いからいやなのかな。
そんなとき、あたしは毛先を差し出す。
長いじまんのみつあみの先。
きゃっきゃ笑って喜んでくれる。
よだれべとべとつくけれど、ひろくんが笑ってくれるほうがうれしいから、許す。

ひろくんはちょっとだけしゃべる。
まーと、とーと、わんわんだけ。
まーはまま。
とーはとーたん。
(うちでは和風と洋風

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ほんの小さな鎌倉物語

ほんの小さな鎌倉物語

 サザンの『希望の轍』がちょうど流れていた。材木座海岸の渋滞を抜け、ポンコツの空色の車が次の渋滞に再び引っ掛かるまでのわずかな間、ちょうど流れていたのだ。

 ふたりはお互い、それぞれの頭の中で、
「あ、この人と結婚する」と直感した。



 彼も彼女もサーファーではなかったし、リッチでもオシャレでもなかった。
 それでも、将来住むなら鎌倉なんて素敵だな、とそれぞれが考えていたことをお互いは知ら

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祖父がいた場所

祖父がいた場所

都電荒川線の終点、早稲田停留所すぐのところに祖父はいた。今はもう無い、古い家だ。

私は祖父を「早稲田のおじいちゃん」と呼んでいた。早稲田にいるおじいちゃん、そのまんま。

早稲田のおじいちゃんの庭にはポンプ式の井戸があり、子どもだった私は遊びに行くたび面白がってポンプを上下させ、ジャージャーと水を出したものだ。赤い水が出る。普段はもう使っていない。

その土地でうまれ育ち、たくさんの思い出がある

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