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【農業】イタリアにおける「ショートサプライチェーン」の展開と小規模家族農業

こんにちは。新小樽少年です。
毎回記事の冒頭で「こんにちは」と言っているのですが、
時々「こんにちわ」と間違えてしまうときがあります。
そもそもこの2つに正解なんかあるのか?と思ったので、
調べてみたところ、「こんにちは」が正解のようです。
「今日は」が日常的な使用から派生し挨拶になったそうです。
読み方的には「こんにちわ」なのになんでやねん!!
だったら英語みたいに「Hello」と「Today」に、
きっちり分けてくれや!と思うのも日本人が故だからなのか。
今年21歳になりますが、日本語はまだまだ勉強中です。

そんなことはさておき今回は連載の最終回になります。世界を取り巻く新自由主義の思想から、小規模農家・家族経営農家の取り組みを10回にわたってみてきました。最終回はタイトルの通り、イタリアの農業について取り上げます。環境に配慮した農業、農業の工業化に対するオルタナティブがあるのでしょうか。

1.イタリアにおける有機農産物市場

イタリアにおけるグローバリズムへの対応として有機農産物市場が挙げられる。1990年代以降、大規模な有機農産物の小売りが展開された。農産物流通という点ではどのような動きがあったのかをこの記事では取り扱う。本節ではイタリアの有機農産物市場を概観する。

1992年にEUの有機農産物理事会規則が制定されてから有機農産物市場は急速に拡大した。2014年時点で国の有機農業面積の割合は農地面積全体の10%を上回っている。ちなみに日本は同時点で0.22%であった。有機農業面積、有機生産者数が急増し、2016年には国別有機農業面積で179.6万haを記録した。

EUの共通農業政策、特に農村開発政策の効果や大規模小売店の展開、また様々な推進組織企業協同組合が市場拡大の大きな要因とされている。(これ以外にも地理的条件、文化など外的要因は多く考えられる

有機食品市場が拡大するにつれて、大規模小売店もこの販売に取り組んだ。中でも有機専門スーパーマーケットの「NaturaSi」は店舗数を3年で100店舗ほど増やし、「Cuorebio」という小さな有機小売りチェーンを290店舗所有している。

2014年には2.7億ユーロの売り上げがあった。日本円で345億6千万円になる。(1ユーロ128円換算。)ここから市場の高さがうかがえる。またNaturaSiは品質の基準を設けており、圃場での確認、ラベリングの共同作業、生産者との信頼関係を作っている。

2.大型小売業の有機農産物集荷

大型小売業の有機農産物集荷はどのように行われているのか。

アポフルーツ・イタリアは生産者組織であり、イタリア国内に3か所の包装・出荷センターを持っている。(財政基盤が大きい?)他の小売店との競争力をつけるために、選果およびパッケージライン多品目をそろえ、配送に柔軟な動きをつけている。

この事例から有機農産物にはいかなるサプライチェーンに対応する取り組みがなされている。
環境負荷・コストを考慮すれば、このような地方から田舎までの輸送手段、つまりロングサプライチェーンは有機農業の効果を打ち消しているのではないかとも考えられる。)

3.GASの生成と展開

GASとは「連帯者購買グループ」の略称である。その活動はフェアトレードなどのエシカル消費を促し、有機農産物の販売チャネルを担っている

用語解説
フェアトレード⇒公正取引のこと
エシカル消費⇒環境に配慮された農産品を購入、消費すること。
チャネル⇒流通経路

1997年には、多様な購買者グループをリンクするために、生産者と消費者を結ぶ情報交換が行われた。その結果2016年には合計13万4,190ユーロ(1,610億円)の売り上げを記録した。1世帯たりの購入金額は平均932ユーロ(11万9,296円)になる。(128円レートで計算)

これに対し日本の有機農産物市場は1,850億円。1世帯あたり3万4,644円になる。ここからみてもイタリアの有機農産物市場が大きいと分かる。

GASの特徴は大きく4つある。
①基本的に消費者主導の流通システムであるということ
②共同購買による食品の安全と有機農業者の支援のほか、倫理的な意味合いが強い組織であること
③生産者から消費者への直接配送
④反グローバル化、食品の安全問題に危惧している人が構成員として多いこと。

4.SFSCの多様化

SFSCとは「ショートフードサプライチェーン」の略称である。イタリア農業の特徴としてSFSCの多様化が挙げられる。生産者と消費者の距離をいかに短くするために取り組まれている事例をいくつか紹介する。

①ファーマーズマーケット

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これはドイツのファーマーズマーケットになる。イメージはこんな感じ。

②GAS(連帯購買者グループ)
これは前節で言及したため、ここでは触れない。

③宅配・ボックススキーム

④農業協同組合
イタリアには日本のような生産から物流、日本全体に支社があるような巨大組織ではないが、地域の農業従事者が組織を組んで地域経済を担っている団体がある。ドイツでも似たような取り組みをしている団体はいくつか存在する。

イタリアのエミリア・ロマーニャ州は有機農業が盛んな地域である。その地域にあるアルバイア協同組合では、加入会員がサブスクリプションのような形で野菜を受け取ることができるシステムを設けた。あるバイア協同組合には農業を本業としている者は存在せず、組合員が積極的に農業に関わっている貴重な事例である。

カンピ・アペルティ生産者と消費者が共同運営するファーマーズマーケットである。有機農産物にこだわっており、価格や運営に関しても両者が積極的に関わっている。

5.イタリアの家族農業

イタリアも日本と同様、農業登録者団体のうち96.4%が家族農業による経営であった。農地全体の内89.4%(1,149万ha)が家族農業によって営農されていた。

前節でもSFSC(ショートフードサプライチェーン)の多様化について述べたが、その生産者は大半が小規模家族農業である。これらの小規模家族農業を少しでも支えるために上で述べたようなSFSCは生産者と消費者の距離を近づけるために、一躍買っていると思われる。

6.まとめ

いかがでしたか。今回の参考文献は、イタリアの新自由主義に対する小規模農家の取り組みが見えてとても勉強になりました。SFSCが多様化することで地域経済が潤うということも強い関係性を伺えました。

イタリアは各国と比較しても有機農産物市場が大きい。大規模小売店でさえも、その生産者との関係性をよりよく保つ取り組みをしている。利益先行ではない関係性を実現できている。

GASはどちらかといば規模は小さいが、有機農産品の販売に大きく貢献している。その貢献守備範囲は地域単位が中心のようだ。

最後にSFSCの多様化について事例を用いて言及し、生産には小規模農家が大きくかかわっていることに触れて結びとしている。

私個人としてはもう少し家族農業経営について触れてもいいのではないかと思いました。とはいえ有機農産物市場には規模拡大の可能性があることが十分うかがえた。またこれらのローカルフード運動が地域経済を循環させるに違いない。それゆえ日本の農業もより多様化を求められているのかもしれない。

連載記事をご覧いただきありがとうございました!
僕も記事を書くことを通じて、非常に多くを学ぶことができました!
応援してくれた方ありがとうございました!!
次回からは「リサイクルと世界経済」を取り上げたいと思います!

新小樽少年

6.参考文献・HP

オランダ農業とつながる「世界の有機農業(オーガニック)事情を知りたい!【有機農地の規模編】」(2020/04/06 online)

農林水産省「有機農業をめぐる我が国の現状について」(2020/04/09 online)

FiBL(2020/04/06 online)

この記事は『村田武「新自由主義グローバリズムと家族農業経営』筑波書房、2019年を参考にして書いています。
岩本泉(2019)「第9章イタリアにおける『ショートフードサプライチェーン』の展開と小規模家族農業」
p257-282


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