『歌詞の意味はわかったほうがいい?』 斎藤アリーナさんと歌詞のワークショップその2
アリーナさんの鼻歌に歌詞を乗せるワークショップ。
今回は、実際に考察を入れていきたいと思います。
まずは、お題の鼻歌をもう一度。
さて、ここからは具体的に作品を紹介しつつ、考察をいれたいと思います。
まず紹介するのはこちらの作品。
夕暮れに染まる 波の肌
浜辺に響く風が 穏やかに
わたしの記憶を ゆらゆらと
ゆりかご
歌詞の見た目から話します。
正直僕はこの作品は普通かなと思いました。
あまりひっかからないというか。
では、この作品、歌入れしたらどうなるのか聴いてみましょう。もちろん歌ってくれるのは斎藤アリーナさんです!ある意味これ新曲ですよね?
しかし。歌うまいなぁ。。。考察を忘れそうです。ことばが歌に乗るって気持ちいいですよね。
さてこの作品、アリーナさんが「歌ってて一番気持ちよかった」と言った歌詞です。
なんででしょう。
僕の考察はこうです。
日本語のイントネーションとメロディがあってるからだと思います。
こういうことです。
「夕暮れに染まる波の肌」と朗読する。
イントネーションをそのままに
拡大するとメロディになる。
つまりこの歌詞は、メロディをしっかりと感じて、
無理のない抑揚の日本語が選ばれているから気持ちよく響くのだと思います。どうしてなんでしょう。歌詞を読んでるだけのときよりも歌に乗せた方が意味らしきものを感じられるのは。不思議です。
そして、圧巻は3行目後半の「ゆらゆらと」
最初にお題のメロディを聴いた時、僕は、3行目の後半のメロが言葉乗りにくそう!めちゃくちゃ難い!と思いました。
それを、ゆらゆらしたメロディによりそうように、ゆらゆらと、とだけ書く。
最後の「ゆりかご」ってのが時間切れで言葉出てこなかった感はありますが、全体としてとっても素敵だと思いました。
4行目に決め台詞、パンチライン、圧倒的展開、本心、全然違う情景とかがハマるときっと超かっこいいんだろうなと思います。
日本語に寄り添う日本語の歌詞ということでいうと、ぼくはキリンジの「雨を見くびるな」を思い出します。
「雨をみくびるな」 作詞作曲 堀込高樹
あぁ、口づけで責めてみても カエルの面にシャンパンか
舌を噛むなんてヒドいな ご挨拶じゃないか
みろ、曖昧な笑みが浮かぶ あらかじめの嘘の果てか?
まばたきがいやに少ないぜ 悪意の波長は荒れ模様
街の灯が水に滲んでゆく「夜中には止む。」
この雨をみくびるな みぞおちを蝕んでゆくだろう
深く深く
ひたすら日本語のイントネーションを拡大してメロディを作っていることがわかるとおもいます。「この雨をみくびるな」とかすごくないですか?
堀込高樹さんのこういう作風が僕は大好きです。
つづいて、こちらの作品
涅槃のこころ 座禅 Ha
曼荼羅 並べ 涅槃
涅槃のBEAT
阿弥陀如来 如来
薬師如来
観音? ノン
菩薩? ノン
わたし如来
突拍子も無い見た目のこの作品ですが、
歌うとどうなるのでしょう。斎藤アリーナさんが歌ってくれました。
冗談交じりに「歌ってて楽しかった」と言ってましたが多分冗談じゃないと思います。
この作品、妙に惹きつけられるものがあります。
後半戦、アリーナさんの歌きいてて本当に楽しそうだなって思います。(余談ですが、演出家としてはアリーナさんのこういうコメディエンヌ的センスは本当に一緒にいて幸せを感じる瞬間です。)
この作品から学べるポイントは、いかに日本語らしく響かせないかということを楽しむということです。
如来?は英語っぽいし、ノン、ノン、はなんかヴォサノバっぽいし楽しいですよね。
この作品を聴いて思い出した、楽曲があります。
はっぴいえんどの「颱風」です。
はっぴいえんどは、言わずと知れた伝説のロックバンド。
メンバーは細野晴臣、大瀧詠一、松本隆、鈴木茂。
4人とも後の日本の音楽界を引っ張ったメンバーです。
実際、細野さんがインタビューでおっしゃってました。新たな日本語の響きを実験していた、と。日本語の響の破壊というか、再構築の草分け的存在です。
「颱風」 作詞作曲 大瀧詠一
四辺は俄かにかき曇り
窓の簾を洌たい風が
ぐらぐらゆさぶる
正午のてれびじょんの天気予報が
台風第二十三号の
接近を知らせる
空を鼠色の雲が
迅く迅く迅く迅くはしり 風は
どんどんどんどんふいてくる
台風 台風
どどどどどっどー みんな吹きとばす
さあ歌詞を見ていきましょう。
まず見た目が超かっこいい。
「四辺(あたり)は俄(にわ)かにかき曇(くも)り 窓の簾(すだれ)を洌(つめ)たい風が」
超かっこいい!つーか読ねーよ!いやー、かっこいい!古い響き、古い書き方かっこいい。
さあ響きを聴いていきましょう。1行目から飛ばしてますね。
「あたりはに わかに か きくもり」
そして2行目
「まどのす だれを つめたいかぜが」
きわめつけは、最後の行
「ふきとば す」
目をつむって聴くと本当に何て言ってるかわかんないっすよ。
なのにこのパワー。
僕は、この曲を聴いて、なぜだか視界がひらけていくような不思議な感覚があります。何でなんでしょう。みなさんはどうですか?
ちょっとハードかなと思いつつアリーナさんにも聴いてもらいましたが、すごくいい反応してたのが意外でした。
さあ、歌詞の迷宮に迷い込んできたぞ。
歌詞は、意味がわかったほうがいいのか、それとも大胆に意味を破壊するべきか?
答えは、わからないのでまだまだ考え続けるの巻。つづく。
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