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我が街の恋人たち

買い物途中、付き合いはじめっぽい初々しい感じのカップルがいた。
自動車販売店と隣の建物の間の隙間に向かって彼女さんを立たせて彼が後ろに回って手で彼女さんに目隠しをしている。
何してんだ?と思ったら、彼が手をどけると、

「え?うそ、かわいい」

彼女さんの視線の先を見ると親猫にじゃれる子猫がいた。
二人は猫を見ながら楽しそうに話していて、その二人の初々しい感じにかわいい二人だなと思う反面、

“ 犬の〇ンでも踏めばいいのに ”

という僻みというか本音がよぎった。

買い物を終え信号待ち中、横にいかにも陽キャというかヤンチャそうな、さっきの子たちとは色味がまるで異なるカップルがきた。

彼氏が彼女さんに声をかけていて、チラ見すると彼女さんはスマホいじっていて無反応。
それでも声をかけ続けて、気だるそうに彼女さんが返事すると、

「やっぱ、俺、お前のこと好きだわ」

僕以外にも何人か信号待ちの人がいるのに愛の告白。
陽キャは違うなと思ってたら、

「そういうのいいからさ、貸した金返せよ」

彼女さんの完全に予想外の言葉。

「お前、ユウジと飯食いに行っておごったんだって?人におごる金あるなら、あたしに金返すのが先だろ」

流れ変わったというか、どんな流れだこれ?って、思ったら笑ってしまって二人とは反対方向に顔を向けた。
反対方向にいたおばちゃん。マスクで顔の下半分は見えなかったけど、すごい驚いた顔というか目をして二人を見ていた。

他にも何か言っていたけどトラックのクラクションで何て言ってるか聞こえなかった。

姉が数か月前に言っていた
“ この街の人間に質を求めるのは間違っている ”
この言葉を思い出して納得してしまった。

わが街の恋人たちは個性が強いというか灰汁が強い。

ジュースが飲みたいです('ω')ノ