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【小説】ダーツとフリースロー 2.『憤懣やるかたない』
三浦大地が父である三浦和也から引っ越しの必要性を告げられたのは7月半ばのことだった。
「――決まったよ。ようやく教授になれそうだ」
母真理恵と並んだ夕飯の食卓で大地は父からそう聞いた。
「あら~やったわね。おめでとう和也さん」
「おめでとう父さん」
「うんうん、皆、ありがとう」
妻のお酌したビールをぐびりと飲み、和也は大きくひとつ息を吐いた。「しかし、真由には怒られるかもしれないな」
【小説】ダーツとフリースロー 3.『へえ、あんたも大地っていうんだ』
転校するのは三浦大地にとってはじめてではなかったが、久しぶりのことだった。
人生で2度目の経験である。前回の転校は小学5年生に上がったタイミングでのことで、当時は世界のすべてが根本から変わるような、きわめて重要なことであるように思われた。
それまでに培ってきた友人関係がすべてリセットされたのだ。幼馴染は駆逐され、やがてそれでもできた小学校の友達も、じきに中学受験などでほとんどが散り散りに