樹海
わたしの書いたブーン系界隈のものを置いています
暗記嫌いな薬剤師が国家試験受験に使えそうかもと思った覚え方やエピソードの垂れ流し
仲の良かった女子がいた。 中高生あたりの話だ。幼馴染と呼ぶには関係の始まりが遅すぎる気がするが、当時を思い返す今となっては誤差の範囲と言えるのかもしれない。いずれにせよ、僕は僕の思春期の大部分を彼女との関係の中で過ごした。彼女もそうだったことだろう。 どのようにしてそのような関係性を構築したのか覚えていないが、とにかく僕と彼女はおよそあらゆる個人的な情報を共有していて、僕は彼女に初めて恋人ができたのがいつのことで、その相手がどこの誰なのかを当然のように知っていた。彼
日経DIに『ボクの価格交渉術』という記事が載っていて、内容が面白かったのでおれも同じようなものを書いてみようと思いました。本業話をするのは久しぶりだな。noteの更新自体が久しぶりだけど。 該当のコラムはこちら。ご覧あれ。 というわけで、今回の内容は薬剤購入の価格交渉についてです。もちろんこの記事内容はフィクションですが、わたくしなりのやり方的なところを紹介できればと思います。 前提をまず書いておくと、↑のコラムと大きく状況が違うのは、おれは薬局経営者ではなくただ
お受験に使う知識じゃないとは思うんだけど、おそらく実習に行った薬学生や新人薬剤師のほぼほぼ全員が疑問に思うところだろうからこのカテゴリにすることにする。今回はいわゆる“ヒート”について。 この単語はたぶんマイアミ・ヒートのファンでもない限り世界中で薬剤師しか使わないものなので、「なにそれ? それ知って何か俺の人生に利益ある?」と疑問に思ったnot薬剤師は今すぐこの記事を読むのをやめた方がいい。 知らないけど俺には必要ないねと思っている薬剤師には一応知っておくことをお
ある日医師から相談を受けた。 「エビリファイ内用液を使いたいんだけど」と。 エビリファイというのは抗精神病薬と呼ばれる薬のひとつで、一般名をアリピプラゾールという。その医師はその液剤を患者に飲ませたいというわけだ。 アリピプラゾールの液剤はウチの病院では現状不採用なので、彼がこれを使用するには、薬剤採用の決定権を持つ僕を納得させる必要がある。 薬剤の臨時採用について、僕はかなり寛容な病院薬剤師なんじゃないかなと思う。不良在庫になることが明らかでな
今回はふたつの薬について触れていこうと思う。くくりとしては表題の通り、エッチなくすりだ。 あるいは少年少女にとって教育上望ましくない内容を含んでしまうかもしれないが、このカテゴリの記事は主に薬学部生を対象として書いているつもりなので、おそらく年齢制限がかかったとしても構わないことだろう。何よりそのような内容を記事に含めるつもりはないから問題ない。 このくくりの字面は記憶に定着しやすくするためのものであって、僕にとっての語呂や覚え方というやつは、品がなく面白いものであ
昔から写真を撮るのが好きだった。 きっかけが何だったのかは覚えていない。記憶がないほどの幼少期にオモチャとして与えられたカメラのようなものを気に入ったのかもしれないし、父親や友達なんかが持っていたカメラに興味をもったのかもしれない。 とにかく私は写真を撮るのが好きなのだ。誰に見せるわけでも、SNS上でバエを競い合っているわけでもなく、勝手にひとりで撮りたい写真を撮っている。 たまに見返し、撮りたい写真を撮れていることを確認してほくそ笑む。素晴らしいひと時だ。これ
前回アメジニウムについて書いている途中で血圧に少し触れたので、その際血圧の式についても書こうと思ったのだが、意外と長くなりそうなので挟み込むのはやめておいた。書いた上で振り返ると、やっぱり結構な長さになってしまったので、賢明な判断であったと思う。 これは決して記事数稼ぎなどではない。 なお、薬剤師国家試験での出題歴については検索してもよくわからなかった。なにぶん“血圧”という検索ワードが強すぎて、すべてを覆い隠すような量が引っかかってくるのである。 それでは講釈を垂
宣言した通りアメジニウムについて書こうと思う。アメジニウムは昔からある結構よく使われる薬で、先発名をリズミックという。 昇圧剤だ。そのため低血圧に対して使われる。ただし普通のひとの低血圧は、ふらつきや眩暈や倦怠感といった自覚症状がなければ概ね放置されるものなので、結局臨床での使用目的は、低血圧というよりそういった症状の改善というところになる。先発名がリズムっぽい名称をしているのでダジャレ的に抗不整脈薬のような印象を受けてしまいかねないが、「こいつは違う」と覚えなければ
これまでの人生の中、僕は一貫して勉強嫌いで、特に暗記科目がからっきしだめだった。だから何とか潜り込んだ薬学部でも成績はほとんど底辺で、合格した薬剤師国家試験の点数もボーダーギリギリのものだった。 確か225点が合格点で僕は自己採点が230点とかだった。ちなみに、それまでの間にいくつも受けてきた国家試験模試で合格点を取ったことは一度もない。 その第99回の薬剤師国家試験を受けていて思ったことがある。それはやけに難しく、普通の勉強では辿りつかないような内容の設問があるなと
僕が果たすべきもっとも重要な仕事のひとつとして、娘を毎朝幼稚園の送迎バスに無事乗り込ませる、というものが挙げられる。 やつらは完全に殿様商売だ。自分たちは平気で10分や20分、ひどい日には宣告なしに30分近くも約束の時間から遅れてやってきたりするのだが、こちらの遅刻には不寛容で、最低限園児たちを詰め込むルーチンワークの間に駆け付けることができなければ、僕らは躊躇なく置いていかれる。 それは惚れ惚れするほどの潔さなのである。おそらく九州男児が運転をしているのだろう。僕
精神科の病院薬剤師という職業柄、僕は入院患者の状態を評価し、その記録をカルテに記載する、ということが割とよくある。 それは何らかの算定に使うためだったり、「直接言うほどのことじゃないけど一応おれはこう思うので、もし読む機会があって役に立つなら勝手に参考にしてちょうだい」という程度の伝え方をするためだったり、純粋に患者に自分が行ったことの記録を残すためだったりと、その用途は様々だ。自分の介入が必要だと考えるところに関しては直接医師なり病棟なりに働きかけるため、カルテ記載しか
小学校の高学年で転校をした。 当時、転校元の小学校では消しピンという遊びが流行していて、それは転校先にはまだ伝わっていなかった。消しピンというのは学級机の対角線上にそれぞれ消しゴムをセットして、交互に弾いて落とし合うといった類の心躍る競技である。 ご多分に漏れずこの遊びにあらゆる情熱を燃やしていた僕は、それなりに頑張って転校先の小学校にそれを流布した。新天地でもお気に入りの遊びをやりたかったし、新しくできた友人たちにこのシンプルかつエキサイティングな面白さを伝えたか
「どうした少年」 スマホがそのように訊いていた。 ずいぶんと長い間覗き見をしていたものだ。家を出てから不審に思われるほどの時間が経っていたらしい。三浦大地は大きくひとつ息を吐き、「お散歩がてらにちょっと遠くのコンビニまで行こうとしたら迷っちゃった。ご心配なく」と返信の文面を作る。 姉の友人から送られてきた迷子の間抜けさを煽るようなスタンプを無視すると、三浦大地は急いでコンビニへと足を進めた。あまりに時間がかかってしまうようだと、心配の要るレベルの迷子だと思われ
それは長い男であった。 頭のてっぺんから足の先までのすべてが長い。 やはり長く、癖の強い黒髪を、乱暴にヘアバンドでまとめている。にじんだ汗が面長の顎や段のついた長い鷲鼻の先から粒となって落ちている。 手足が長い。 だぼつくサイズのノースリーブから伸びる腕には強靭な筋肉が伴われているのだが、その長さによって引き延ばされるため、遠くから見ると一見細い腕をしているようにさえ見えるかもしれない。しかし近くでそれを目にすれば、太い筋肉繊維の束が、彫刻家が荒く削った
転校するのは三浦大地にとってはじめてではなかったが、久しぶりのことだった。 人生で2度目の経験である。前回の転校は小学5年生に上がったタイミングでのことで、当時は世界のすべてが根本から変わるような、きわめて重要なことであるように思われた。 それまでに培ってきた友人関係がすべてリセットされたのだ。幼馴染は駆逐され、やがてそれでもできた小学校の友達も、じきに中学受験などでほとんどが散り散りになっていった。 家庭環境も大きく変わり、少年三浦大地にとってその日はまさに生まれ
これはなかなかに悩ましい事件で、おそらく最終的な帰結までにとても長い時間を要するだろうから、ここらへんで現状俺の知るところをまとめてみることにしました。某NBA放送に投稿した内容+αって感じで、興味がある人だけ読めればいいのでちょっぴり専門的な内容や、自分なりの考察のようなところも交えていこうと思う次第。笑い事じゃない内容だけども楽しんでいただければ何よりです。 ことのはじまりは昨年6月、レスリングの阪部創選手(イケメン)がアセタゾラミドという利尿薬を使用していたとして