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私の設計裏話2 案内図は配置図

学生時代に学んだことは大人になってもやる

案内図をトレースします。なんのことやら。つまり、学生時代やってた当たり前の「配置図トレース」です。実務的には学生時代に考える配置図は「案内図」という図に相当します。案内図は土地がどこにあるか、住所だけでなく、図的に「現場」を定義するための資料です。以前であればゼンリンの地図を使ったりしますが、今では国土交通省のGISからpdfを書き出したり、Googleマップなんかを転用して使うことが一般的です。しかし学生時代では愚直に航空写真をトレースして(なぞって)図起こしし、配置図(案内図)を再現したりします。それこそパソコンでトレースする技術がない1年生のころであれば、手書きでトレースすることになります。実務ではあまりやらなくなるものですが、トレースすると新たな発見が見つかるものです。案の模索する過程で学生のころにやっていたことを試してみるのも一興です。

配置図は建物の配置図?場所の配置図?

計画地以外もある程度意識しながら描いてみるといろいろなことが見えてくきます。

ああ、この家のベランダはすぐ正面に壁がるんだなぁ。

ああ、この屋根とこの屋根とこの屋根はまったく同じ形だなぁ。なんなら外形までも一緒だ。

ああ、この家は少し頑張ってセットバックして少しでも自然光がはいるように工夫してるんだなぁ。

そういった考えが巡ると、多くの住居は土地の中でしか考えていないと、実感します。学生時代はそういった思考から抜け出すように、先生方や先輩方から色々ご指導いただいたはずです。気づくと「配置図(案内図)」は単なる住所情報のみの図に留まってしまい、その場所にあるべき建築像の提案ができなくなってしまいます。学生時代に目を輝かせながらデザインを模索していた日々は、「用地」や「住所」でなく「土地」や「場所」を考えるトレーニングでした。設計の裏側にはそういった土地や場所の可能性を拾い集める一見無駄のように感じる作業が重要になってきます。

学生時代にやっていたことをやらなくなる?

私が学生を卒業してからおよそ15年の月日が経ちました。無駄な作業をしていてはプロとして失格です。確かに学生時代に提案していた内容は「歩留まり」や「費用対効果」などを無視して考えていた内容がほとんどです。しかし、土地に向かい合って考える思考は、社会に出て活かせる技術だと思います。窓の目の前がよその家の外壁であることなんて、よくあります…ではいけません。そうならないように、将来の建て替えなどが想像できればどうなる場所なのかなど、実際の都市においてどのように空間を計画するかを考えるのは建築設計者として年齢問わず要求される基本的な姿勢だと思います。学生のとき当たり前のようにやっていた作業は、大人になって取捨選択しながら実践に移すことを忘れないようにしています。
学生時代にやっていたことをやめてしまうのは「代替手法」があるからです。もしゼンリン地図に掲載されている情報のみで充分であれば、学生時代にトレースなどしないでしょう。Google地図で判定できることだけで土地情報が分かるかと言えばわからないので、ストリートビューなどで移動先の実情の風景を観察したりすることが日常茶飯事です。

視座の高さは縮尺の大きさ?

トレースすると色々な情報が自然と描き込まれる

建築設計は高い視座で物事を計画することが重要だと考えます。建築表現をしていくうえで大型施設であればせめて1/300、住宅であれば1/100程度の大きさで図面をかかないと情報が足らないと思います。しかし配置図(案内図)とあれば1/1000や1/3000というスケールで描くのは普通です。それこそ建築の大小に関係なく配置図(案内図)とはそういうものとなります。縮尺の大きい図は建設に必要な情報は希薄になっていきますが、建築と都市の関係はよく見えます。さらに大きな縮尺になれば地球座標との関係なども見えてくるでしょう。建築設計を学んでいたころの視座とは大変高尚なものだったと思います。そういった学びを実務の背景で薄めてしまうのではなく、虎視眈々と実行するために鋭いまなざしで狙っていくようにしています。

余談ですが、この配置図スケッチは内装設計のためのスタディ過程の図です。

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