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私の設計裏話1 電気は嘘をつかない


電気設計は本気でやる。それでも完璧はいつも程遠い。

前職の電気設計担当の(親しみを込めて)おじいちゃんが「電気は真実しかない。機能しないということは絶対に問題がある。しかも三角やグレーなんてものはない。なんたって機器がつかないんだ(作動しない)から」と酒を呑みながらニヤニヤしつつ語ってくれたことを忘れられません。しかも電気の配線なんて壁などのなかに隠蔽されることがほとんどで、写真にその不都合が記録されにくい。(おそらく皮肉も少しは込めて)デザインみたいになんとなく良さそうとか、設備みたいに運用で延命してタイミングをみて修繕とかのようにはいかないシビアさがある、、、そういった趣旨のことをさらっと言う彼のかっこよさは案外社内で知られていないのがちょっと残念でしたが、より僕の脳裏に焼き付くのでした。

未来を設計するということ

大型の建築物を計画するときは「電気設備設計」を外部の専門事務所に委託するのが通例ですが、住宅やリノベーション程の規模ではなかなか委託費を用意することができないもので、外注に至らないものです。僕の事務所ではそういった小型案件は自分達でやってしまうことがほとんどです。所員にもかなり力を入れてやるように指導しています。

当たり前のように電気を使いますが、昨今のスマートハウスなどを筆頭に通信設計もかなり重要となってきています。「スマートハウスなんて大それたものは、、、」と言われる方も大勢いらっしゃいますが、意外とお客様の要求は高いものです。特にテレビなどの映像コンテンツは今後はインターネット通信でパソコンやタブレットで見る時代になったりするのは大勢の方が感じていることでしょう。時代を先読みしながら後々の改修できる余力なども含めて設計者の力量が重要になります。

「お詳しい」からこそ悩む

私の住宅系クライアントはハウスメーカーさん、地場工務店さん、デザインに特化した事務所さんと折り合い付かず依頼される傾向にあります。設計してみるとその理由もみえてきます。

とあるクライアント様のご要望のに「10ギガビット/秒の通信速度にチャレンジしたい」、「サーバーラックに全てのネットワークを集約して管理したい」、「テレビシステムは最初にアンテナ、そのあとケーブルテレビにしたい。でももしかしたら光テレビかも」というものがありました。

当然それらは「将来の間取り計画」、「経年変化を感じる素材を要所にいれたい」や「設計者のデザインコンセプトが欲しい」とは別のご要望です。これからの時代通信速度は死活問題だったりします。このクライアント様のように具体的な言い方ではないにせよ、通信速度が乱れる原因がパソコンなどの設備システムなのか、それとも契約なのか、まさかの家のシステムなのか、そういったことを考える必要があるわけです。リノベーションやリフォームでは既存活用などを念頭に考えないと費用があがってしまいます。なんたって得意な業者は高いし、営業担当者で話がわかるひと少ないし、、、しかしこれからは必要になってくるでしょう。暮らし方に大きく関与する通信設備は間取りにすら影響するのは、容易に想像できます。「住宅」を専門とされる専門家(設計者・ハウスメーカー・工務店)は頑張って時代についていかないといけません。

悩み、考えて、設計する…電気設計も意匠設計も本質は同じ

電気設備の通信系は特に年々進化して、様々なサービスが生まれてきます。将来の電気工事で寝室に立ち入られることもあるかもしれません。設計はそういった暮らしの未来像をできる限りの見通しし、柔軟に考えることが大事です。

電気の話をしながらデザインの話のようになってきましたね。

設計は奥深くて案件毎に本当に違うものです。「これでいい」は妥協で、「これでなければならない」にたどり着くまでたくさんの案を練っては捨てるものです。合理的になりきれない設計は意外と未来の生活者へのラブレターのようなものかもしれません。みえなくなる配線にも将来を見据えた重要な設計が仕込まれ、将来きっと意味のあるものとしてお客様の目に映ると信じて設計をします。

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