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土木技術者が読んでおきたい書籍 ~委員によるビブリオバトル~ vol.3

みなさんこんにちわ。教育小委員会の上嶋です。
急に寒くなりましたね。みなさん体調管理に気を付けてください。寒いときには温かい室内で読書!ということで3回目の土木技術者が読んでおきたい書籍の紹介です。

今回紹介する書籍はこちら⇩!!

『地盤は悪夢を知っていた―地盤に残る地震痕跡―(代表執筆 小長井 一男(東京大学名誉教授) 著)』です。

過去の災害についての被災者の方からの伝聞やそれを報じる写真は時間とともにどうしても忘れられてしまいます。しかし、地盤は災害によって与えられた変形を記憶できる履歴材料であるため、それらを分析することで過去からの教訓を学ぶことができるというのです。

この本を紹介してくれた濱委員のコメントです。

地震について勉強したいけど、技術書は難しくてとっつきにくい・・・そんな初級学習者におすすめの一冊です。防災よりも、地震そのものにスポットを当てながらも、一般の人にも読みやすくなっています。短い章ごとに完結する話になっているので、興味のある箇所から読み進んでいくことができます。
私は、鳥取県境港市出身で、2000年に発生した鳥取県西部地震を経験しました。地震発生時、私は中学3年生で、その瞬間はちょうど掃除の時間だったのですが、これまで経験したことの無い大きな横揺れに、友人と抱き合って震えていたことを鮮明に覚えています。この地震では、死亡者ゼロ、火災ゼロと、人的被害が少なかったことが幸いでしたが、境港市は砂が堆積してできた砂州状の弓ヶ浜半島の先端に位置しており、埋立てによって建設された港湾や工業団地での液状化の被害が甚大でした。(私はこのとき初めて「液状化」という言葉と現象を知りました。)
本書の第八章、鳥取県西部地震の章では、風土記や江戸時代の書物から地形の成り立ちを紐解き、地震時の被害状況について解説しており、読み物として非常に興味深く、勉強になりました。また、土木技術者として災害へどう向き合うか、その心構えを考えさせられる一冊でした。

この書籍で触れられている地震は、「北海道胆振東部地震(2018年)」「熊本地震(2016年)」「東日本大震災(2011年)」「中越沖地震(2007年)」「中越地震(2004年)」「鳥取県西部地震(2000年)」「福井地震(1948年)」「善光寺地震(1847年)」「関東大震災(1923年)」です。

私も読んでみました。
すでに発生してしまった地震に対して地道に地震痕跡を探し出すことで、防災上の有用な多くの情報やヒントを得ていくことが必要であると再認識させられました。また、地震だけでなく、我々の業務においても少し掘り下げることで新しい発見があったり、トラブルを未然に防ぐことができたりするなと改めて思いなおしました。

また、本文中では、各地震において発生した事象に対して、ある仮定の下に数式で現象を解説しています。例えば、東日本大震災において女川で発生した杭基礎が引き抜かれた現象に対して、数式を用いて解説しており、とても興味深く読むことができました。

この本では、自身に関することや地盤・地形に関する専門用語がいくつもでてきます。しかし、巻末に本文中で使用されている用語に関して解説されている用語集が用意されているので、この分野に対して明るくない方にも取っつきやすいのではないかと思います。
また、値段も1,000円以下と手に取りやすい価格になっています。

土木技術者として災害に対しての心構えを再度考えさせられる書籍になっていますので、一度手に取ってみてはいかがでしょうか!

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