見出し画像

文体模写の模写日記:安部公房編

これは遅刻の記録である。

僕は今、この記録を電車に揺られながら書き始めている。ドアが開き、改札を出るとちょうど5分歩かなければならない。

つまり、その5分間で、この記録をつけているというわけだ。

遅刻は改札を出るだけなら、わけはない。所要時間はせいぜい2分である。だが、待ち合わせ場所に合流するには、かなりの勇気がいる。

ところで、君は遅刻男の噂を聞いたことがあるだろうか。べつに僕の噂ではない。遅刻男は僕だけではないからだ。全国各地にかなりの数の遅刻男が身を潜めている。だらしない日々を送り、ギリギリまで娯楽に浸るのだ。だが、誰もが、出来れば、見て見ぬ振りですませたがっている。

考えてみて欲しい。一体誰が遅刻男で、遅刻男じゃないのかを。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?