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文字と御託を並べます。

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マガジン

  • 文体模写の模写日記

    宝島社から出版されている神田圭一さんと菊池良さんの著書『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』を下敷きにした自分の日記。 ※公認いただいています。

最近の記事

文体模写の模写日記:週刊文春編

友人にLINE ”繁華街での怪しい密会”を報告 5月中旬、大阪の焼き鳥屋の一室から、マスクをした男が出てくる。男は警戒するように周りを見ながら、最寄りの駅の改札へと消えていった。 男は、学生A氏(20)。身長175センチ、中肉中背で、顔は歌手のBTSのググを目指している。A氏をよく知る人物はこう証言した。 「彼が彼女ではない女と外出する姿はよく目撃されています。本人は気付かれていないと思っているようですが、駅員さんには「また同じ人が通ったと思われています。あだ名も付けら

    • 文体模写の模写日記:夏目漱石編

       親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。  ゆっくりしたくなった時はすぐ何か観たくなる。だが、親父が小遣いを呉れない時は部屋を荒らすしかない。先祖代々のが瓦楽多を売って金にするのもいいが、この町は田舎者が集まる野蛮なところで、どうせ碌なものはない。大人しく蟄居して、自分の部屋でネトフリを見た方が宜い。  ベットに寝転がってパソコンを開くと、safariを開いて、ネトフリで作品を探す。これが面倒臭い。俺にはなぜ最初からデスクトップにネトフリを置いておかないのか、ちっ

      • 文体模写の模写日記:町田康編

         お酒を買う。しかし、果たしてお酒は何度のお酒を買えばいいのであろうか。わからんではないか。お酒の濃さによって、酔いが覚めるのに必要な時間も微妙に変わってくるのであり、それは5%と書かれているにしても、自分の体調を確認することがまず先決ではないだろうか。ぎゃふん。  自分の体調問題が解決していないなか進めるのは非常に私の中でもやもやする感じ感があるが、思い出したよやまちゃん。誰やねんやまちゃんて。チェイサーもあるよ。チェイサー。自分の体調問題が解決しないとチェイサー問題も解

        • 文体模写の模写日記:糸井重里編

          紙飛行機は、 「適当」に作れるところが、良いところだと思う。 A4の紙をパタパタ折っていって、ビシッとなったら、 びゅんびゅんと飛ばすイメージトレーニングをして、 ふふんと鼻歌でも歌って、 そのうちになったら腕の力を抜いて手首のスナップをきかす。 適当に投げた方が案外飛ぶんだ、これが。 こういう適当さが、 人間の適当さにぴったりだとつくづく思います。 2021-03-11-THR

        文体模写の模写日記:週刊文春編

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        • 文体模写の模写日記
          24本

        記事

          文体模写の模写日記:安部公房編

          これは遅刻の記録である。 僕は今、この記録を電車に揺られながら書き始めている。ドアが開き、改札を出るとちょうど5分歩かなければならない。 つまり、その5分間で、この記録をつけているというわけだ。 遅刻は改札を出るだけなら、わけはない。所要時間はせいぜい2分である。だが、待ち合わせ場所に合流するには、かなりの勇気がいる。 ところで、君は遅刻男の噂を聞いたことがあるだろうか。べつに僕の噂ではない。遅刻男は僕だけではないからだ。全国各地にかなりの数の遅刻男が身を潜めている。

          文体模写の模写日記:安部公房編

          文体模写の模写日記:POPEYE編

          日頃から本誌をチェックしているシティーボーイの君たちならわかるかもしれないけど、線香について語らなければいけない時期がそろそろ来たようだ。 線香なんてダサい!そう思っている読者も多いかもしれない。だがちょっと待ってくれないか。そういうことは買って楽しんでみてからにしてくれないか。決めつけるの早くないかい?まず、火を付ける。煙を焚く。香りを楽しむ。たった3工程しかないんだ。こんなスマートなアイテム、他になくない? おまけに今、線香業界が狂喜乱舞状態になっているってこと知って

          文体模写の模写日記:POPEYE編

          文体模写の模写日記:レイモンド・チャンドラー編

          マッサージとの最初の出会いは、たいていはおとうさんの肩たたきか銭湯内に設置されているマッサージチェアだ。人は楽な体勢になり、リラックスする。そして、いじっていた携帯を仕舞い込み、出番を待たせる。結局のところ、マッサージとはそういう存在なのだ。 リビングで寝ている父が言った。「ちょっと肩こってんねん。肩揉んでくれへんか?」 こんな場面が来てようやくマッサージの開始となる。往々にして、人生にはそういうポイントがいくつかあるものだ。 マッサージをするにはウォーミングアップが必

          文体模写の模写日記:レイモンド・チャンドラー編

          文体模写の模写日記:小沢健二編

          マッチングアプリのアイコンが欲しいの そんな君の願いを叶えるため 夜の河川敷に行って 写真を撮って 恥ずかしながらもポーズを変えて写真をパシャリ、パシャリ。 カメラを他の誰かと向け合う! それだけがこの機械を熱くする! 降りしきる 冷ややかな視線の中 肝心かなめのピントを合わせて 写真を撮りまくってふらふら歩いていく

          文体模写の模写日記:小沢健二編

          文体模写の模写日記:志賀直哉編

          若い大学生Aは、知り合いからNISAを今からすぐ始めるのが得だと頻りに説かれた。Aはそれをやってみようとネットで検索した。 Aは金融庁のサイトを見ると、NISAの特設サイトをなめるようにどんどんスクロールした。Aは資産が段々増えて額が大きくなっていくのを数の上で知りたい気持から、シミュレーションを凝っと見つめていた。 それから15分すると、増えた資産の結果を見て感嘆した。 口の中に溜まってくる唾を、音のしないように用心しいしい飲み込んだ。 数字を見ると、彼は飢え切った

          文体模写の模写日記:志賀直哉編

          文体模写の模写日記:大江健三郎編

          僕は躰の内奥から湧き上がる「虚無」に応えるように、手探りをした。 「虚無」の感覚をさがしあてた指は、空っぽの僕を引き寄せる。 いれろいれろ。理性がそれを望んでいる。 眼ざめたばかりの躰は、自分のキャリアプランに書かれた「理想の自分」を模倣する。成長しろ、成長しろ。インターンで身を粉にして働く。 自分の暗闇のうちに、自尊心が溜まっていく。僕はパソコンを開いて、会議の資料作成の続きをする。 資料が完成するまでの渋滞のうちに、間断なく、自分の担当するコンペの準備をしなけれ

          文体模写の模写日記:大江健三郎編

          文体模写の模写日記:田山花袋編

          正午になってだらだら過ごしながら彼は考えた。「これだけの食欲が地震に起こるということは、これは空腹なのではないだろうか」  文学者がラーメン!彼は自分のラーメンの趣味を有っていると称して進んでこれを食べているが、内心これに甘んじておらぬことは言うまでもない。彼は頭髪をむしりながら、割り箸を割り、ラーメンに手をつけ始めた。 スープがカロリーを漲らせていた。あれだけのカロリーを摂取したのは初めてではなかったろうか。 「とにかくスープは喉元を過ぎ去った、このラーメンは実に美味

          文体模写の模写日記:田山花袋編

          文体模写の模写日記:ドストエフスキー編

          あ、名前変えて心機一転気持ち変えていくので、よろしくお願いします。改めまして、たゆひとです。 では、日記へ、、、 僕は誰かが食べるまで、まだこの代物が美味しい砂ずりであることを決して信じないぞ!誰に何を言われようとも! 七輪で焼いて塩をふるだと?言ってくれるじゃないか。僕はそもそもそういう作業が得意じゃなくってね。これは僕がやる作業ではない。 誰もいないので、僕がやるしかない。しかたない。やるか。数分待った。やっと焼き上がりか。こんな簡単なこと、一人でやってみせる。

          文体模写の模写日記:ドストエフスキー編

          文体模写の模写日記:星野源編

           嘘つきが嫌いである。そもそもあれは人ではないと僕は思っている。だって信頼関係を築けないんだもの。強いていうなら、ケンタウロスだ。ギリシャ神話に出てくるケンタウロスだ。こんなことを言っているから女友達もできないし、周りからぼくがまためんどくさいことを言っていると言われるのだろうけど。その他にも嫌いな面はいくつかある。まず、社交辞令。社交辞令ってなんだよ。思ってもないことをわざわざ言わなくてもいいじゃないか。  あとは女の子からの寝てたのLINE。あれがまったく進化していない

          文体模写の模写日記:星野源編

          文体模写の模写日記:コナン・ドイル編

          「この部屋の主は部屋の掃除に励んでいるようだね。」 「どうしてそれがわかるんだい?」 彼はゆっくり部屋を見回しながらゆっくりと喋りだした。 「まず、机の上が整理されている。よく見ると、イヤリングがあって、ポチ袋に入っている。これは部屋の主が物を整理できているってことさ。」 「でも、それじゃあ部屋の掃除が徹底されているってところまでわからないだろ?たまたま前日に掃除をしただけかもしれないよ。」 そういう私に、彼は落ち着き払った態度でつづけた。 「部屋の床を触ってみて

          文体模写の模写日記:コナン・ドイル編

          文体模写の模写日記:村上春樹編⑤

          雇用主である君が僕に黒染めをさせようとしている事実について、僕は何も興味を持っていなし、何かいう権利もない。歩行者信号の待ち時間を眺めるようにただ見ているだけだ。 勝手にマニュアルとやらを突き立てればいいし、同調圧力に任せてしばらく放っておけばいい。その間、君が何を考えようが自由だ。少なくとも、ピアプレッシャーにより、苦しまざるを得ない自分がそこにいる。望もうと望むまいとにかかわらず。 店長に直接働きかけるよう仕向ければいいし、同僚に陰口を叩かせてもいい。お客の退屈な話に

          文体模写の模写日記:村上春樹編⑤

          文体模写の模写日記:村上春樹編④

          きみが店の経営難から人員を減らそうとしている事実について、僕は何も興味を持っていないし、何かを言う権利もない。ただ太陽の紫外線を浴び続けた白いプラスチックが黄ばんでいくのを眺めるようにただ見ているだけだ。 勝手に学生のシフトを減らせばいいし、ただテナントの契約が切れるまで待てばいい。その間きみが何をしようと自由だ。少なくともただ人が出入りする空間がそこには存在している。好むと好まざるとにかかわらず。 営業時間を短縮してもいいし、通常営業するときの人数を減らしてもいい。業者

          文体模写の模写日記:村上春樹編④