短編小説 「桜の降る日は」
ドアは、いつも目の前で閉まる。
たとえば電車に乗り込もうとすると、必ず目の前でドアが閉まる。お店でドリンクを注文しようとすると、「先ほどのお客さまで売り切れました」と言われる。やっとのことエレベーターに駆けこむと、定員オーバーのブザーが鳴る。
私はちょっと不器用で、運が悪い。
だから、去年の夏の終わり、恋人の修(おさむ)が部屋から出ていった時、失意のどん底でぐしゃぐしゃに泣きながらも、心のどこかでは「そんなもんだろうな」と思っていた。営業部のエースと呼ばれている修が私の