坂 るいす

1夫の妻、2児の母。 感性と体はわりと繊細だけど、頭と性格はわりとドライ。ペーパー心理…

坂 るいす

1夫の妻、2児の母。 感性と体はわりと繊細だけど、頭と性格はわりとドライ。ペーパー心理士(師)。ショートショートや育児日記、偏愛noteなど、マガジンにてカテゴリ分けしてます。たまに #仮面おゆうぎ会 みたいなことをしたりしなかったり。麻婆春雨が好き。

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【小説】 住所

 妻は、僕のストーカーだった。  僕は三十代のころ、ラジオパーソナリティの仕事をしていて、その時から妻は僕のファンだった。何度も僕宛に、「結婚してください」と書かれた手紙を送ってきては、スタッフを困らせていた。僕は、声が個性的である以外はこれといって特徴のない、凡庸な人間であったので、そんな僕に熱心なファンがいることが不思議で、そして嬉しかった。  彼女は僕よりも一回りも年下で、手紙ではしきりに僕に、どこに住んでいるのかを尋ねていた。もちろんそんな手紙に応えられるはずもなく

    • 魂に触れるみたいに

      宗旨変えをしたかもしれない。 ここ最近、どうも書く気が起きなくて、それは子育てによる時間のなさのせいだけではなくて。 体のせいもあるんだけど、それだけでもなくて。 なんだかこう、なにが面白いか分からなくなってしまって、うっすら呆然とした心持ちでずっと過ごしていたら、ちょっと鬱っぽいなと思って、そしたらこの先の人生を思って余計憂鬱になったりして。 情熱がなくなったら終わり、と、そう思って生きているから。 そんなふうに元気なく毎日を過ごしていたら、子育て疲れがどーんと来て、

      • 寝室のトットットちゃん

        先日、「ネントレ(泣いてる子をあえてしばらく放置したりして、1人で寝付けるようにもっていく)は虐待か否か」論争を見かけた。 「親への諦めを学習する」という意味で虐待になる、というのもまあ、感覚としては分からなくもない。 でも、ある程度の諦めは学習すべきでもあるし。 難しい。 ただ分かるのは、うちの娘にネントレしたら、本当に虐待みたいになってただろうなってこと。 だってうちの娘は、マンションの一室で一人になるのも嫌がるくらいだから。朝、ママが居ないと泣いて起きるくらいだから。

        • 子持ち様

          先日、赤ちゃんを抱いて自宅マンションのエレベーターを待っていると、知り合いのおばあさんに遭遇した。 おばあさんは「もうこんなに大きくなったのね」と赤ちゃんに目を細めたあと、そうそう、と付け足した。 「上のお姉ちゃんは、何歳?」 五歳ですというと、まだ五歳なのに、達者よね、とおばあさん。 「パパに(対してお喋りが)、すごいじゃない」 そうなんですよもう達者で、と応じておばあさんと別れ、家に帰って、頭の中でおばあさんの言葉を反芻した。 あれはどういう意味だったのだろう。 きっと

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        【小説】 住所

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          【小説】焦げたトーストは元に戻らない

          名無しの権兵衛  あの人と結婚していれば、何か違ったのだろうか。来し方を振り返るとそれは果てしなくて、麻子はため息をついた。コーヒーを入れたマグを手に、テレビ前に腰を下ろす。マグにデザインされていたはずのクマが擦れて消えて、今は腰から下しか残っていない。  お前は誰だ、名無しの権兵衛。  夢中で生きてきた、はずだった。高校を卒業してしばらく働いて、母のすすめる人と結婚して、子どもを二人産んで、必死で育て上げた。決して楽ではなかったが、楽ではないということはつまり充実してい

          【小説】焦げたトーストは元に戻らない

          君たちはどう生きるか公開初日考察メモ

          宮崎駿監督の最新作。 前情報なしの公開だったので、じゃあせっかくだから周りの情報を完全にシャットアウトして、公開初日に映画を見ようとチケットを取りました。 夫に子どもを任せ、家を出たのが夕方五時半。 いつもなら夕食を終え、子どもたちを風呂に入れる準備をしている時間。こんな時間から一人で外に出るなんて、いつぶりだろう。 すっごくドキドキした。 私にとってはこれは夜遊びも同然。 生まれたての雛のような、男女同衾初夜のような、そんなそわそわした気持ちで電車に乗り込む。 華金に

          君たちはどう生きるか公開初日考察メモ

          大腸内視鏡した日(妙齢)

          笹さんが大腸内視鏡の記事を書いてらして、そういや私も書こうと思って書くの忘れてたなと思い出した。 もう、6年以上まえ。 当時のわたしは常に便秘だし、就職はしたくないし、東京来て夫と暮らせるようになったは良いものの実家との軋轢がすごいしで、今思えば鬱っぽかったなと思う。 東京に来て真っ先にわたしは、病院めぐりをした。 いわゆるドクターショッピングってやつ。とにかく体がうまくいかなくて、これさえどうにかなったら私ももうちょっとどうにかなるのにって思ってた。どうにかってなんやね

          大腸内視鏡した日(妙齢)

          #匿名超掌編コンテスト でした

          板野かもさんのこちらのコンテストに参加したので、手の内など記録しておきます。 お題は、「試」の文字を含めた500字掌編。 短いしとっかかりやすいし、何より匿名コンは人狼ゲームみたいで楽しいし参加しよう、と決めたのは良いんだけどなんせ私という人間は締め切りがないと動けない。 事前受付期間 最終日の 1/25、美容院で頭を洗われながらぼんやり、あー何をテーマに書こうかなと考えていた。で、ああ、醜形恐怖で恋人にも当たり前のように整形させる話にしよ、それでいいやんと思って、子ども

          #匿名超掌編コンテスト でした

          【小説】 運命

           千絵と結婚するのに、周囲はみな反対した。なぜなら彼女には、五度の離婚歴があったから。  よほど性格に難があるに違いない。いやむしろ結婚詐欺だ。それどころか歴代の夫には、毒物を盛られて死んだ者もいるらしい。  事実に尾ひれがついて、とんでもない噂話をする人まで現れた。しかしそれでも勲は千絵と結婚する意志を曲げなかった。  これまで女に縁のない人生を歩んできた勲は、あと少しで五十になる。男一人のつまらない生活に色を与えてくれたのは千絵だった。保険の営業として家に来て、親の遺産相

          【小説】 運命

          ママだってイカちゃんになりたいし

          ご無沙汰しております。 なんか、ちょっと前までワイワイやってた人たちがどんどんいなくなっていっている気がするんですが、なんだろう、オンラインでも寒さが身にしみますね。 今の私は、端的に言うと、「10年来縛られていたものから開放されて呆然としている状態」です。 縛られていたもの、それは、子どもを産みたいという謎の衝動。謎ではないんだけどね、でも謎。本当に衝動だったから。 産後は鬱っぽくもなったりしたんだけど、そこには少なからず「やり終えた」感があったからで。もう自分は用済み

          ママだってイカちゃんになりたいし

          いつまでも、我が子を我が子にしたいひと

          「まあ、そのほうが気兼ねせんでええし」 と義母が言ったのは、義実家が義兄抜きで旅行に行くという話の最中だった。義兄は義姉の結婚相手なので、義実家とは血がつながっていない。義実家のオリジナルメンバーではないのだ。そのことを、義母は言っていた。 変な空気が流れる。当然だ。だって私だって義母からしたら義理の娘で、オリジナルメンバーではないのだから。 失言といえば失言。 しかしある意味、私のことを実子のように思っているからこそ出た失言でもあり、これは喜ぶべきなのか気分を害すべきなの

          いつまでも、我が子を我が子にしたいひと

          届かないタイプの夢

          ディズニーランドに行く。 娘の初めてのディズニー。4歳になる前に行けば安くですんだのに、わざわざ4歳になってから、入園料を払って行くディズニー。 できるだけ楽しんでもらいたくて、日夜情報を集める父母。 そうして、何日も前からディズニーを楽しみにしているご家庭はきっとこの日本にごまんとあるだろう。 なんせディズニーリゾートには夢がある。子どもが目をキラッキラに輝かせて夢をみる夢の国。 私もだいすき。一生あそこに住み着きたい。ずっと夢の国に居たい。 そう、ずっと。 仕事を辞め

          届かないタイプの夢

          ひやひや、ひやのひやーきおーがん

          夏休みを経て、娘たんまんの癇癪がめっきり減った。 夏前には、アスファルトの上で寝転がって十分も二十分もギエギエと泣き叫んでいたあの子が。癇癪を起こさず不機嫌になるという術を覚えた。 なんでだろう。 思いつく理由は三つある。 1.鍼の効果 2.充実した夏休み 3.シンプルに成長 1.鍼の効果 実は夏前から、私の鍼灸の施術のついでに娘にも施術をしてもらっている。大人と違い、釘みたいなやつでしつこめに撫でる、痛くない鍼。小児鍼というらしい。 ほらなんか、疳の虫とか夜泣きとか

          ひやひや、ひやのひやーきおーがん

          パワースポットならぬパワーパーソン #呑みながら書きました

          あーやばい。呑み書きのがしたわ。 鍼と生理のダブルパンt理で死んでたので。 時間がないので本当に思いついたことをそのまま書こうかな。 「弱っていっるときが、本当の姿なので」 とね、先日鍼の先生に言われたの。それがこうm,ぐさっときた。だって自分の好きな自分じゃないからね。こないだ弱ったときなんかさ、ああ俺死ぬの怖いなぁなんて鬱っぽくなったりしてさ、まあ結局自分の体が弱っていたわけなんだけども、あれが本当の自分カアと思うと萎える、。 自分はどれくらいの苦しみに耐えられるだ

          パワースポットならぬパワーパーソン #呑みながら書きました

          「ドのつくストレートやから」

          「わたし、ちょっと前まで彼女みたいな子がおって」 幼馴染にそう告げられたのは、大学一年のころだった。平然を装った何気ない調子で切り出した彼女には、それでも少しの緊張感が漂っていた。 へえ、それはどこで出会ったん? それってどうやって付き合うみたいな感じになるん? なんで別れたん? 私は興味津々で聞いた。女性が女性と付き合うのが物珍しかったからではない(そういう友達は他にもいる)。そもそもの話として、私は恋愛話が大好きだったのだ。性別がどうであれ、その手の話はぐいぐいのぐい

          「ドのつくストレートやから」

          わたしはそうは思わない

          「このローテーブルはみんなの机でしょ? ちゃんと片付けないとだめでしょ?」 夫が娘を叱っている。そんなとき、父母は子どもが混乱しないよう態度を一にすべきであるという風潮がある。あるいは、父親の威厳のために「お父さんを立てる」、だとか。 しかし私は反論する。 「わたしはそうは思わない。この家に娘ちゃんの居場所が出来るのは悪いことじゃないし、もうこれは娘ちゃんの机ってことでいいんじゃない」 私には、忘れられない母の姿がある。 「ボヤボヤしてんとさっさとせえ。はよせえ」 それは、

          わたしはそうは思わない