見出し画像

データサイエンティストになり損ねた老兵ITコンサルタントの話

こんにちは、アルベナ広報です!
社員紹介第2回目は、IT業界20年、社内Python勉強会では講師も務め後進の指導にも力を入れる恒川 直久をご紹介します。


ご挨拶

皆様、はじめまして!株式会社アルベナの恒川と申します。
社会人一年目からERP業界で働き始め20年余り、いつの間にか年長者の部類に入るようになりました。ベテランの昔話は敬遠されがちとは申せ、「しくじり先生」的な失敗談であれば面白く読んで頂けるかも?と考え、私が学生だった頃の話をしようと思います。結論としては「技術トレンドにも流行り廃りがあるよね」というだけなのですが、振り回されて痛い目に遭うことも多そうなネタなので、何かの参考になれば良いなと考えております。

インターネット元年の Hello World

私が初めて本格的にコンピュータに触れたのは1995年、阪神淡路大震災と地下鉄サリン事件が起きた年でした。

小学生の頃つくば万博で見たエキスパート・システムの活躍から「AI(人工知能)を使いこなしたい!」と無邪気にイメージを膨らませ、ITに強いとされた慶應大学のSFC(環境情報学部)に進学したのです。子を持つ親となってから振り返ると、予備知識も収集せず随分と乱暴に進学先を決めたものです。

この年はWindows95が発売され「インターネット元年」とも言われましたが、ネット接続といえば専ら電話回線を使ったダイアルアップが使われており、大変貧弱な時代でした。

そんな中SFCには、「ミスター・インターネット」村井純先生の差配で常時接続は当たり前・学生同士のコミュニケーションもメール中心というかなり先進的なシステムが導入されていました。当時メール経由で恋に破れた学生を量産していたのは、広い世界でもアメリカのいくつかの大学とSFCだけだったのではないでしょうか?(残念ながら私もその一人でした。)

AIとの別れ、データサイエンスとの出会い

実はこの頃、AIには「冬の時代」が訪れていました。
エキスパート・システムのブームは去り、現在の深層学習につながるニューラル・コンピューティングの原理は知られていたものの、その応用は「低効率な最適化ルーチン」に留まっていたのが実情でした。実際に授業の演習で計算させると、ひと晩かけた学習結果が一瞬で終わる数値演算ライブラリの計算結果に負けてしまう始末です。

そのような中で私は、筑波大学から講師として来訪されていた椿広計先生(現・統計数理研究所所長)の「データ分析」の授業に感銘を受け、統計学に興味を持つようになりました。それは今で言うデータサイエンスを先取りした内容で、伝統的な統計学を基礎に置きつつ、コンピュータ利用を前提として「データとの向き合い方」を考えさせ・実践させてくれたのです。

当時の私のバイブル、やはり慶大(理工学部)にいらっしゃった柴田里程先生が翻訳された「Sと統計モデル」は、和訳の副題に「データ科学の新しい波」とあり、まさにデータサイエンスを体現したものでした。(Sはアメリカのベル研究所で開発されていたデータ解析環境・言語で、現在は流れをくむRが広く使われています。)

学部の4年間では学び足りないと感じた私は、卒業後は東京工業大学の大学院に進学し、「グラフィカルモデリング」で有名な宮川雅巳先生のもとで統計学の勉強を続けました。

乗るには早すぎたデータサイエンスの波

ところがいざ就職となると、他研究室の学生が専門を活かしメーカー等から推薦や内定をもらう一方、統計学教室の学生にはそんな求人はありませんでした。保険数理(アクチュアリー)等の例外を除き、当時専門職としての需要は皆無に近かったのです。実際、同期3人の就職先は証券会社・新聞記者・ITコンサルタントとバラバラで、専門性を活かした就職をした人はいません。

その後の技術トレンドは、皆様もご存じでしょう。'00年代後半に深層学習が登場し、ハードウェア(GPU)の発展というサポートもありAIはIT業界の「花形」に復活しました。同時に技術基盤としてのデータサイエンスにも関心が集まるようになり、'10年代以降AIとデータサイエンスは関連しながら多くの成果を挙げつつあります。それに伴い、昨今データサイエンスを専攻した学生は高い初任給で採用されるとも聞きます。

けれども20年前に就職活動を迎えた私たちは「波に乗るタイミングが早すぎた」のです。学部・大学院と6年間かけた学習コストに比べ、知的好奇心の満足を除いた「稼ぎ」のコスパは悪すぎました。かなり高くついた失敗と言っても良いでしょう。

波は「セット」で訪れる

現在もAIのブームは続いており、毎日のように関連ニュースが取り上げられています。しかしガートナー社の「ハイプ・サイクル」理論によると、新技術が生産性を上げるようになるのはブームが過ぎた後からなのだそうです。

これが正しければ、サーフィンで言う「セット」のように、例え第1のブームの波を逃したとしても、その後訪れる第2・第3の波のほうがより大きく長い可能性があるということになります。つまり、最初の波を乗り逃がした私にも(読者の皆様にも)、次のチャンスが待っているとも考えられるのです。

老兵、夢を語る

AIが適用されている範囲はまだ限られており、そこまで広くありません。手付かずの領域が広く残されています。未適用領域を残したまま、いつかAIブームも沈静化する。

その時、次の波を捉えるのに必要なのは、最先端を行くAIの技術力でも資金を集めるプレゼン力でもなく、地道に技術を適用する実現力とニーズを見逃さない感受性なのではないでしょうか?これらはまさに、ITコンサルタントの本領が試されるところでもあります。

カメラを向けるとポーズをとるおちゃめな恒川さん

縁あって今年入社させて頂いたアルベナは、クライアントの変革に正面から取り組み最後まで寄り添おうとする、熱い志を持ったコンサルタント集団です。単なる「ERP版御用聞き」に留まらず、本当に役に立つサービスやアプリケーションを作り出しイノベーションを起こそうと、素敵に尖った仲間たちと模索する日々が続いていくはずです。そのような試行錯誤の中で、「昔取った杵柄」のデータサイエンスの知識が活用できるのではないかと、ひそかに期待しているところです。

お問い合わせ

Contact Us | ALUBENA Inc.

この記事が参加している募集

社員紹介

仕事について話そう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?