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実はあのジュノンボーイに応募しちゃって世界が違いすぎて震えちゃった話

タイトル通り、
もうほんとに小っ恥ずかしくて記憶の奥底に封印していた話だったのだが、

専門学校時代の友人Mに久し振りに会ったことで思い出したので書いてみる。


そう、

実は俺、あのジュノンスーパーボーイコンテストに応募したことがあったのだ。

しかしそれは自主的な挑戦ではなかったのだ。



地元にいた時からなんとなくは知っていたジュノンボーイ。

過去のグランプリ受賞者を遡ると、今でも芸能界でトップを走るような錚々たるメンツで、
最近はそれぞれ意外なキッカケで再ブレイクを果たしている先輩方もチラホラ。(芸能界ってほんとに何がキッカケになるか分からないものですね)

そんなTHE・芸能界のエリートコースコンテスト。
長野県の片田舎で育った童貞臭い猿野郎には到底縁のない催しである。


18歳になり、八王子の専門学校に入った。

八王子は「都内」とは言い難い、23区からすれば八王子って東京だっけ?と言われてしまうような端っこの街だが、
長野から出てきた豚野郎からすれば十二分に東京で、
適度にモノがあり適度にモノが無い、駅前には池袋ウストゲートパークの影響か水色を身につけたカラーギャング達がたむろっているが特に迷惑をかけるわけではないので目的はなんなのか不明な、とにかく田舎から出てきた身としては住むには丁度いい土地だったのだ。

カレンダーに卒業までのカウントダウンを書き込むほど地獄のようだった工業高校生活(AV救出大作戦!! 参照)を終え、逃げるように東京へ。


何の専門かというと、放送芸術科という映像制作に関わることを勉強するところ。
つまりテレビのスタッフと言われる人達の養成所だ。

と言っても映像制作に興味があったの?というとそういうわけでもなく。
とにかくテレビっ子だった(今でもね)田舎者の俺にとってテレビ業界は雲の上の世界で、ましてやそこに出演する人になるなんて思考はゼロ。
なにかテレビに関わる仕事を!ということで何となくテレビから時折聞こえてくるスタッフと呼ばれるものになろうと入学を決めた。

いや、正直言うと実際はとにかく地元を一度出たいという気持ちが強く、その理由を考えてこじ付けたところがあったと今では思う。



クラスはなんと女子が半分!!
女子ゼロの環境にいた俺にとってなんとも新鮮な景色。
しばらくは恥ずかしくて言葉を交わすのにも緊張していた。


そこで通路を挟んで隣の席に座っていたのがMである。

Mは明るく、よく喋る。
器用なタイプでやれば大抵のことはソツなくこなせる。
頭も良く要領もいい。
かなり自信家で、自慢が多い。
でも決して悪い奴ではないので、自分とは全く違うタイプのMだが、学校ではよくつるんでいた。

特にテレビ業界に興味があるわけでもなく、卒業後はスムーズに不動産会社に就職したMがこの学校に入った理由は未だに謎である。
まぁ、自分もなんとなくに近い理由だったし、周りもやる気がある生徒の方が数えたら圧倒的に少ないような環境だったので、お互いの動機や夢を語り合うような志高い集まりではなかったのは確かだが。

実際専門学校なんてそんな奴ばかりで、入学してすぐ辞める奴が続出するので、学校的には何もせず入学金が入ってくる素晴らしいシステムに自動的になっている。



ある日、そのMが雑誌を片手に急にこんなことを言い出す。

「なぁ、一緒にジュノンボーイ受けねぇ?」


高校時代はそこそこモテていたと自負のあるM。
芸能界にはその時期かなり興味があったようだ。

俺はというと、考えたこともなかった芸能界。
しかし実際東京に出てきた(八王子だけど)ことで少〜しばかりそういう世界が近いところにある気がしていた。

そういえばMとコンサートの搬出の日雇いバイトに行ったことがあって、
代々木体育館の裏道を通り、遠目にアンコールで歌う安室奈美恵を見て「芸能人だ!」と興奮した記憶がある。

しかしその後、妙に厳しいコンサートスタッフに「バイト君」と書いたヘルメットを渡され、
訳もわからず怒鳴られながら重い物をずっと運ばされ、日給にはとても割の合わない重労働で全身筋肉痛になった。
あまりに急か急かして怒号が飛び交う現場で、全然知らない他のバイト君達との妙な連帯感が生まれたのを覚えている。

きっとこの間にも安室奈美恵はコンサート終わりの達成感の中、みんなで打ち上げでもしているのだろうと想像し、
この立場の圧倒的に差に勝手に恨みを募らせたものだ。


とにかくそんなちょっとした芸能界に触れた経験が俺を少しづつ麻痺させたことで、
軽い気持ちで一緒に応募してみようということになったのだ。



数日後、自宅に書類審査通過の知らせが届く。

嬉しいと思いきや、実際に面接に行かなくてはならないことを実感し、ただただ心配と不安で一杯になる。
ああ、せめて2人で応募して良かった。

しかし、最悪の事態に陥る。


Mの元に書類審査通過の知らせが届かなかったのだ。
つまりこの段階で不合格。

まさか1人で行くハメになるなんて・・・・。

芸能界に入ったキッカケを聞かれた芸能人が、「お姉ちゃんが勝手に応募して」とか「友達が勝手に」とかよくある話だが、
そんなシンデレラストーリーどうでもいい。1人で行くなんて心細過ぎる!!

当時、真面目だった俺はオーディションをバックレるという選択肢も思いつかず、オーディション会場のある初めての渋谷にたった1人で降り立つことになってしまったのだ。



一次審査当日。

中央線から山手線に乗り換え、渋谷に到着。
八王子からなら京王線で明大前まで出て、そこから井の頭線で渋谷に行けば遥かに電車賃は安いのだが、中央線の右か左かしか存在しない田舎者の俺は、JR以外の線のことをあまり信頼していなかった。



書類審査通過の用紙と同封されていた地図を見て、道玄坂にある大きい建物にたどり着いた。

渋谷も初めてなのにこれからあのジュノンボーイのオーディションを受けるなんて・・・・。
この時点で足はもう緊張でガクガク。
中でどんなことが行われるのか想像もできずビビりまくる。


意を決して中へ。
参加者が集まる大きい会議室のようなところに入る。

見渡すと若いボーイたちがいっぱい。
その参加者達の様子を見て一瞬で悟る。


「あっ、間違えたわ。俺の来るところじゃない」


ハッキリと参加者達の顔を見る程の余裕もなかったが、
とにかく誰もが「イケてる奴ら」であることは雰囲気で察知した。

きっと地元の学校でモテる奴らがその勢いで鳴り物入りで乗り込んで来たに違いない。


ホストのようにスプレーでガッチガチにした、触ると刺さって血が吹き出しそうな尖った髪の毛を鏡でチェックしてる奴。

どういう知り合いなのか、久しぶり!なんて声をかけ合って、何手もあるあの複雑な握手する奴ら(恐らくすでに芸能活動しててその顔見知りか何かと推測)。

中にはなぜか女の子達を引き連れて来ちゃってる奴らまで。
その女の子達はどこかスカした態度だが、顔面偏差値はすこぶる高い。
ああ、スクールカースト上位の匂い。。


個々が己のスタンスを貫く中、俺はというと下を向き、とにかくこの異様な経験したことのないアウェイな空気の中、この場でパイプ椅子に座っていることで精一杯。ドキドキドキドキ。。。

しばらくすると、係りの人から説明が入る。
番号順に呼ばれたグループは審査する部屋の中に入るようアナウンスがあった。

・・・・いよいよである。



だいたい10人くらいの1グループで面接が行われた。
中に入ってからは頭は真っ白。
横一列に並び、その中でも確か9番目くらいに位置していた思う。

審査員の人「1人づつ自己紹介と、何かアピールするものなどあったらどうぞ」

それを聞いてみんな元気よく自己紹介していく。

中にはダンスやってます!と言い出した人が軽く踊って見せたり、特技のけん玉を持ち込み披露する参加者も。


ああ、すげぇ、、これがオーディションってやつなのか。。みんなすげぇ。。。
目の前でくり広げられる光景に何の準備もして来なかった俺は完全に気後れ。
そして呆気にとられている内にいよいよ俺の番・・・・!!


今まで誰かの前で一芸披露なんてしたこともないし、そんな芸も持ち合わせていない。
そもそも人前に立って喋ることさえ苦手で克服する機会もなく、パフォーマンス力は限りなく無いに等しい俺。


そんな俺にできること、

それは、

ただ足を震わせながら、

ただ名前を言うのみ・・・・。


こうして何のアピールもしないまま一次面接を終えた。




全参加者の面接が終わり、1次審査通過者の番号がその場で読み上げられる。

さっきまで起こっていた未知の体験にショックを受け呆然としている俺、かすかな期待に審査員の声に耳を傾ける。


結果は、

当然番号を読み上げられることはなかった。


当たり前である。
ただでさえ大人数の参加者がいる中、ただただ緊張した面持ちで小声で名前だけ名乗り、何のアピールもしない垢抜けない学生に誰が興味を示すのか。



帰り道、とぼとぼ駅に向かって歩く。

あれがオーディション・・・・。
あんなの俺には絶対無理だ。何か審査員の興味を引くことなんてできるはずもない。絶対選ばれることなんかない。


でも、なんか、悔しいな。

あとなんか、ちょっとおもしろかったな・・・・。



これが芸能界に本格的に興味を持ち始めた瞬間だった。
ちょっとしたキッカケで、思わぬ流れに身を任せたことで、人生の方向が変わることってあるのだ。

考えてみたら、画面に映る人達を見て憧れたテレビ業界。
テレビの何かに関わりたい、という考えで東京に出て来たわけで、表方に興味を持つのは考えてみたら本当はごく自然なことだったのだ。




それからしばらく月日は流れ。Mがまた言い出した。

「事務所入ろうぜ!」

そうか!まず事務所ってやつに入るところからか!
それからオーディション雑誌を買い、条件に当てはまるところに片っ端から書類を送り、
運良く拾ってくれたのが前にいた小さな事務所だった。


一方Mはというと、早々に芸能界なんて諦め、
今では家族を養い、都内に一軒家を建てるほど立派にバリバリ働いている。


きっと今では俺をこの世界に引き入れたことなんて覚えていない、むしろ自覚はないだろうなと思う。


まさか俺はこの世界に今もまだしがみついているなんて。

本当に分からないものだ。



ちなみに、
事務所に入って初めて受けたオーディションは「仮面ライダー555」。
一次審査でみんなやたらと自己アピールが激しく、俺の前の人なんか、
「今日、仮面ライダーのオーディションに来た気持ちをラップにします」と言い出し上手いのかどうか分からん即興?ラップを披露し出した。
相変わらず何もできない俺は即落ち。

こんな自己アピールの鬼達がいる世界、やっぱり無理だ・・・・!!
と涙目でゲロ吐きそうになった。


そんな俺が未だにやってるんだから。
ほんと分からないものだなぁ。

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