日常に溢れるノイズを消して
停電。
停電中にある島のコーヒー屋さんへ行った。青いデニム色のエプロンを着た店員さんが話す。
”今、島が停電中なので、ホットコーヒーしか出せないんですけど、いいですか?”
’夏場にホットコーヒーか…それも悪くない’と思いながら”それで、大丈夫です”と私は答えた 。
窓から差し込む日差し、少し薄暗い店内、冷えた椅子に座って、外を眺めた。
”ガラガラ”
店員さんが手挽きのコーヒーミルで豆を挽く音。停電で音楽が流れないから、店内は静か。静寂が広がる。隣の話声がそのまま聴こえるかなと思ったら、なぜかお客様はみんな小声で話す。必要以上に音を上げる必要がないのだ。
沸々とお湯が沸く音が聴こえてからしばらく経て、店員さんが一滴一滴コーヒーをドリップし始めた。水が落ちる音に集中して気がつけば一杯のコーヒーが出来上がっていた。
窓から吹いてくるちょっとだけ涼しい夏の風。
小鳥の鳴き声を聴きながら、一人考える。
一人で歩いている時、何の音もしない日々が退屈だと思っていた。だからイヤホンを耳にさして、音楽を聴いていた。しかし、日々が無音の世界だ、なんて私の思い込みだった。耳をすませば世界は自然の音に満ちていた。
停電のおかげで感覚が研ぎ澄まされた気がした。
私が音だと思い込んでいたものすべてが実はノイズだったのかもしれない。ノイズに巻き込まれ、余白のない現代人はすぐにでも自分を失ってしまうんだ。私は何に惑わされていたのだろうか。減らして、消して、そうやって感覚を磨いて見えてくる美しい現実とこれからも、向き合っていたい。
ありがたいハプニングだ。
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