第39話 サンタ・ネネって何者か
「でさぁ、ネネちゃんってどういう娘なの?」
ルーナは、子供のように瞳を輝かせていました。
サンタ・ネネに、相当な興味を持っているようです。
オレンジが答える前に、次々に新しい質問を投げかけてきます。
「ちょっと待って!落ち着いて」
「だってさ、オレンジだけ先にネネちゃんに会うなんてずるいだろ。だから私に教える責任がある」
「いや、何を言われてんだか、わかんない」
ルーナは、サンタ・ネネには特別な何かがあると思っているようです。
自分の力が通用しなかった相手なんて、今までいませんでした。
興味を持つなと言う方が、そもそも無理な話です。
ネネによって、ルーナと姉の原初神ユイナは精神的なダメージを負わされています。
オレンジは、ルーナの圧に押し負けて、説明を始めることになります。
でもちょっと話が長くなりそうでした。
「ネネちゃんってデタラメ過ぎて、説明が難しいかも」
「確かに、わけのわからなさは感じるけどな」
「例えると、そうだな、夜明け前にひときわ明るく輝いてる・・・明けの明星ってとこかな」
「それって、堕天使ルシフェルの異名じゃねーか」
ルーナは前のめりで、言葉を返しました。
「でもあいつは堕天しちゃってからは、夜になって最初に輝く宵の明星って呼ばれてるでしょ」
一般的に「明けの明星」とは、闇を討ち払う救世主の事を意味します。
一方で「宵の明星」とは、闇を呼ぶ悪魔の事を意味していました。
「ただネネちゃんの場合は、明けと宵の両方がこんがらがってるっぽい」
「つまり善と悪が、混ざってんのか?そんなことありえんのかよ」
「女神としては、珍しいでしょ。でも、良いバランスで調和してると思う」
「面白い性質してんだな。善神でもあり、悪神でもある女神か」
「そだね。そこに私たちが魅かれてしまうんだと思うよ」
「ますます興味が湧いてきた!お友達になりたーーーーい」
「さすがポジティブモンスター・ルーナちゃん」
「変な異名つけんな」
オレンジは説明しながら、砂浜に打ち上げられた貝殻などを集めて並べています。
「ルーナ姉ちゃん、この真ん中にある星がネネちゃんね」
「いや、ヒトデじゃねーか」
「ネネちゃん星は、闇を討ち払うから側には何もないでしょ。でも彼女は、宵の明星の性質も持ってるわけで」
「この周りにある貝殻とかが、惹き寄せられてしまう善と悪ってことか」
「で、下にある白いのがルーナ星ね」
「話聞けよ。それも、ヒトデだっちゅーの」
「さてさてネネ星の側に、ル-ナ星はたどり着けるかな~」
「オレンジに出来て、私に出来ないことなどない」
「その根拠のない自信って、いったいどこから出てくるの?」
月のルーナは立ち上がると、お尻に着いた砂を手で払いのけました。
なぜか自信満々の笑顔を見せます。
「そういえばオレンジはさぁ、どうやってネネちゃんと接触したんだ?」
「あぁ、それね」
道化師のオレンジは、現在の仮のボス「サンタ・ブラック」がいる隔離空間から、つい先日人間界へ派遣されました。
すでに昨年の10月末日ハロウィンの夜に、他の幹部達は人間界に潜入していて活動を開始しているそうです。
最近人間界に漂う不穏な空気は、それが原因とのこと。
すぐ側の森の中でオレンジは呪いのキノコ大作戦を始めようとしていたのですが、いきなり上空に大穴が開いて、中から正体不明の女神と赤いバイクが落ちてきました。
驚いたのは、穴の先はサンタ・ブラックがいる隔離空間だったのです。
また新しい幹部が派遣されたのかと、オレンジは身構えました。
しかしそれは「ボケッとした顔の女神」と、「喋るヘンテコなバイク」のコンビでした。
遠くから様子を探ると決めたものの、ネネの方から接触してきたそうです。
そして彼女の驚愕の能力を、目の当たりにすることになります。
「私もね、ネネちゃんには、してやられてんだよね。私の絵本を見破られるなんて、驚いたのなんのって」
「悪の大幹部(仮)であることは、バレてないんだよな?」
「うん、そこは大丈夫。それでね、決めたのさ」
「何を?」
「この娘ならサンタ・ブラックを完全封印して私を開放してくれるんじゃないかと思ってさ。ネネちゃんを手伝いながら、鍛えることにしたんだ」
「嫌がらせすんのか?」
「ちょっ!ルーナ姉ちゃん人聞きの悪い・・・まぁ、そうなんだけどね」
「悪さを仕掛けておきながら、自分で消す。マッチポンプの嫌がらせって、楽しそうだな」
「難しいんだよ。サンタ・ブラックと幹部達にバレないようにやんないと」
「ネネちゃんにも、バレないようにな」
「そだね」
さて、ネネとボルトは、そろそろ森を出て次はドールの街へ向かうことになります。
の、はずなのですが・・・
しかしネネは昼食を食べ過ぎてお腹ポンポコリンになってしまい、今度は食休みと称して休憩を要求していました。
このコンビは、いつになったら出発するのでしょうか。
つづく
【あとがき】
この小説の題名は「赤と黒のサンタ」です
サンタ・ネネが最も望んでいることは「笑顔を見ること」です
まだまだ弱いネネですが、関わるもの全てを笑顔にしたいと思っています
道化師のオレンジの「道化師」ですが、わざとお道化て見せることで人々を笑顔にしようとしていることが異名の由来です
オレンジとネネが互いに魅かれ合うのは、このことが根底にあるからでした
全てAI生成画像です。「leonardo.Ai」さんを利用させて頂いてます
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?