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第51話 スイカに塩で甘くなりますよ

死神と月のルーナは、お互いの近況を報告し合っていました。
何せ200年ぶりの再会です。

死神は、いま道化師どうけしのオレンジがサンタ・ブラックにとらわれの身であることを聞いて驚きます。
彼女は誘拐拉致ゆうかいらちされた後、寄生蟲ソウルイーターをつけられて、不本意ふほんいながらも人類に対して悪事あくじを働くよう強制されてる状況でした。
サンタ・ブラックの配下である幹部達も、天の川銀河太陽系では最強クラスの原初神ORIGIN並みの力を持っているという話にも驚かされました。

「念のため言っておくけど、オレンジは寄生蟲ソウルイーターを絵本に封印して、サンタ・ブラックからの洗脳を逃れてるからな」
「なるほど。しかし奴らが原初神ORIGINのオレンジさんでも抵抗ていこうできない程の力を持っているとは、いささか驚きました」
「それでさ、もしオレンジが人間界で悪事あくじを働く現場に遭遇そうぐうしても・・・」
「わかってますよ。そこは、うまく調子ちょうしを合わせますので」
「そうしてくれると助かる」

原初神ORIGINのオレンジの話によると、幹部が人類に恐怖と絶望を与えることで生まれる負のエネルギーを、サンタ・ブラックが吸い上げることで成長を続けているとのことです。
つまりサンタ・ブラックをこれ以上成長させないためには、人間界で幹部を見つけたら必ず駆逐くちくするか、討伐とうばつしていかねばなりません。
こちらに潜入して活動している幹部は、すでに相当な数がいるとのこと。
どうやらこれは、相当苦労しそうな予感がします。

原初神ORIGINの他の皆さまは、今どうされているんですか?」
「う~ん、オレンジはずっと行方不明になってたんだよね。私も今朝がた再会したばっかしだし」
「それでいきなり、悪の幹部やってると聞かされたわけですか」
「重すぎる話だろ。だからさ、うかつにオレンジを他の原初神ORIGINに会わせるとさ、困った事態を招きそうな気がしてな」
「確かに、洗脳されてないことがブラック・サンタにバレると困りますね」
「そうなんだよな・・・あ!それよりビックリしたのは、オレンジのやつ、いつの間にかネネちゃんと友達になってやんの」
「興味深いですね。それぞれ複雑な事情を抱えた者同士の出会いは、偶然なのか、はたまた必然なのか、どっちだと思いますか?」
「う~ん、必然。すでに何か新しい物語が、始まってる気がするんだわ」
「その物語の主人公は、ネネさんってところでしょうか」
「オレンジも同じこと言ってたな。ネネちゃんは、やみち払ってくれるけの明星みょうじょうなんだってさ」
「面白そうな話ですね。その物語の舞台に、ルーナさんも立つのですか?」
「さ~って、どうなんだろうね」
「いや、もうすでに舞台袖ぶたいそでに立って、出番を待ってるように見えますが」
「え?!」

そんな話をしていると、砂浜で遊んでいたサンタ・ネネと道化師どうけしのオレンジが、すごい笑顔で死神とルーナに向かって手を振っています。
なぜかカットされたスイカを手に持って、ぶんぶん振り回していました。

サンタ・ネネ
道化師のオレンジ

死神はクスクス笑いながら、軽く手を振り返します。
そしてルーナに向かって話しかけました。

スイカ

「ほら、ルーナさんを呼んでるみたいですよ。一緒にスイカ食べてきたら如何いかがです?ネネさんと仲良くなれるチャンスだと思いますよ」
「あ!うん」
「どうしましたか?」
「いや、死神が笑うとこなんて初めて見たなって」
「なるほど、これはネネさんの影響かもしれませんね。あのと一緒にいると、楽しい事いっぱいありますから」
「へぇ、そうなんだ」
「では、この塩の小袋を差し上げます。スイカに振って食べればさらに甘くなるってことを、彼女達に教えてあげてください」
「そうなの?」
「さぁ、早く行った!行った!」

実はルーナは、どうやってネネと仲良くなればいいのか、きっかけ作りに悩んでいました。
そのきっかけが「塩」になるとは、いささか意外な展開でしたが、ルーナにとっては渡りに船だったようです。

塩をふったスイカを食べる3神さんにんから、興奮した声が聞こえてきました。
おそるおそるスイカに塩をふったルーナも、ホントに甘さが増したことに驚きます。

「すごーい、ルーナちゃん何だコレ。ホントに甘くなったんだけど」
「マジで?! ちょっとルーナ姉ちゃん、私のスイカにも塩ふってよ」
「おい!ちょっとオレンジ、スイカ振り回すのやめろ」
「うわ~ 私のスイカも甘くなったよ!」
「意味わかんないよな、しょっぱい塩で甘くなるなんて」
「面白いね~」
「不思議だね~」

道化師のオレンジ       サンタ・ネネ         月のルーナ


ギャーギャーと大騒ぎしているものの、満面まんめんの笑顔がこぼれていました。
月のルーナも、こんなに心の底から楽しいと感じたのは、実に数百年ぶりだったそうです。
やはりネネを中心に、世界の何かが変わっていくような気がします。

つづく


【あとがき】
この小説の題名は「赤と黒のサンタ」です

サンタ・ネネと仲良くなる最大のコツは「一緒に楽しく食事すること」と「一緒に楽しく遊ぶこと」です
つまり彼女が求めているのは「楽しく過ごせる仲間との出会い」でした

一般的な神や女神は、食べること自体にあまり興味を持っていませんが、ネネは人間達の食べ物に興味津々です
理由は単純で「だって美味しいもの食べたら、楽しくなるよね」だそうです
さらに友達や家族と一緒に囲む食卓は、最高なんだとか

神々は永遠に近い寿命を持っている弊害へいがいで、色々な興味や学びの精神などが、どんどん希薄きはくになっていきます
つまり成長が止まってしまい、考え方がり固まったままの状態になります
そしてそれが原因になって、弱体化していくのです

ネネは、これとは真逆でした
あらゆるものに興味を持ち、学ぼうとする姿勢を忘れないうえに、かげの努力もしみませんでした
つまり成長し続ける珍しい女神であると言えます

ネネの側にいる神々も、彼女の影響を大きく受けて変化していくことになります

原初神ORIGIN道化師どうけしのオレンジ」は、感情が豊かになり
原初神ORIGIN終焉しゅうえん奈落ならく」は、感情が豊かになり口数が増え
「死神」は、無感情でしたが笑うようになりました

さて原初神ORIGIN「月のルーナ」は、ネネから今後どんな影響を受けるのでしょうか?
その変化と成長が、楽しみです

全てAI生成画像です。「leonardo.Ai」さんを利用させて頂いてます

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