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二者択一から離れる「両忘」 byねんとな

最終章に突入した「病室で念仏を唱えないでください」の第8話のコラムを配信しました。

物語の進行と共に、盛り上がりと、深みが出てきて大ボリュームになり過ぎたので、今回は後編として、作中で語られた「両忘」について掘り下げていきたいと思います。


二者択一から離れる「両忘」

肺がん治療の為に治験を受けようか悩んでいた泉谷さんと話をする中で、

「死にながら生きる。生か死じゃない。治験に参加して死んでも、
 誰かを助ける事になる。どうせ死ぬなら、それで誰かが生きればその方がいい」

白か黒、善と悪、美と醜。二者択一の選択から離れ、自由になることを「両忘」と言うんだそうです。

白か黒、決められないなら決めなきゃいい、と泉谷さんは言いました。そして、食堂で繰り広げられる多国籍フェアは、今回はドミニカカレーで、白カレーと黒カレーがあり、「白か黒、どっちかに決めろ!!」と書かれた幕を見て、どちらを食べようかと悩むと、「どちらも食べない!両忘です!」と食べない事になってしまう(笑)

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問題を答えようとする人間の本能

人は、質問されると答えようとする性質があるそうです。そして、同じように、「どっちがいい?」と二者択一を迫られると、どちらかを選ぼうとする。どちらも捨て難いものだったら、どちらを選ぼうか悩みます。人生の悩みの多くは、この二者択一の間にあるのではないでしょうか

交渉する時も、二者択一を提示することで、有利に運ぼうとする手法がありますが、人を支配する時にも利用される時があるので、要注意です・・・

二者択一でどちらかを選択しない方法は、どちらも取るか、どちらも取らないかです。どちらも取ろうとすると、「二兎追うもの一兎も得ず」と言うように、どちらも得られないことが多いかもしれません。それに、強欲で傲慢なので、差し上げる方からしたら、あげたくないですからね。


イソップ童話「金の斧、銀の斧」と「両忘」

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逆に、どちらも取らないようにしたらどうなるか。イソップ童話の「金の斧、銀の斧」がありますが、木こりは、池に斧を落としてしまい、神様が「お前が落としたのはこの金の斧か?それとも銀の斧か?」と二者択一を迫られました。しかし木こりは、そのどちらも取らず、「おらが落としたのは、どっちでもねぇです。鉄の斧だぁ」と訛りながら言いました。
その結果、「なんて正直な奴だ」と、神様は嘘をつかなかった木こりに、落とした鉄の斧と、金の斧銀の斧、両方をあげました。その後、その話を聞いた欲張りな木こりが、同じように池に斧を落とし、現れた神様に、「その金の斧が私のものです!」と言った所、当然もらえず、自分の斧も失う事になりました。ちゃんちゃん。

「両忘」と聞いて、この童話を思い出しましたが、以前は、この童話は、「正直でいる事や嘘をつかない大切さ」を謳った童話だと思ってしました。それもあるとは思いますが、実は、支配の原理や「両忘」を描いていたんだなと気付きました。

両忘とは、二者択一から解放されるという事ですが、その真髄は、どちらも手放す事でどちらも得ることができる、ということではないでしょうか。結果を求めたり、道中を楽しめない人には、きっとそれはできないでしょう。結果は、道中を楽しんだ先にあるものとして受け入れ、今と向き合って生きる道楽家こそ、「両忘の真髄」に辿り着けるのではないか、と思います。

なので、二者択一から一挙両得にできる道楽家になりたい方は、道楽舎をフォローしてくださいね(笑)



先週の瀬川

濱田に見放されたものの、勤務を続ける瀬川。「まだ辞めてなかったの?」と言われてしまうが、いつもの様に「ですね」と返す。そこで、カルテをシュレッダーにかけるよう指示されると、喜んで従う。
子供が生存本能の為に、毒親であっても頼ってしまうように、瀬川も濱田の奴隷になってでも、生き残る道を選んでしまいました。

しかし、それは濱田の良い部分も知っているからで、どこか「私だけが彼の良い所を知ってるんだから!」みたいなメンヘラっぽい感じになってしまいました(笑)

最後に瀬川は笑っていられるのか。それとも、"せい"に取り憑かれてしまうのだろうか。瀬川の結末にも目が離せません!?


さぁて、先週の松本さんはぁ?

もう既に欠点がなくなってしまい、完璧な物語においても完璧な存在となりつつある児島先生こと松本さん。
前半に心臓外科と救命、濱田と松本の間で揺れていた時、メインで描かれましたが、今や安心して松本さんを鑑賞できるので、それはそれで楽しませてもらってます(笑)

ということで、先週の松本さんは、2日間意識不明だった患者が目を覚ました時に呼びかける姿です。

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こんな風に呼びかけてもらえるなら、何度でも意識を失ってもいいです。


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