ノーサイド・ゲーム⑥「組織は腐るもの」
簡単なあらすじ
プラチナリーグ優勝を賭けたサイクロンズとの決勝戦は、惜しくも半歩届かず優勝を逃してしまった。
打ち上げも意気消沈するアストロズ。優勝を逃した悔しさと、何より来季を迎えられるかの不安。君嶋は、そんな不安を払拭するために、誰も予想できなかった今期の活躍を認め、安心させようとさせる。そんな空気を行きつけの食堂のママが笑いで払拭してくれた。
そして、来季の予算案の会議にて、今期の報告をするが、14億の予算に対して出せた利益は5500万円。常務の厳しい姿勢に、アストロズ不要論が強くなる中、社長はアストロズの活躍と重要性を述べると、常務は「それ以上は社長の進退に関わりますよ?」と、社長責任持ち上げ、社長の責任と引き換えに、来季も14億の予算を確保することができた。
今期のアストロズは、前期より5倍の観客動員、収益も増えた。しかし、プラチナリーグ協会の存在によって、アストロズに入るはずの配布金は分配され、1円も入ってこない。アストロズだけが盛り上がっても、リーグ全体としては、「ラグビーはアマチュア」という旧体制で運営する協会のみ得をして、所属チームは苦労ばかりという構図だった。君嶋は、この体制を変えない限り、アストロズがどれだけ頑張っても効果がないと踏み、協会変革に乗り出すが、ラグビー経験者の組織は、君嶋の変革を良しとしない。
今期のアストロズの活躍と地元密着活動によりファンが増えたことで、ファン感謝祭を行うことにした君嶋。そんな中、本社に戻らないかと元上司が声をかける。滝川常務がカザマ商事買収を成功させたら、トキワは滝川体制になってしまう。それを阻止するために君嶋が必要とされるが、君嶋は即答できず、考えこむ。君嶋が出した結論は、本社での自分は、常に結果を出して勝ち続けてきた。しかし、アストロズでは勝てなかった。ここで本社に戻れば、負けたままになってしまう。だから、もう一年時間を頂きたいと、本社復帰を断ってしまう。妻にもそのことを報告するが、妻は、厳しい人だが安易な反対も賛成もしない。しっかり考えて決断したことなら認める筋の通った人なので、その決断を支持した。
そして君嶋は、協会変革の為、再び協会に訪れるが、変革案は却下。それでも、あなたたちが変わるまで、何度でもアタックし続けると宣言する。
ファン感謝祭では、多くの子供達やファンの方々が集い、紅白戦を行うこととなった。レギュラー組とサブ組に別れ、レギュラー組がリードするものの、サブ組も負けてはいない。そんな中、サブ組の中で抜き出た選手が大活躍をする。それは、大学時代にニュージーランドで活躍し、怪我でラグビーを諦め賭けた七尾だった。君嶋が諦めずに声をかけ、トキワに入社した後、サイクロンズとの決勝戦を観戦したときに、アストロズで戦いたいと心を動かされたのだった。七尾の活躍で、サブ組が逆転勝利する。アストロズに新たな力が加わったが、サイクロンズが不穏な動きを見せる。
組織は大きくなる程腐りやすくなる
トキワ自動車も、ラグビー協会もそうですが、組織は大きくなる程、また歴史が長くなるほど腐りやすくなるものです。
その昔、『金八先生』で、「不良生徒は腐ったミカン」という名シーンが描かれました。人道的な金八先生は、
「私たちはミカンを作ってるんじゃない!人間を作ってるんです!!」
と、不良の生徒を切ろうとする学校と真っ向勝負をします。これは感動的なシーンとして今でも語り継がれていたりしますが、学校の言い分も、間違っているとは思えません。もちろん生徒はミカンではないですが、生徒だって思いを向けなければ腐りもします。逆に、先生が腐ってるということも十分にあると思います。
組織が腐る理由
また、組織が腐る理由は人主導ではなくなるからです。私は以前、大企業を作りたい、財閥を作りたいなどと考えていました。今は微塵も思いません。それは、奇しくも池井戸さん脚本の『半沢直樹』を観たことがきっかけかもしれません。
大企業になればなるほど、組織は腐っていきます。「出世争い」と言う観念を植え付けられ、高給と地位や肩書きというものによって保身を生み出します。経済的にも権威的にも、立場や肩書きを守る為に、入社した時の夢や目標は薄れていき、すり替わっていってしまいます。
同じように、利益を追求した組織運営も、利益を第一にし過ぎて、人の為にある会社ではなく、会社の為にいる人になってしまいます。そんな組織にいて、幸せになれるでしょうか?
夢や目標を追い続けたり、楽しめる仕事ができるというのは、理想論かもしれないし、甘いと思われるかもしれません。ただ、そのような社会であるというシステムそのものが、どこかおかしいと思います。かといって、システムを変えることは、簡単なことではないし、下手に変えても混乱が待ち受けています。
ある程度、受け入れなければならないこともありますが、その中にあって、どこかで誰かが腐っても、自分は腐らずに、現実を受け入れながら、立場や肩書きに固執せず、楽しめるような存在でいたいと思います。
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