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「自分だけの常識」にこだわる人の限界

自分の「常識」は、ほんとうに常識なのか?

さて、ひとつ質問です。スコップとシャベル、どちらが大きいでしょうか。

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答えの前に、とあるエピソードをご紹介します。

10年以上前の話です。当時、東北の震災後のお手伝いで、石巻や気仙沼に何度か足を運んでおりました。経営者仲間による有志ボランティアで、ほんのささいな活動ではありましたが。


震災から少し経った後という状況で、その日は、荒れたままになっている廃屋の片付けの仕事でした。その家主さんからの依頼です。

現場は他の地域からのボランティアもいる混成部隊で、臨時のリーダーには関東から来たというシニア男性が指名されました。(チーム編成などは、地元のボランティア受け入れ団体が仕切っていました)


そして、僕たちも含めた混成チームによる片付け作業が進んでいきます。今みたいに、ものすごく暑い日でした。

その中で、臨時リーダー氏が、「スコップ持ってきて」と指示する場面がありました。そしてそれに反応し、僕らの仲間である若手経営者(京都出身)がすばやく動いて道具をリーダー氏の元へ持っていきました。ちなみに彼は、判断力と行動力に優れた、とてもすばらしい人物だと評判の若手です。


すると臨時リーダー氏、「何聞いてたの?? スコップだよ、スコップ。これ、シャベルじゃねえか。こんな小さいので作業できるか!」といきなり怒り出しました。

えらくキツい言い方がまわりに響いたので、みんな驚いて作業の手が止まってしまいました。

復興支援に参加すること自体、とてもすばらしいことだと思います。しかしその臨時リーダー氏、コミュニケーションのあり方なども含め、見ているとどうも感じが良くありません。どうやら、普段はチームとして動く経験の少ない方のようでした。


それを見たもう一人の僕らの経営者仲間が、「あ、スコップとシャベルは地域によって呼称が入れ替わるんですよね、確か。こちら、スコップ持ってきましたよ。「大きい」やつが必要、という理解でいいんですよね?」

相手に敬意を欠かさないコミュニケーション、全体への状況説明、そしてすぐに事態を解決する行動力。さすがの対応だと感じました。やっぱり、こういう仲間たちと一緒だとステキだなあと。


しかしながら先ほどの臨時リーダー氏、「ああ? スコップはスコップだろうよ。何言ってんの? あんたら、そろいもそろって常識ないの(笑)?」と、なぜか自分の正しさにこだわり続けます。

誰が正しいかに執着し、自分の考えをまったく譲る気がないようで、取り付く島もありません。ああ、これにはいろんな呼び方があるんですねと、その場ですぐ済むはずの話なのですが。おかげで、全体の仕事もすっかり止まってしまいました。


さすがにこれはアカンと思い、ボランティア受け入れ団体に報告と相談。結局その日は、僕らの仲間は別の現場で稼働することになりました。

▶「常識」の危うさ、そしてコミュニケーション


このエピソードは、表面的に見れば、「スコップ」と「シャベル」にまつわる方言性による誤解が原因、ということになるでしょう。

ちなみに、東日本地域では大きいものが「スコップ」、小さいものが「シャベル」となる場合が多いようです。そして、西日本ではその逆。細かい地域差はいろいろあるようですが。ネットで調べたことがあるのですが、その原因にも諸説あるみたいです。

ちなみに僕は大阪出身ですので、「スコップ」というと、すぐに幼稚園のときのチューリップの球根植えを連想します。赤とシルバーで、取っ手に穴がボコボコあいたやつです。共感いただける方はコメントお願いします(笑)。


話を戻します。この臨時リーダー氏の事件は、言葉の認識違いが原因のように見えて、やはりその本質は「考え方」と「コミュニケーション」にあると思うのです。

自分の常識がすなわち世界の常識ではない、まずはこのことをきちんと理解しておくことが大切ですよね。


リーダー氏は、「ひょっとして、相手は自分と異なった認識を持っているのかもしれない」ということに考えが至らなかったようです。だから、自説に固執し、さらには相手を小馬鹿にしたような態度を取り続けてしまいました。普段から、ずっとそのような態度で生きているのかもしれません。

そしてその結果が、チームの崩壊です。その後のことは知りませんが、おそらく現地のボランティアコミュニティでは、「この人はリーダーに不向きだな」という烙印を押されてしまっただろうと想像しています。

自分自身としても、ものすごく損をしていますよね。かわいそうに、と思います。


逆にあのような場面で、怒鳴られようが、バカにされようが、言い返すこともせず、「全体最適」を考える行動を取った仲間たちはすばらしいと思います。

このあたり、ものすごく人間性が出ますよね。これ、自分もちゃんと考えて生きていかないとダメだなあ、と実感できたエピソードとなりました。


思い込みを捨てる。相手の立場に立つ。そして、つねにきちんとコミュニケーションを取る努力を続ける。

夏が来るたび、思い出される教訓です。


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Voicyで、この内容についてさらに掘り下げました。よろしければぜひお聞きください


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