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【出版記念ランチタイムセミナー】 親子の会話で子どもの伝える力を上達させよう 第4回(完)

授業での発表や、大人との会話など、普段生活する中だけでも「伝える」場面はたくさんあります。
もちろん、お子さんの中には、この「伝える」が苦手で、どうしたら良いのかと一緒に考えている親御さんもいらっしゃると思います。
今回は、伝える力を伸ばす書籍『発表がうまくなる! 好きになる! 10歳から知っておきたい魔法の伝え方』の著者である鈴木深雪さんをお招きし、「自分が子供のころ知りたかった内容」などをテーマに、「伝える」を上達させる出版記念ランチタイムセミナーを開催しました。
この記事は、上記ランチタイムセミナーをもとに作成されています。

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ななたこ


鈴木深雪さん:小学校の4年生以上だと、ぜひこのワーク、SHOW&TELLの中で論理思考を伸ばすやり方にトライしてもらいたいと思います。それが本の中に書いてあるのですが、「ななたこ」というやり方です。「7本足のたこだよ」と子どもたちには伝えています。

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SHOW&TELLをいきなりやろうとするとたぶんこういうことが起こると思います。
「マイクラっていうのは、実はこんなキャラクターがいてさあ」とか「ワンピースは、ルフィーがね」とか、いきなり登場人物の名前が羅列されたり、あらすじを頭から話し出す。
これは一応伝えてはいるけれども、伝わる話し方にはなっていない。


だからこそ、ここは大人の聞く力、スポットライトと併せて、論理思考力を伸ばす、育むような質問や誘導というのをやっていくべきだと思います。
その誘導の方法が「ななたこ」なんです。

簡単にいうと、話は大きなテーマからだんだん小さなテーマになっていくと分かりやすいです。今日もそうですよね。「伝えるということはこういうことで、こんなにいいことがありますよ」「じゃあ具体的には」「具体的には」「じゃあ小学1年生は」「幼稚園生は」というふうに小さな話にだんだん入っていっています。

それと同じように子どもたちの話も一番大きな話から小さな話にしていけます。
その典型的なのが、これはカンパニープレゼンとかでも使えるテンプレになっていると思います。

「私が話したいのはワンピ―スというマンガの魅力についてです」。


① 「なにを」ですね。これを話します。「ほお、ワンピース。あれはマンガなのね」と、聞いている人はわかりますよね。
その上で、次の質問です。「なんでなんで?」「それを話してくれるの?」と投げかけてあげるんです。

「実はワンピースって海賊の話なんだけどさあ。僕海賊って悪者かと思ったら、結構いい奴だったり、仲間の話とかがでてくるんだよね」。


② 「なぜ」ですよね。そうすると聞いている大人のほうもちょっと身が乗り出しませんか? 「ワンピースってただのマンガでしょう」と思っていたら「そうなんだ。海賊の中の仲間の話なのね」って。


それで、③「たとえば」で、ここでキャラクターの話とか、過去のエピソード、自分が印象に残ったことを、具体的に話をしていくのです。

子どもたちはいつもこの「たとえば」が頭だから、大人が「ちょっとやめてくれる?」となってしまうので、この「なにを」「なぜ」というここのオープニングトークをしっかりしてもらって、そこから具体的な例えに入っていく。

SHOW&TELLの場合はここで終わってもいいと思いますが、プレゼンテーションの場合は、せっかく伝えたのだったら、ワンピースを読んでもらうよ、相手に行動~④「こうどう」~させてなんぼだよね、というところまで子どもたちにいつも言っています。

最後に

「ワンピースの第○巻をぜひ読んでください」
「ダイジェスト版のYouTubeがあるから見てね」

とか、こういう最後のCMの一言みたいなものを入れると、それだけでプレゼンテーションになっていきます。

型があればこそ自由に解き放たれる


これまでの200人の子はみんなこのテンプレートで話しています。これで話すと、型を何度も複製していったような、同じプレゼンになるかと思いきや、全然そんなことないのですよ。

型というのは、不自由になって個性が消えていくかのようにも見えますが、型があるからこそ思考とか思いが自由に解き放たれるということがあると思います。

例えば皆さんもそうだと思いますが、「10分間時間をあげるから、自由に話して」というと、なんにもネタが出てこない時ってないですか? でも「今日は3つの質問をご用意しました。それを10分間でお話しください」というと出てきたりすると思うのです。
つまり頭の中に質問、項目という制約を設けてあげることで、逆に子どもたちは自由にアイデアが出てくるのです。言葉が出てくるのです。

子どもにマイクを向けてあげる

大人がやることは簡単です。高学年になればこれを勝手に覚えてやるようになりますし、低学年であれば「○○ちゃん、ぜひワンピースについて教えてくれる? ずばり、今日お話ししたいことはなんですか?」とマイクを向けてあげる。

「へえ、なんで?」
「たとえば?」
「じゃあ最後に行動してもらいたいことを教えてくれるかな?」

というふうに聞くと子どもたちは喜んでプレゼンができていく。

「これで紹介CMができたね」なんていうふうに拍手をしてあげたら、これで子どもたちの成功体験1という感じです。
こんな形でやっていただけたらと思います。本に詳しく書いてありますので、ぜひぜひお読みいただけたらと思います。

プレゼンテーションは自転車


最後に大切な話をもう一つだけします。
プレゼンテーションは自転車だよと子どもたちに言っています。自転車はタイヤが2個あります。一輪車じゃ走れないよと言っているのです。
前輪は自分。後輪は聞き手の相手だよと言っています。とにかくプレゼンテーションには自分の伝えたい思いをこめないと絶対に相手には伝わらない。インターネットの情報だけをただ整理して、どれだけきれいに話をしてもそれは心には届きません。
ですから、自分の伝えたい気持ちを入れようねと言っています。

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伝えたい気持ちを入れて


 伝えたい思いがとにかく大事です。とはいえ、ただ熱いだけだと伝わらないので、相手への想像力、論理的に話すことが大事だというところなのです。それが後輪にあたる「相手への想像力」です。先ほどの「ななたこ」は、この後輪の相手への想像力の一つである、論理的に体系立てて話すというところを今ご紹介しました。

では、前輪と後輪のどちらが大切なのか?です。

それは、前輪である自分の伝えたい気持ちです。ラブレターもそうですよね。思いが入っていない100ページのラブレターとかって、絶対交際は実らないはずなので、気持ちが大事ということで言っています。

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ただ、実際の子どもたちはこんな状況だと思います。日記を書くと「うれしかったです」「楽しかったです」「おもしろかったです」「また行きたいです」。これは絶対に伝わらないですねと子どもたちに言っています。
これは借り物の言葉。便利だけれども、そこにはあなたはいません。あなたじゃなくてもいい、と言っています。
大事なのは自分の言葉

「どううれしい」「どう楽しい」「どうおもしろい」

自分の経験や思い出、考え、メッセージを入れようねと言っています。

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借り物言葉ではないあなたの話を


とはいえ、これは実は大人も難しいことです。映画を見に行ったあと、私は感想がすぐに出ないです。「感動したな」と思って、一人で見に行ったあと、私は何をするかというとついつい口コミサイトを見てしまいます。


自分の感想がすぐに言葉で出てこないのです。人の口コミサイト、借り物言葉を借りて、自分の感想を作ったりしています。駄目な大人だなと思います。でもそれぐらい、大人でも難しいことを、今私たちは、子どもたちに要求しなければいけない。


なぜなら、インターネットに情報が溢れているから、それをただコピーしているのだったらAIに負けちゃうよどんなに拙くてもいいから、あなたの話をしようねと言います。

拙くてもいい


先日公立の小学校で話をした時に、とある小説について話をしてくれた子がいました。最初、その子は「面白い。面白い。」と言うわけです。


「なんで面白いの?」というと、こういうふうな言葉が出てきたのです。「その小説は主人公が妹を助けるストーリーなんだ」と。「実は僕にも同じぐらいの妹がいます」ここから自分の言葉を語り始めるわけです。

自分言葉が拙くてもいいし、いっぺんに出てこなくてもいい。でもこれが見えるとその子はたぶんその小説、マンガのことがもっと好きになるはずだし、周りの子も読んでみようと思うはずです。

自分言葉を引き出してあげる


それは何かを紹介するだけではなくて、自分の部活を紹介するとか、学校の面接で「なぜ入りたいか」とか。一生懸命1年かけて作った商品をお客さんに説明するときも絶対に借り物ではなく、自分言葉が必要だと思います。

ですから、私たち大人は、自分言葉を外からつけてあげることは決してできないので、借り物ではなくて自分の言葉はこの子の中に必ずあるはずだと。だからこそスポットライトを当てて、一つでもいいので引き出してあげようと。出てきたときには、それを喜んで拍手してあげようというのがとても大事なのではないかと思っています。

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ですので、ぜひワークをやってみてほしいです。「ななたこ」をやりながら、最初はうまくいった、うまくいかなかった、いろいろあると思いますけれども、そこも正解はないので、ぜひ楽しんでやっていただきたいなと思います。

聞く力を伸ばして~聞いてあげて


大事な一言はこれです。
伝える力を伸ばすためには、聞く力が大事、ということです。ざわざわした教室の前では絶対に人は伝える勇気は持てません。

ご家庭でも同じです。ぜひ大人の皆さんは、「あなたのことを聞かせて」「もっと聞かせて」「教えて」「おもしろい」というふうに話を聞いてあげてもらいたいと思います。それこそが伝える力を伸ばす一番の近道なのではないかなと考えています。


というわけで、伝える力、夢をかなえる力、お家でぜひ成功体験をしていただきたいと思います。

ありがとうございました。(完)

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