見出し画像

【出版記念ランチタイムセミナー】 親子の会話で子どもの伝える力を上達させよう 第2回/全4回

授業での発表や、大人との会話など、普段生活する中だけでも「伝える」場面はたくさんあります。
もちろん、お子さんの中には、この「伝える」が苦手で、どうしたら良いのかと一緒に考えている親御さんもいらっしゃると思います。
今回は、伝える力を伸ばす書籍『発表がうまくなる! 好きになる! 10歳から知っておきたい魔法の伝え方』の著者である鈴木深雪さんをお招きし、「自分が子供のころ知りたかった内容」などをテーマに、「伝える」を上達させる出版記念ランチタイムセミナーを開催しました。
この記事は、上記ランチタイムセミナーをもとに作成されています。

▶第1回はこちら

伝える力を得て、どんないいことがある?


鈴木深雪さん:本日、トピックスとして3つお話をしようと思っています。

画像1

1つ目は「伝える力を得て、どんないいことがあるのか」です。

2つ目に、その伝える力を育成していくために大人として欠かせないもの、準備できるものは何なのかというお話と、

3つ目がここは具体的なワークの話をします。お家で今日からできることということで、お渡ししていきたいと思います。

まず1つ目

もう一つデータをご用意いたしました。

画像2


先ほどは大人のデータでしたけれども、8割の人が苦手というお話をしましたが、こちらも同じような問いです。「授業中に大勢の人の前で自分の意見を言うことが得意ですか、不得意ですか?」というのを小学校4年生、5年生、6年生に聞いたデータです。こちらは70%の子が苦手。もしくは少人数だったら何とかできるかもと答えてくれています。得意と断言してくれたのは3割です。すなわち、大人のデータとほぼ一緒なのかなと思います。

つまり子どもたちは何かしらの苦手意識を感じながら、そのまま大人になっていくのが、今の悲しいかな、日本の現実なのではないかなと思います。
子どもたちが苦手というのは、具体的にどんなことかといいますと、さっきちょっとお話をしたのがこちらです。「ドキドキする」「コンプレックスがある」「手を挙げることもままならない」、こういう子たちが、うそのような変化をするのです。

いろんな具体例~子供たちの変化


そのこの辺もまたミラクルなんです。「深雪さん、生徒会に立候補しました」とか、「今度学校説明会というのがあるので、そこで自分の学校の良さについて新入生たちにプレゼンテーションしたくて、そういう機会を学校の先生に作ってもらいました」って。100人200人の前でプレゼンをするように変わっていったとか。

画像5

あとは例えば市内のSDGsのメンバーに選ばれたという子もいます。

公立の小学校で授業をさせてもらったときには、校長先生があわてて飛んできました。
「鈴木さん、あの子、今日授業で発表していましたけれども、僕は3年間発表したのをほぼ見たことないです。こんなことってあるんですか?!」ってお話をしてくださいました。


私が校長先生にお伝えしたのは

「自分の好きなことだったら、子どもたちは結構伝えたいんですよ」
「『どんなテーマでも話していいよ』そんな安心して聞いてくれる場さえ確保されたら、勇気をもって話してみようかなと思うのだと思います」


ということで、その子は3年越しのチャレンジができたのです。

もっと身近なところでいうと、歴史が大好きな子が「歴史大好きだけれども、実はクラスで歴史が好きだということをオープンにしていない。歴史が好きっていってもそんなに仲間がいないんじゃないの」と思っていると。それが勇気を持ってクラスの中で話してみたら、クラスに歴史友達ができた、という話もあります。

伝える先に成功体験が


伝えるということを通して、本当にいろんな成功体験がその先につながっているなと思っています。でもそれは伝えることをしなかったら、生まれなかったミラクルだなと思うと、ぜひ子どもたちには怖いけれども、伝えることに挑戦してもらいたいなと思います。

私でもいいのかな?←私がいいんだ!へ

画像3


本当に子どもたちの意識がたった3分間のプレゼン、1カ月間のプログラムですが、大きく変わっていくのです。最初のうちはみんなこの左側です。
「私でもいいのかな」とか、例えば「レゴについて発表してもいいのかな」というところから、少しずつ会話を重ねて、みんなが受け止めて会話をしながら拍手したりとか、よくするんですけれども。そうすると「私でいいのかな」が「私でいいんだ」「私がいいんだ」に変わっていきます。


最後発表するときには、

「これを話すのは私しかいませんよね」
「私こそがこれをやるべきだよね」

と思いながら外に飛び出して行く。
そうすると学校での行動も変わるし、いろいろなクラブ活動での行動も変わります。

プレゼンテーションで変わる行動、言動


プレゼンテーションというのは技術だけではなくて、その経験を通して子どもたちの自己認識や、自己肯定感、自分に対するいろいろな意識というものが変わっていって、それが最後アウトプットの行動として言動として変わっていく

それが変われば人とも繋がれるし、新しいことにもトライできるし、部活もスタートして委員会もスタートして、というふうにそれぞれのフィールドで活躍していくのではないかなと思います。
「伝える」って本当に大事だなと私は思っています。

学級文庫にこの本を置いてもらいたい!

ちょっとうちの息子の話をしたいと思います。うちの息子の話が、私自身が一番リアルに葛藤についてのお話ができるかなと思うのでシェアさせていただくのですが・・・。
この本を出したときにうちの息子は本当に喜んでくれて

「お母さん、これは3年4組の学級文庫においてもらえたら最高だと思うんだ」

と話をしてくれたのです。私は「いいじゃない。先生に頼んでみなよ」って言ったのです。


そうすると息子は「伝えたい」「置いてもらいたい」という思いはあるけれども、そこから出てくる言葉はまったく違うものなのです。

「先生、でも、忙しいから聞いてもらえないかもしれない」とか「僕が言っても断られちゃうかもしれないし、うまく伝えるにはどうしたらいいんだろう」

と言うわけなのです。

「そんなことないよ」と。「書いたのはお母さんだけれども、本を置きたいと思っているのはあなただから、あなたが伝えるほうが絶対に届くから」と勇気づけをしてあげました。

親子の会話の中で、先生にこの本を置いてもらうためのプレゼンのリハーサルを軽く、「じゃあこんなふうに話せばうまくいくんじゃないの」というのを10分ほど会話。

そして息子はドキドキしながら玄関を出て、何度も振り返りながら「お母さん、今日僕大丈夫かな」なんて言いながらランドセルを背負って学校に行ったわけです。


それで、帰ってきて開口一番が

「お母さん、置いてもらえたよ」

と大喜び。置いてもらっただけではなくて、その本をパッと見せたら、クラスのみんなが集まってきて、「どんな本なの?」「どんな本なの?」「私も買ってみようかな」なんていう、クラスの会話が生まれたそうなのです。

画像4

いつも人生の分岐点に


これはうちの子の、たまたま一番リアルに話せる話題なので例として出しましたが、そんな形でたぶん子どもたちは「伝えようか伝えまいか」というところで、いつもある意味人生の分岐点に立っているのではないかなと思います。

「本を置いてください」と伝えなければ傷つくこともないし、何も起こらない。でも伝えれば、もしかしたら失敗をする可能性もあるけれども、実際に学級文庫に置いてもらえる可能性もあるし、お友だちに知ってもらえる、この本を話題にまた友だちとのコミュニケーションがワッと広がっていく、大きな大きな可能性を秘めているものと、やらないという、この2つの分岐がある。ここで頑張れる子は頑張れるし、くじけちゃう子はくじけちゃうし、という感じなのかなと思います。

毎日毎日あるこの分岐点、国語の授業で手を挙げるとか、何かのまとめ発表をグループでやった時に「じゃあ私が代表者になる」とか、本当にささいなことだと思います。

その分岐点で、できるだけ1回でも多く「伝える」という方に回っていけば回っていくほど、それに付随してドミノ倒しのように子どもたちの可能性はブワーッと広がっていく。扇状に広がっていくのではないかなと思います。

だから、伝える力を届けたい


とはいえ、私たち大人も伝えるということについて、正直きちんと学んできたことがないのではないかと思います。

だからこそ、こういう「伝えていく」ことであらゆる可能性が増えていく。でも私たちはそれを学んでこなかった。だからこそ教えていこうよ、伝えていこうよというのが今日のメッセージになります。何度も何度もこのお話をすると思いますが、続けていきますね。

伝える力から手に入れられるもの

伝える力が得られることで、子どもたちが手に入れられるものの1つ目、


夢をかなえる力が手に入ると思います。

やりたいということをやりたいと言える。
会いたい人に会いたいと言える、
仲間になろうよと言える、
それはすなわち可能性の扉がどんどん扇状に開いていく力

だと思います。
これが1つ目です。

もう1つは、今日は「親子」というのがひとつのテーマなので、「親子の会話」というところにフォーカスしたエピソードをお話したいと思います。

画像6


ここからは親子の会話、本当に親と子、兄弟、すごく閉ざされた空間での会話をイメージいただければと思います。

ここに書いてあるお悩みのフレーズはこの本を出したあとに親御さんからいただいたフレーズです。
「実はうちの子、放課後帰ってくると、今日何があったかをたくさん話してくれるんだけど、正直言っていることが分からないのよね。何の話なのかも。」
「すごく分かってあげたいけれどもね。一生懸命聞くけれども、最後結論がわからないのよ。なんか不憫に思っちゃってね」というようなことをよくいただきます。

画像7

あと、お母さんが男の子に対して抱く感想としてよくあるのが、興味関心が違いすぎて、例えば宇宙のこととか科学のこととか、数学みたいな、理系分野のこととか、ゲームもそうですね。そういったテーマを尊重してあげたいけれども、自分が持ち合わせている知識と違い過ぎて、何がすごいのか分かってあげられないのですという声もたくさんあります。

具体的には、アインシュタインが大好きと言っていた子、宇宙が大好きと言っていた子とか、小学生の子が算数ではなくて数学が好きと言っていた男の子がいたのですけれども、そのメッセージの中にある真意とか、本当に言わんとしていることまでを、親御さんとしてはなかなか理解できていなかったという話をいただいたことがあるのです。

これもプレゼンテーションをすることで変わっていくのです。上の場合は、子どもたちが論理的に話すすべをつけていくだけで、グッと話が分かりやすくなりますので、親御さんは「初めて理解しました」「ずっと言っていたのはこのことだったのね。ようやく分かった」という感想ですね。


アインシュタインが好きな本当の理由


先ほどのアインシュタインの子は、こんな話をしてくれたのです。
アインシュタインが好き、宇宙が好きとずっと言っていたのですが、「なんで? どこがそんなにいいの?」 と掘り下げていくと、実はアインシュタインは、学校にほとんど行っていなかった。不登校児の時代があった。それなのにあんなに素晴らしい科学者になって、いまでもアインシュタインの発明が僕たちの生活を支えているぐらい、そんなに素晴らしい人であっても、小学校に行ってなかったんだって」と。


実はその子もちょっと学校が嫌いだったりもしていて、そこにアインシュタインの小学生時代と今の自分を重ねて共感して、もちろん学校に行ったほうがいいというのは分かっているけれども、でもその先にある自分の未来をアインシュタインの未来と重ねて、たぶん自分にも可能性があるのではないかということを感じて、それにロマンに感じて、「宇宙が好きだ」「アインシュタインが好きだ」ということを言っていたのが、その子の本音の一つだったのです。お母さんもすごく感動されていて、「そういうことだったんだ」と。

「小学校でも数学を」の理由


数学の子もそうです。「なんで小学校のうち数学を習わないのか、習わないのか」とずっと言っていたそうで、お母さんは「小学生なんだから算数をやりなさいよ」とずっと言っていたと。

でもそれもグーッとヒモ解いていくと、実は算数というのは公式もほとんど習わないし、xyzも習わないので、1個1個計算していかないと解けない。でも数学というのはいろいろな公式がたくさんあって、物事を考える時のショートカットができる考え方。

だからこそこれを小学生から学んだほうがいいと思うということを話してくれて。お母さんも「全然理解してあげていなかった」という反省と共に「初めて理解できました。すごく今幸せな気持ちです」と言ってくれました

▶第3回へ続く

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?