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情緒不安定な人に足りない力

心理学の世界には、「一人でいられる能力」という概念があります。これは、小児科医でありながら、精神療法家でもある「ウィニコット」が提唱した概念です。(詳細は「情緒発達の精神分析理論」に記載されています)


一人でいられる能力を端的にいうと、「人と一緒にいなくても楽しめる力」「人と一緒にいても自分を持てる力」を指します。一見すると、「一人」や「孤独」に対して平気になれる力だと捉えてしまいますが、実は、他の人との安定したコミュニケーションを可能にする力でもあります。


人は、自分一人でいる時より、他の人といる時の方が、より深い孤独を感じます。例えば、精神的にダウンした人にとって、危険なタイミングは、圧倒的な孤独の中で、自分の殻に閉じこもっている時ではなく、人と関われるようになってきて、孤独の辛さを強く感じ始めた時です。


一人でいられる能力が育まれているからこそ、誰かと関係性を築き、その中にあっても不安定にならずに済みます。もし、一人でいられる能力が、育まれていなければ、一人になった時に襲われる不安や寂しさから逃れるために、多くの人間関係を必要とする上に、誰かと一緒にいても、強い孤独を感じ、情緒的に不安定になる為、依存と別離を繰り返す、極めて不安定で流動的な人間関係の中に身を置くことになります。


一人でいられる能力は、見守られつつも、ほっといてもらえる環境の中で、自然と育まれる力ですが、環境が良くても、自分の感情を常に誰かに何とかしてもらおうとする姿勢の中では、向上しない力です。自分の中から楽しみを作り出し、自分の中で問題に向き合っていこうとする日々の営みが、一人でいられる能力を育み、情緒の安定化につながっていくと考えられます。


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