jize

臨床心理士 / 公認心理師 / 40代男性 専門:ストレス、鬱、対人関係、発達障害、子…

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臨床心理士 / 公認心理師 / 40代男性 専門:ストレス、鬱、対人関係、発達障害、子育て、心理カウンセリング、組織ケア、グループワーク、バウムテスト、風景構成法

最近の記事

ストレスに関する4つの誤解

カウンセリングをしていると、精神的なストレスがここまで過剰になった時代も、なかなか珍しいのではないかと感じるほど、ストレスが蔓延化しているような印象を受けます。同時に、クライエントさんと話していると、「ストレス」について、知っているようで、まだまだ誤解している部分の多さにも気付かされます。カウンセリングの現場で、よく見かけるストレスの誤解を4つのテーマに絞って、記載していきたいと思います。 ・ 良いストレスと悪いストレスまず一つ目は、ストレスの全てが悪いものではないというこ

    • 共感の罪

      「共感」とは、カール・ロジャーズによって、一躍有名になった概念です。それまでの著名な心理療法論は、複雑な理論体系を持っており、「何をどうすることが相手の為になるのか」「カウンセリングでは、一体何をどうしたら良いのか」といった方法論について、わかりやすく提示したものはありませんでした。 ロジャーズの理論は、カウンセリングが効果的に作用する為の条件について、とても分かりやすく示したので、支援領域の様々な人に広がっていきました。ただ、そのわかりやすさゆえに、多くの誤解も生んできま

      • うつの原因は疲労ではなくて怒りかもしれない

        ・ うつの一般的なイメージうつの人に「頑張れ」といってはダメだという考え方は、現代では定説になりつつあります。この定説には、「うつの人は、ただでさえ頑張って疲れ切っているのだから、それ以上頑張らせれば、本人を追い詰めることにしかならない」といった考え方が背景にあります。 このことからも、うつ=弱っている人、疲れている人、ダウンしている人 といったイメージが根強いことがわかります。 ただ、この理解だけでは、大きな疑問が残ります。 ・ うつの矛盾その一つが、うつの対応として

        • 不登校は進路の問題

          不登校と言えば、心の問題と捉えられてしまう場合もあるのですが、実際には、「進路の問題」だと思います。 不登校になると、本人も周りの人も、急に人生のコースから脱線したかのような気持ちになり、一気に将来が見えなくなります。 そこに昔ながらの精神論も手伝い、「こんなことで辞めていては、どこに行ってもやっていけない」という非現実的な思考に陥り、不安を膨らませてしまいます。 その為、一生懸命原因探しをして何とかしようとしますが、不安に取り憑かれた状態では、復帰できても、できなくて

        ストレスに関する4つの誤解

          立ち直りの早い人、遅い人

          日々生活していると、精神的にダメージを受けることもたくさんあります。些細なトラブルでも結構引きずってしまったり、そこから深みにハマってしまう場合もあります。 もやもやした気持ちや不安な気持ち、堂々めぐりの思考から抜け出すには、どうしたら良いのでしょうか? どんな人間でも、傷つく時は傷つきますし、ショックも受けます。精神的に応えることも、皆あります。 ところが、立ち直り方や引きずり方には個人差があるように思います。深みにハマりやすい人と、さっぱりしている人とでは、何が違う

          立ち直りの早い人、遅い人

          心の健康と計画性

          今の時代、計画的に物事を進めることが、とても大切にされていますが、この計画性というのは、便利である反面、人の精神的な健康に対しては悪影響があります。例えば、誰かと約束していて、当日が近づくにつれ、気が重たくなった経験はないでしょうか? 人の気持ちは、四季の移り変わりのように、流動的にできているので、約束した日の気持ち、次の日の気持ち、当日の気持ちでは、全てに違いがあります。 人間に限らず、生物全般、気持ちや感覚で生きているので、お腹が空いた時に食べ、眠くなった時に眠る、行

          心の健康と計画性

          心の休め方、気持ちの休め方

          身体的な疲労であれば、お腹も空きますし、眠たくもなるので、体の中から生じる生理的な欲求に従って行動すれば、自然と回復してくれます。ところが、同じ「疲れる」という言葉を使っていても、「精神的な疲れ」では大きく意味合いが異なってきます。 例えば、職場で一日中椅子に座って、緊張感のあるやりとりばかりをしていたとします。肉体的な疲れと同様に「疲れたー」とはなるのですが、本当に疲れているわけではありません。 本当の疲れであれば、自然な空腹と眠気が感じられてくるのですが、緊張感が続い

          心の休め方、気持ちの休め方

          子育てと反抗期

          一昔前は、反抗期はがないとおかしいという考え方が一般的でした。子供は、反抗期を通して、自分の考えや、自分のスタイルを確立し、自立に向けての準備をしていくと考えられていました。 ところが、今日では、そうした意味合いは影を潜め、良好な家庭環境の中では、ほぼ見られなくなってきました。 子供に反抗期が見られるご家庭の一例としては、、 昔見られた反抗は、意味もなく反発したり、不条理に反発するといった意味合いが強かったのですが、今日の反抗は、客観的に見ても、「正当な抗議」と言える内

          子育てと反抗期

          学校に行きたくない本当の理由

          不登校の生徒さんのカウンセリングを受け持つと、決まって最初は、どの子も不登校であることを責められないように、体調の悪さや辛い体験等、たくさんの理由を用意してきます。 おそらく、不登校になって、直接的でなくても、何となくサボっているという扱いを周りから受けるので、自分の身を守るのに精一杯になっているのだと思います。 不登校について、こちらが中立的な姿勢でいると、警戒が解かれて、本当は、学校が嫌なだけなのだという正直な気持ちを教えてくれます。 体感的には、トラブル等の目立っ

          学校に行きたくない本当の理由

          HSP、敏感、繊細、感受性

          最近は、HSP(Highly Sensitive Person、生まれつき繊細で敏感すぎる人)という概念を耳にすることが増えてきました。それだけ、自分のことをそう感じている人が多くなってきた証拠だとも言えます。 敏感に周りのことを気にしてしまう場合、HSPのような持って生まれた性質も関係しているかもしれませんが、環境要因も無視できません。例えば、電車の中や待合室、試験会場、厳粛な雰囲気のレストラン、エレベーター、こういう場所では、大半の人が一時的にHSPのような状態になりま

          HSP、敏感、繊細、感受性

          「子育て」によって犠牲になっていること

          まだ子供がいない人からの相談には、子供が生まれたら、一緒にやってみたいことや、子供にしてあげたいことなど、たくさんの大切な想いが溢れています。ところが、子供のいる人からの相談では、途端に、子育ての苦労や、子供や家族の問題の話しか聞こえなくなります。 現代の子育ては、母親にも父親にも、とても多くの責任と重圧がのしかかり、子供を社会的に逸脱しないように育てることに追われてしまいます。 ただでさえ、人間は、自分のことを何一つできない状態で、生まれてくるので、親がサポートしつつ、

          「子育て」によって犠牲になっていること

          情緒不安定な人に足りない力

          心理学の世界には、「一人でいられる能力」という概念があります。これは、小児科医でありながら、精神療法家でもある「ウィニコット」が提唱した概念です。(詳細は「情緒発達の精神分析理論」に記載されています) 一人でいられる能力を端的にいうと、「人と一緒にいなくても楽しめる力」「人と一緒にいても自分を持てる力」を指します。一見すると、「一人」や「孤独」に対して平気になれる力だと捉えてしまいますが、実は、他の人との安定したコミュニケーションを可能にする力でもあります。 人は、自分一

          情緒不安定な人に足りない力

          PTSD・トラウマ・フラッシュバックの不思議

          PTSD(心的外傷後ストレス障害)は、元々、ベトナム戦争のアメリカ軍帰還兵に多く見られた症状です。ベトアム戦争は、後半には侵略戦争として、アメリカ国内外で、多くの批判を受けた戦争でもありました。 帰還兵は、英雄として迎えられるはずが、侵略者として扱われることになります。命がけで戦った上に、倫理的に責められ、PTSDを発症したというわけです。 ここで、注目すべき点は、もし英雄として迎えられたとしたら、どれだけ悲惨な戦場を経験していたとしても、PTSDの発症頻度は少なかったか

          PTSD・トラウマ・フラッシュバックの不思議

          「献身的サポート」or「冷静な判断」。心理学的支援に必要とされるのは?

          助けを必要としている人には、可能な限りこたえてあげることが、大切なのでしょうか。それとも、一定の線を引いて、冷静に対応するほうが大切なのでしょうか? 精神分析の開祖フロイトは、距離が縮まることで生まれる「人間関係のこじれ」を問題視し、一定の距離感で関わることを自らに戒めていました。 反対に、その弟子のフェレンツィは、ただでさえ傷ついている人に、ドライな対応をすれば、さらに傷つけてしまうと考え、求められる限りは全て応えようとしました。 この献身的な関わり方の効果を実証する

          「献身的サポート」or「冷静な判断」。心理学的支援に必要とされるのは?

          攻撃は被害の裏返し

          心理学の世界では、 「攻撃性の裏にあるのは防衛である」という考え方があります。 傷ついた獣が攻撃的になっている姿はその代表例です。 昨今、問題になっている「あおり運転」を見ても、あおった側も、あおられたから、やり返しただけだと思っている場合が、意外と多いような印象を受けます。 人間関係の中でも、誰かを仲間外れにした人は、自分が外される不安、あるいはおとしめられる不安に襲われて、そうした行動に出た場合がよくあります。 アンガーマネジメントが流行るほど、現代は、攻撃性や怒り

          攻撃は被害の裏返し

          精神症状の本当の意味

          潔癖症、強迫行動、過食症、うつ症状、、、人によって精神症状も多種多様です。こうした精神的な症状は、それ自体が厄介なものと捉えられていますが、その実態は、風邪を引いた時の発熱と同じで、免疫機能や防衛機能に属するものです。 むやみに解熱剤をのめば、免疫機能を発揮することができずに、風邪が長期化するのと同じように、目についた精神症状をただ取り払ってしまうだけでは、苦しみは軽快するどころか、より深いものになってしまいます。 精神的な症状が出た時に検討すべきは、現在の生活の見直しで

          精神症状の本当の意味