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PTSD・トラウマ・フラッシュバックの不思議
PTSD(心的外傷後ストレス障害)は、元々、ベトナム戦争のアメリカ軍帰還兵に多く見られた症状です。ベトアム戦争は、後半には侵略戦争として、アメリカ国内外で、多くの批判を受けた戦争でもありました。
帰還兵は、英雄として迎えられるはずが、侵略者として扱われることになります。命がけで戦った上に、倫理的に責められ、PTSDを発症したというわけです。
ここで、注目すべき点は、もし英雄として迎えられたとしたら、どれだけ悲惨な戦場を経験していたとしても、PTSDの発症頻度は少なかったかもしれないということです。
この話から、PTSDは、過去の外傷体験に加え、今現在の生活や扱われ方が、大きく影響することがわかります。
もし外傷体験があっても、現在の幸福度が高ければ、PTSDは発症しない。
反対に外傷体験がわずかでも、現在の生活が辛ければ、PTSDを発症してしまう。
もちろん外傷体験が酷すぎる場合には、この図式は当てはまりませんが、普通に生活を送れている人もいるレベルの外傷体験なら、この図式に十分当てはまります。
実は、どんな人にもトラウマはあり、フラッシュバックは常に起こっています。この世に生まれることがすでに外傷的だとする学説もあるぐらいです(出産外傷説)。
人間は、現在の生活が順調の時には、良い記憶や体験を想起しがちで、反対に、どん底の時には、嫌な記憶ばかりが頭を駆け巡ります。
PTSDやトラウマのカウンセリングを振り返っても、クライエントが、今現在の生活で壁にぶつかっている時や、辛い思いをしている時に相談に来られることがほとんどでした。
現在の生活が追い詰められると、どうしても過去の嫌な体験(トラウマ)が頭を駆け巡るので、それを何とかしようと、出口のないPTSDの治療に踏み切ってしまいます。
この場合、一つの嫌な記憶が解消されても、日々の生活の辛さに反応して、次々と嫌な体験や記憶がよみがってきます。やがてモグラ叩きのような不毛な活動に追われることになります。
客観的に見て、外傷となった事象のレベルが深刻ではなく、同時に今の生活の満足度が低い場合は、過去の記憶や体験を何とかしようとすることを一旦やめ、今現在の生活の立て直しを図ることの方が大切になります。
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