就活記 #4 向かうべき方向は自己分析からは明らかにならない 〜舵は自分の感性に取らせよ〜

就活で「志望業界をどうやって探せばいいのか」「行きたい企業の条件がわからない」という悩みを抱えている人は多いと思います。自己分析でしっかり自分の中の軸を明らかにしたとしても、実際に企業で働いたことのない学生にとっては、進路を決めることは難しいかと思います。ここでは、具体的な志望企業を定める前の準備として、「どんな会社に行きたいのか」「どんな人と仕事をしたいのか」を、実際に“働く”を経験できない就活の中で明らかにする方法を紹介したいと思います。

◾️ 好き嫌いに沿って進め
「どんな会社に行きたいのか」「どんな人と仕事をしたいのか」を明らかにするために最も重要なことは、「好き」「嫌い」を明確にすることです。
まず、「好き」に関して、自分の中の「好き」は明らかで、それをもとに会社を見ればいいとわかってはいるけど上手くできないという人は多いのではないでしょうか。例えば、「Youtubeを見るのが好き」という人は多いと思いますが、この「好き」から自分の将来の働く姿を想像するのはなかなか難しいと思います。その原因はその「好き」が“働く”に紐づいていないからです。実際に働いた経験が少ない状態で自己分析をいくらしても、働く上で自分にとっての「好き」は明らかにはなりません。
次に「嫌い」を明らかにする理由は、「どんな会社に行きたくないのか」「どんな人と仕事をしたくないのか」を明らかにするためです。それは就活時にできる最大のリスクヘッジです。「好き」を探す人は多くても、「嫌い」を明確にしている人はそう多くはありません。「嫌い」を探し、関わりたくない人や行きたくない企業を明らかにしておくことは、就職後に後悔する可能性を下げることにつながります。
「好き」「嫌い」を明らかにする。当たり前のことを言っているように聞こえるかもしれませんが、これが“働く”に紐づく「好き」「嫌い」だと案外難しいものです。では、実際に働く機会がない状態で、一体どうやって“働く”に紐づく「好き」「嫌い」を探せばいいのでしょうか。

◾️ 最小限の機会、最大限の情報量で解像度を上げる
私は、働く”に紐づく「好き」「嫌い」を探すために、以下の3つのことを実行しました。
 ① 他人の言動から抽出する
 ② 自分のワクワクを掘り下げる
 ③ 質問であぶり出す
経験したことのないことの解像度を上げるためには、効率よく多くの情報を収集し、イメージする必要があります。そのために、上記の3点を、仮説を持って戦略的に実行しましょう。以下、私が実際に行った経験を紹介します。

◾️ 言動の中に見え隠れする違和感には敏感に
就活で、嫌なやつだな、一緒に仕事したくないなと思う人や、楽しくなさそう、行きたくないと思う企業に出会した際にどのように対応しますか。おそらく、ほとんどの人は集中力を下げて話を聞かなくなるか、その場を立ち去るという対応をするのではないでしょうか。しかし、視点を変えて「なぜこの人、この企業に魅力を感じないのか」を意識して、逆に集中して話を聞いてみてください。そうすることで、「どんな会社に行きたくないのか」「どんな人と仕事をしたくないのか」が明らかになります。
私があるベンチャーのインターンシップに行った時、そこの人事のことを好きになれないことがありました。数日間実施されるインターンシップで、その人とコミュニケーションを取らないわけにもいかなかったので、視点を変えて、なぜ好きになれないのかを彼の言動から考えてみました。
 ① あまり言いたいことが伝わってこない
 ② 作業や準備で手間取っているとこが目立つ
 ③ ワクワクして仕事をしていない
①はプレゼンをしてもらっても、あまり大事な事や想いが伝わってこず、あまり自己学習や反省改善を行ってないのかもしれないと感じてしまいました。そう考えると、向上心のある上司の下で働いた方が自分には合っているのではないかと感じました。
②は一つ一つの動きを見ていると、あまり事前準備ができていないことが目についてしまい、自分が部下になった際に、的確な指示をしてもらえるだろうか不安になりました。
③はなんだか疲れて仕事をしているように見えました。一緒にいて疲れが伝染する気がしました。
少々辛口ですが、あくまで私が感じたことです。私以外の人が同じ状況に出くわしても、異なる感じ方をするかもしれません。ただ、私が分析すると上記が見て取れ、一緒にいてマイナスな影響がある人、特に自分の成長の妨げになる人とは働きたくないということがわかりました。

◾️ ワクワクをさらに深く
2つ目の「自分のワクワクを掘り下げる」ですが、「#1 対話で行うNEO自己分析〜自分の姿は鏡を見ないと確認できない〜」にも書いたように、「感情の揺れ」に敏感になることが重要です。そのポジティブな感情の揺れから、自分にとってのワクワクは何かを掘り下げていきましょう。
私が就活をしている頃、ある企業の社長の記事を読んで、すごく面白いと感じたことがありました。そこで、その社長のことを調べてみると、ある総合商社出身ということがわかり、その総合商社を調べると事業内容や企業風土が魅力的なことに気づきました。さらに、他の総合商社も同じように自分にとって魅力的だと気付きました。この様に、たまたま目に入った記事で面白いと感じた一人の人から、自分の第一志望業界を見つけました。正直、ここまでわかりやすく、ある記事から自分の好きに出会えることは稀かとは思いますが、気になったことや魅力的に感じたことを掘り下げていくと、その先に魅力的に感じた理由が眠っているはずです。

◾️ 質問は本質を炙り出せる唯一の手段
残念なことですが、説明会などで人事や社員は良いことしか言いません。説明会に出席するような優秀な社員は、悪いこともポジティブに捉える能力に長けているからです。また、OB訪問では欲しい情報が黙って手に入るわけではありません。しっかりと仮説を持って、クリティカルな質問をしないと知りたいことを得ることはできません。ここでは、私が質問する際に意識していたことを3つ紹介したいと思います。

 ▶︎ 仮説なき質問は無駄
1つ目は「仮説を持って質問する」です。(あまりやりすぎると嫌味な学生に見えてしまうので注意が必要です。)
説明会で某メーカーの人事が、
 A. うちはホワイトです。
 B. 素晴らしい技術を持っています。
 C. うちのプロダクトは世界品質です。
と企業紹介をしていました。一見すごく良さそうに見えました。そこで
 A. ホワイト ⇒ 平凡な毎日
 B. 素晴らしい技術 ⇒ 使い方が固定されていてアイデアの入る余地がない
 C. 世界品質 ⇒ その分野で強すぎて、そのプロダクトしか力を入れていない
という仮説をもち、
 Aに対して、「心震えた事業や取り組みはありますか」
 Bに対して「その技術は他にどの様に利用されていますか」
 Cに対して「他のビジネスへの応用は検討されていますか」
という質問をしてみました。しかし、それぞれの質問に大した答えは返ってきませんでした。このことから、私個人としてはこの企業には魅力を感じませんでした。これも質問の仕方やする人によって感じ方は変わると思います。物事を斜めから見すぎるのも考えようではありますが、逆に就活で企業側の人が言うことを鵜呑みにしすぎるのも良くありません。大事なのは目先の発言に左右されず、仮説を持って欲しい答えを引き出せる質問をすることです。

 ▶︎ 自分にわかりやすい形で返答してもらう
2つ目は「自分の経験に寄せて質問をする」です。(こちらもやりすぎると気持ち悪い学生に見えるので注意しましょう。)
質問に対する答えが、自分の知っているもので説明されるとわかりやすいと感じるのは想像に難くないと思います。例えば、野球は詳しいがサッカーが全くわからない人に本田圭介のことを伝える際に、「野球で言うところのダルビッシュに近い」という説明をするとわかってもらえるのではないでしょうか。
自分がした質問に対する問いを自分の経験に近い言葉で説明してもらうことで理解度が高まります。例えば、自分がチームスポーツの部活をしていたとします。会社の雰囲気を知りたい時に、
 ×:会社の雰囲気はどんな感じですか?
 ○:チームスポーツに長年取り組んできたのですが、会社はどんな雰囲気ですか?
というように質問をすることで、現場の雰囲気をチームスポーツで言うところのどんな感じなのかで答えてもらえる可能性が高まります。正直このテクニックは賛否あるかもしれませんが、上手に質問するとわかりやすい例えで質の高い答えが返ってくることがありますので、騙されたと思って試してみてください。

 ▶︎ 前提の提示は返答のブレを少なくする
3つ目は「前提を提示して質問をする」です。なぜその質問をしているのかを相手に伝えることで、返答が求めているものからずれることを防ぐことができます。例えば、チームプレイで仕事をしたいと思っていて、この会社の仕事の仕方はどのような感じかを知りたいとき、
 ×:普段どのように仕事をしていますか?
 ○:大きな仕事になればなるほどチームプレイが必要になると思いますが、
普段どのように仕事をしていますか?
と質問することで、この人は仕事のチームプレイについて聞いているのだとわかり、返答もチームプレイの事例をもとにされることが多くなります。前提として提示するものとして、自分の仮説なども良いと思います。例えば、「私は〇〇から□□と考えたのですが、御社ではどのように△△されていますか」と質問することで、返答の質も高まります。(良い仮説であれば人事の評価も上がる可能性もあります。)

◾️ 工夫による機会創出で効率を上げる
ただ、多くの人が参加する説明会や、数少ないインターンシップでは上記を満足いくまで実践することはできないのではないかと思う人もいるでしょう。確かに、受け身ではそのような状態になってしまいます。その状態を防ぐために、様々なツールを駆使して、「好き」「嫌い」を見つける機会を積極的に創出しましょう。そこで、私が実際に利用したサービスや行ったことをテクニックベースにはなりますが紹介したいと思います。
 (ア) 説明会やインターンシップを探す
  ① リクナビ、マイナビ(主に合同企業説明会、大手インターンシップ)
  ② レクミー(主に合同企業説明会)
  ③ 学校の就活支援センター(主に合同企業説明会)
  ④ ONE CAREER(主に企業説明会や短期インターンシップ)
  ⑤ Good find(主にベンチャーのインターンシップ)
  ⑥ リンク・アイ(主にインターンシップ)
 (イ) 1対少数の機会を創出する
  ① ニクリーチ(現在はサービスが終了している様です、、、)
  ② ビズリーチキャンパス
  ③ OB訪問(これについては違う回で詳しくお話しします。)
  ④ 人事に突撃
 (ウ) 情報取得機会の損失を防ぐ
  ① 就活仲間を作る(これについては違う回で詳しくお話しします。)
  ② 学校の就活支援センター(使い方次第で案外使える)
 (エ) ワクワクの源泉探し
  ① 日経新聞を読んで未来予想図を描く
   (これについては違う回で詳しくお話しします。)
上記のようなことをしながら、「好き」「嫌い」を探す機会を最大化することを心がけてみてください。参加するだけで楽しい、お金がもらえるようなサービス、イベントも思った以上にたくさんあるので、自分なりのツールを探してみるのも良いかもしれません。(実は就活で50万円獲得したこともあります(笑)ニーズがあればまたどこかで書きたいと思います。)まずは、何でも試してみることが大事です。

◾️ 「考える」ことを放棄しない
この章ではどんな企業で、どんな人と働きたいかを明確にするためのメソッドと、そのメソッドを発揮する機会の最大化の方法について書きました。小手先のテクニックだと感じる部分も多かったかもしれません。紹介したメソッドは私が考えに考えて辿り着いたもので、人によって感じ方も異なるので、あくまで参考程度で捉えてもらって結構です。最も重要なのは、紹介したメソッドを完コピするのではなく、自分の働くに紐づく「好き」「嫌い」を効率よく明らかにするためにはどうすれば良いかをしっかり考えて行動することです。どんな状況下でも考えることを放棄せずに、楽しみながら就活していくことが勝利への近道だと思います。

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