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青の彷徨  後編

19
喪失から孤独。支えもあるが苦行のなかを生きる。そして再生へ。平成初期、医薬品卸は生き残りをかけて合併へ。どう存続させるか。人も会社ももがいてあがいて生きてきた。
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記事一覧

青の彷徨 後編 19

 四月になって最初の休み、周吾はマンションの荷物を友香の部屋に運んだ。荷物と言っても、服…

自遊工房
4週間前
1

青の彷徨 後編 18

 三月になって通常の人事の移動が発表になった。その中に周吾の移動も発表された。驚いた発表…

自遊工房
4週間前
1

青の彷徨 後編 17

 周吾は友香に来年度はもしかして、転勤が早まって移動になるかも知れないと話をしていた。伊…

自遊工房
1か月前
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青の彷徨 後編 16

 周吾は夏の暑い陽射しが落ちてから、万丈の上流の実家に友香を連れて行く。夕方涼しくなって…

自遊工房
1か月前

青の彷徨 後編 15

 青い空に白い雲がゆっくり流れていく。ノッピが笑っているように周吾には見えた。  部屋は…

自遊工房
1か月前
2

青の彷徨 後編 14

 十一月十二日月曜日は、今上天皇即位礼正殿の儀のため休日になった。周吾は昨日の日曜日に実…

自遊工房
1か月前
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青の彷徨 後編 13

 周吾はその翌日も、その翌日も、どこに行くこともなく、部屋の中でノッピと過ごした。顔は酒量が過ぎて青白く、胃はまた小さくなっていた。秋はノッピが恋しくて恋しくてどうにもならない。苦しい。そうわかっていてもどうにもならない。重い気持ちと、ふらつく足取りで月曜日の朝、仕事に出かけた。  また一週間が過ぎた。仕事は集中して何とかこなすが意欲がない。成績は上がらない。消化するのがいっぱいだ。このままじゃだめだ。そう思うが、どうにもならない。ノッピ、ノッピと夜は叫ぶ。先週と同じように、

青の彷徨 後編 12

 秋が深くなっていた。国東の山々も紅葉が点在した。その紅葉を縫うように寺巡りに車を走らせ…

自遊工房
1か月前

青の彷徨 後編 11

 高月誠司が帰って行くと電話がなった。友香だった。友香には今日は万丈に行く話はしてあった…

自遊工房
1か月前
1

青の彷徨 後編 10

 八月盂蘭盆会、周吾は実家にいた。ノッピも何度かここに泊まった。先祖の位牌の中に並んで新…

自遊工房
1か月前

青の彷徨 後編 9

 どうしようか。まだ悩んでいる。その内、ノッピとのことを思い出す。また夢の世界に陶酔する…

自遊工房
1か月前

青の彷徨 後編 8

 そこへ小菅友香がやって来た。今村裕史と同じことを聞かれる。周吾は同じことを答える。友香…

自遊工房
1か月前
1

青の彷徨 後編 7

 協和製薬の梅木康治が会社にいる周吾の側に来た。研修は長くて辛かったがやっと開放された。…

自遊工房
1か月前

青の彷徨 後編 6

 大分営業部はさすがに大人数だ。営業だけで四十、推進部や管理職を含め一階だけで五十名になる。メーカーも卸の朝礼後を狙って押し寄せてくる。   周吾が今村裕史に会ったのは五月も第三週になってからである。周吾は妻の葬儀に参列してくれたお礼をいい。今村裕史はお悔やみを言ってくれた。彼は仕事も彼女も順調で何よりだった。万丈の得意先が、周吾は元気にしているか、妻を亡くした悲しみから立ち直れているだろうか。随分心配している。すっかり痩せて、以前の元気さが見られないのが辛いが、何とか立ち直