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家庭で親子無理のなくできる学習の習慣づけ:ふたつのポイントからとらえてみる


はじめに

 こどもにご家庭で学習の習慣をいかに身につけてもらうか。教育サポートにたずさわる経験にもとづいて、ふたつのポイントにしぼりまとめました。

無理強いしない、こどものいやがるキーワードを用いないで家庭での学習習慣を身につけるのがねらいです。本来ならば息を抜きたい家庭という場所で、しぜんに学習する意欲をわかせるには?

この問いはサポートのご相談に来られるこどもたちの保護者の方々からのおたずねでもっとも多いもの。

親子ともつらい作業にしないくふうとは。現状としてこどもが勉強しないふたつの理由にわけて、学習に向かう方法について具体例を記します。


言葉はいらない

 こどもが勉強をはじめない。その理由は大きくわけてふたつあります。

①勉強が家庭での生活のなかで習慣になっていない
②なにから手をつけたらよいかわからない

いずれも「勉強しなさい。」の言葉は使いません。①と②についてそれぞれこどものこころに響くだろう方法をお示しします。


①習慣づけできていない場合

 おとなは先に勉強を終わらせてから遊ぶほうがよい、「先憂後楽」のほうがよいと経験から知っています(実行するかどうかはべつです)。この良さをこどもに知ってもらうには?こうしてはどうでしょう。

漢字や学校から出されている宅習(その多くは板書したノートを写す作業など)ならば、家に帰りすぐにとりかかるかどうか。まずは休日など保護者の方が時間のあるときにいっしょに習慣づけにとりかかってみます

「さあ、いっしょにやろうか。」あるいは「いつからやろうか。」の言葉のほうがこどもはまだ着手してくれます。

そして保護者の方は言うだけでなく、実際にいっしょにやる行動に移ります。するとこども自身が「やらなくちゃ」とか「よし、やろう」といったん自分の気持ちでやる気になりやすくします。

いっしょにやるとはいっても、集中できているときは声をかけずに横でご自分のことをするだけ。おとなはおとなのすべきことをします。終われば多少雑でも「よくできたね。」の声がけをまずやって、おやつやお茶をしながら休憩しつつ取り組むとよいでしょう。

5分やって5分休憩でかまいません。よい印象を残せたできごとはまたやりたい、いつもそうしたいと思うもの。放課後に何度かこころみてください。

そして「雑なところ」は、逆にまずよいところを見つけてほめてくださいすると雑さに気づいてていねいになります。

雑なところをゲームのように見つけられるとすこしずつ改善します。「褒める・改善」のくり返し。勉強サポートの長年の経験から、いっしょにやる人がいるのと、「やりなさい。」と一方的に宣言されるだけとはずいぶんちがいます。


「先憂後楽」の経験を

 学習の行動は、すでに一部のこどもたちにとっては労苦になってしまっているかもしれません。実際につらいかもしれませんが、それには慰労で完結してはどうでしょう。ほんとうは学習は労苦とはちがうものですが、当面はこれでかまいません。

たとえばわたしのうちではこんなことをしていました。こどもが本来休日のはずの土曜日の午前中に模試などを受けて自宅に帰ってきた時は、ピザをつくり出迎えていました。こどもの好物のピザを焼いて、家に帰り着くと香ばしい匂いが家に満ちていました。

がんばった時にはあとにいいことがある(ありそうだ)の一例といえます。何も食べ物にかぎりません。

長い労苦の先にはたとえば目標の学校に合格とか資格が取れるなどの喜びがあるでしょう。スポーツや習い事も練習の結果が報奨などに結びついています。さらにうえを目指すきっかけにもなります。

放課後や習い事から帰り夕食前(後)に宿題を終わらせたら、あとはしたいことをご家庭ルールの範囲できめられるのもいいでしょう。小学校中学年以降ならば家族で話し合い、放課後のスケジュールを家庭内のルールをこどもの納得と了解のうえで決めてこどもが貼っておくのもいいです。

ここでも自主性を重視しつつ先憂後楽で一貫しています。


時間と順序

 ご家庭により生活の時間設定はさまざまでしょう。それでもこどもの生活習慣に無理なく学習を取り入れるにはやはり「先憂後楽」がふさわしいです。

もしも先に20分間ゲームをしたら、あとは宿題するのではなかなかこどもの重い腰は上がらず、自分から学習へ向かう障壁が大きいです。

順番を逆にすると自分で決めた上でやるとなおよいですし、こどものもつ印象が異なります。きもちに余裕ができますし、なにより心の底からたのしめます。

何か努力したらいいことがある、あるいはそれを報いることがあるというのは、潜在的にやる気を起こさせる原動力になるのではないかと考えられます。

「先憂後楽」を身につけると、何でもそうだ、そのほうが得したみたいでしかも気持ちがいいと思えます。この快感があればこどもが自分のことはさっさと済ませようとするでしょう。


②どこから勉強すべきかわからないとき

 上記②の「何から手を付けてよいかわからない。」のおもな理由は、どう勉強したらよいかわかっていないことに起因しがちです。対策はいろいろありますが、ここではひとつわかりやすいサポートの実践例から。最初のうちは時間に余裕のある長い休みの期間などがよいでしょう。

とりあえずわかるところへもどります。教科書の例題で、わかるところをみつけます。たいていその単元の最初のほうでしょう。まちがえるときはさらにさかのぼってください。学年をさかのぼるかもしれません。

ここまで3~5分までできると理想的(わたしはそうして飽きないようにしています)。わからないうちは長つづきしないのに、わかってしまうと時間が伸びてもたいていは平気なはず。

②の場合はとくに「勉強しなさい。」の言葉は意味がないです。何をどうすればよいかわかっていないのですから自分ではやりようがありません。けっきょく「さかのぼり」が早道で確実です。

まとめますと「勉強しなさい」の言葉が伝わらないそもそもの理由はこの理由が多いです。こどもは何をどうしたらよいかわからないまま。いまだ語彙の少ないこどもの多くはわからない説明自体がむずかしくカチンときがち。反抗期なら逆効果でしょう。


基礎は「3歩もどって2歩すすむ」


 わかるところからはじめると自分でできるのではないでしょうか。あたりまえだろうと思われるかもしれません。しかしこれがたいせつ。忘れたりわからなくなったりすれば、わかっているところを「2歩もどって3歩すすむ」をくりかえしていけばじゅうぶん。

これじゃ、なかなか前に進まないじゃないと思われるかも。だいじょうぶです。毎回2歩もどる、つまりわかっている部分からはじめられますから、自身がつきますし、反復で確実に身につきます。そのうちわかりはじめたらそのままふつうにすすんでいけるはず。

忘れていれば思い切って3歩もどります。そして2歩だけ前進でかまいません。要は自分で解けるスピードが上がればいいんです。これがコツです。

トンネルを掘る際に、軟弱な先の部分の周囲を厚くコンクリートミルクで固めてから堀り進み、掘った部分の周囲に鉄骨をはめて堅固にしてからコンクリートで固めつつ進んでいきます。まさにこれに似ています。

なるべくわかるところをくりかえして地固めして自分のものにすること。そうして基盤ができると、その先の応用の意味がわかってきます。


「わかる」から「できる」へ


 たいていのこども(高校生ですら)は、わからないところを開いたまま、苦しんでいます。そのままでは自然に「わかる」には至れないでしょう。したがって上記の方法が威力を発揮します。もちろんこれを効率よくやってみせるのがプロですが、ご家庭でも取り組めて失敗しない方法です。

「わかる」のはうれしいものです。ただしわかったと満足し油断してしまうことも。「わかる」と「できる」はちがいます。

そこからひとりで「できる」に立ち向かい、ほんとうに「できる」にするために、同レベルの問題をしばらくのちに解いてみて「できる」を確認しつつ応用へとすすんでみましょう。

くりかえしますが、おなじレベルか類似のすこしだけ難易度を上げた問題でよいです。するといつのまにか、わからなかったところまでたどりつけるでしょう。結局は急がば回れで、意外と早道です。


おわりに

 いっぺんにわかろうとせず、わかるところまでもどりつつ、小さな段階を踏んでいくこの方法が、「できる」に近づける早道。「急がば回れ」の実践です。あせらず自分のペースでかまいません。

習慣づけを含めても意外と時間はかからないもの。これはわたしのサポートでもあきらかです。多くのこどもたちが「わかる」「できる」で終わるので自信がついて顔つきが変わりました。

小学校中学年から不登校だったお子さんが高校に通えた、さらに学力不振の児童・生徒が基礎基本を自分でできるようになった実践例にもとづいています。


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