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ゲーミフィケーションと心理学2 -行動意欲編-

一般社団法人日本ゲーミフィケーション協会の田中です。
今回は、ゲーミフィケーションと心理学の関係を、行動意欲というテーマでお話しします。

前回は、オペラント条件づけが、外発的な動機(刺激)によって行動変容を促すという内容でした。そこで外発的な動機(刺激)に頼るのではなく、自ら目標設定を行い、「成長の可視化」を行いながら、内発的な動機付けに切り替えていく方法や理論とゲーミフィケーションの関係性を整理します。

外発的動機づけによる行動が内発的動機づけに変化することを「機能的自律」と言います。例えば、「お金が目的で働いていたが、いつの間にか仕事が好きになって、今では生きがいになっている」といった例が挙げられます。(因みに、この逆(内発的動機づけが外発的動機づけに変化)の効果は「アンダーマイニング効果」や「過剰正当化効果」と呼ばれています)

機能的自律

デジ、フライトによると、意欲に関して3つのフェーズが存在します。最初は無気力であり、それから他律的な意欲、自律的な意欲に変化します。自律的な意欲の中にも、自己実現のための意欲と内発的な意欲があります。なお自己実現のための意欲は外発的動機づけにあたります。いままでの話をまとめると以下になります。

機能的自律2

人が行動にいたる過程を分析したものとして、「合理的行動理論」があります。行動には行動意図が存在し、この行動意図には以下の3つの要因があります。
・行動への態度:自分の期待
・主観的規範:他人からの期待
・行動コントロール感:レベル感や難易度感

合理的行動理論

人が行動する動機づけを説明する「期待理論」があります。
人が行動に移すには「効力期待:自分が行動できるかの実現性」が必要で、行動した結果が見えない、つまり「結果期待:行動が結果をもたらす実現性」がないと行動しません。

期待理論

「自律的な学習意欲のプロセスモデル」を一般化したのもが以下の図です。
まずは、好奇心や知識欲などの「欲求・動機」から「行動」に移し、「認知・感情」を獲得するモデルです。「認知・感情」には、有能感や充実感、楽しさなどが含まれます。

自律的な学習意欲のプロセスモデルを一般化

上記の「合理的行動理論」「期待理論」「自律的な学習意欲のプロセスモデル」3つの理論を組み合わせてみると以下の図になります。
組み合わせると、循環が発生します。まずは自分の気持ちを確認するところからスタートします。もし、難易度やレベル感といった自他の期待に応えられると判断すると行動します。行動には結果が伴い、その結果から認知や感情を見出し、自分の気持ちに返します。

まとめ1

このサイクルを円滑に回すために、ゲーミフィケーションで貢献できる手法を書き入れてみました。最初に自分のレベル感と難易度を見定める場面に置いて、「達成可能な目標設定」を提案することで、「行動意図」にポジティブな影響をもたらします。また、シェイピングという、目的とする行動の変化にたどり着くために、スモールステップで進めていく方法も併用するとさらに効果は高まりそうです。「行動意図」はそもそも「能動的な参加」ですが、適切な目標設定は「行動」を起こす確率や「結果」の良し悪しに影響します。「行動」においては、フェーズごとに行動者のマインドは異なるかと思われますが、「独自性の歓迎」を常にオープンにしています。「結果」に関しては、「即時のフィードバック設計」「称賛の演出」「成長の可視化」を組み込むと「認知・感情」における受け止め方に変化をもたらすでしょう。

げみ

上記のサイクルは、「意欲に関する3つのフェーズ」に介入することで影響をもたらし、機能的自律へ貢献します。「無気力」フェーズでは、サイクルは外発的に循環されていたところ、「自律的な意欲」フェーズでは、内発的な意欲によってサイクルがもたらされます。

げみ2

サイクルから「意欲に関する3つのフェーズ」への影響を加速する装置として、「報酬」があります。「報酬」は「意欲に関する3つのフェーズ」のフェーズによって与える対象に工夫を加えるとさらに効果的です。「無気力」から「他律的な意欲」には行動そのものが少ないので、行動したことに対して報酬を与えます。「他律的な意欲」から「自律的な意欲」のフェーズには、行動は増えてきているので、結果に対して報酬を与えます。

げみ3

すでに「自律的な意欲」フェーズに達した場合には、報酬や過度な演出は行わずに、見守りや自己評価を促すことに徹して、「アンダーマイニング効果」や「過剰正当化効果」を避ける方がいいでしょう。
驚くことに、「無気力」フェーズ、「他律的な意欲」フェーズ、「自律的な意欲」フェーズのいずれにも作用する報酬があります。それは、褒めることです。褒めるという「称賛の演出」は全てのフェーズにおいて効果を発揮します。「褒める」という「行動」ははすぐに実行できるので、与える報酬の種類やタイミングに迷った際には、お勧めです。
(おわり)

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執筆:日本ゲーミフィケーション協会 監事 田中 祐樹
https://jgamifa.jp/


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