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哲学に関するメモ(7) 【聖書】

本メモは哲学の基礎的な内容に関するメモです。


1. 旧約聖書 43項目

1-1. 聖書
…世界を作った神と人間との交流の記録

天地創造

…先立つものはなかった(他と異なる)、光と闇、海、四季、生物、安息日

1-2. ヒエロニムス・ボス
【天地創造】
・無彩色の画面は未完成の世界を象徴


エデンの園

…アダムとその肋骨からイヴ、あらゆるものに名前をつける

1-3. ミケランジェロ・ディ・ロドヴィーゴ・プオナローティ・シモーニ
【アダムの創造】
・指と指の僅かな隙間で触れる瞬間を想像させる、白髪白髭の神はルネサンス特有の表現


原罪

…罪は善悪の知識の実を食べたこと、蛇に責任転嫁、罰は勤労・生み・寿命

1-4. マサッチオ
【楽園追放】
・リアルな人体描写・光の計算はルネサンスの幕開けを告げる
・ヴィーナスの誕生と同じポーズ、古代ギリシャ彫刻が取り入れられた
・影によって足が地面を踏み締め現実感のある表現が可能


カインとアベル

…アダムとイヴの子、カインは捧げ物を無視され嫉妬でアベルを殺す、人類初の殺人

1-5. ティントレット
【カインとアベル】
・白い腕と体を大きく捻ったポーズ、マニエリスムの特徴、死を前にするアベルの表情はわからない
・子羊の頭が転がっている、アベルの供物


ノアの方舟

…堕落した人々を大洪水で滅ぼす、清いノアだけ助かる
→ノアの息子、セム(ユダヤ人)、ヤフェト(ヨーロッパ人)、ハム(パレスチナ人)は呪われる

1-6. パオロ・ウッチェロ
【大洪水】
・左右に方舟を配置、左は洪水で滅ぼされる人々、右は方舟から現れるノア、遠近法の消失点


バベルの塔

…おごった人間はバベルの塔を建設、神は言語を混乱させる

1-7. ピーテル・ブリューゲル
【バベルの塔】
・働く石工職人を小さく描く、塔の大きさを際立たせる、塔の建設物語を効果的に示す


アブラハムの旅

…セムの子孫、カナンへ移住しイシュマエルとイサクが生まれる、イサクの犠牲

1-8. 【約束の地へ出発するアブラハム】
・赤と黄色のコントラストが美しい、上の神はカナンの地を指さす、食器などの全財産


アブラハムの甥ロト

…腐敗した町ソドムとゴモラが天使により滅ぼされる

1-9. ファン・レイデン
【ロトとその娘たち】
・上には終末の火、ロト達の空間を高台に設定し俯瞰的な視点が確保される
・見る人の視線は中景〜後景へ自然に誘導され物語が効果的に示される
・塩の柱になった妻とロバ、2人の娘はロトを酔わせて肉体関係を持ち子孫を残す


イシュマエルとイサク

…アブラハムの子供、妻のサラに子供ができず召使いハガルに生ませる、イサクが生まれ手のひら返し

1-10. グエルチーノ
【ハガルを追放するアブラハム】
・観相学、顔の骨格・表情を感情と結びつける
・影のあるサラ、アブラハムの身振りが右方向に向けられハガルを追放する動きを効果的に示す


1-11. レンブラント・ファン・レイン
【アブラハムとイサク】
・天使の制止を理解、手から落ちる刀、左上から右下に向かう線に収めまとまりを生む
・光り輝くイサクの体はキリスト磔刑のモデルとされている、殺される瞬間を見せないように


エサウとヤコブ

…イサクの子、ヤコブはイサクを騙して祝福を受け贖罪の労働、エサウとの和解

1-12. ホーファールト・フリンク
【ヤコブを祝福するイサク】
・背景は影、中心人物に視線が集中、微かな微笑み、なりすましたヤコブの黒い手、イサクとの対比


1-13. ウィリアム・ダイス
【ヤコブとラケルの出会い】
・前景に人物を大きく配置し遠近法で描く、安定した構図と自然主義的表現はイタリア留学の成果
・短縮法で描かれた羊、伏し目と恥じらい


1-14. ポール・ゴーギャン
【説教の後の幻影】
・女性の視線に誘導されヤコブへ、天使と戦うヤコブの姿は北斎の絵に描かれた力士の姿に基づく
・幻視を描く、見る人も女性と同じ位置で幻視を共有、鮮やかな色、それぞれ区切られていて幻影的


ヨセフはエジプトへ

…ヤコブの子、売られたヨセフ、ヨセフの預言、ヨセフの兄達とベニヤミンもエジプトへ

1-15. ヨハン・フリードリヒ・オーファーベック
【兄に売られるヨセフ】
・ラファエロの影響、従者の視線に誘導され中心のヨセフへ、手と手の交差、兄たちは円形


1-16. カスティーリョ
【ファラオの夢を解くヨセフ】
・夢の内容は7頭の肥えた雌牛と7頭の痩せた雌牛、光は左上から、青・灰・白による遠近法


1-17. ヤコポ・ダ・ポントルモ
【エジプトのヨセフ】
・父ヤコブをファラオに紹介、スカートを押さえるようなポーズは斬新、ヨセフにヤコブの病の知らせ


1-18. ティントレット
【ユダとタマルの出会い】
・大きな V 字の間に後景を描く大胆な構図、木の幹で強調、空気遠近法、青くぼやける
・短縮法、素早い筆致でハイライトを描き布の質感を表現


エジプトを出る

…ファラオによるイスラエル人奴隷化、モーセと10の禍、モーセの十戒

1-19. ローレンス・アルマ=タデマ
【モーセの発見】
・エジプト旅行で撮影した写真。スケッチをもとに描く、労働者の厳しい環境


1-20. サンドロ・ボッティチェリ
【モーセの試練】
・モーセは黄と緑の衣、7回登場、複数の物語を一つにまとめる、右奥から順番に追うと物語が展開


1-21. クラーナハ
【紅海渡渉】
・左はモーセとイスラエルの民、右はファラオの軍勢、曲線で分ける海、両手を広げるモーセと天使


1-22. レンブラント・ファン・レイン
【十戒の石板をふりかざすモーセ】
・晩年に見られる荒々しい筆使い、ヘブライ語で記されている石板、ユダヤ人との交流があった


約束の地カナン

…12部族からスパイ、食い違う情報、神の前によりモーセ死亡

1-23. ルカ・シニョレッリ
【モーセの遺言と死】
・天使が約束の地を示す、書物を手にする、死が迫るモーセ、遺言と杖、死を迎えるモーセ、悲しみ


1-24. レオン・ボナ
【ヨブ】
・明暗のコントラストでヨブの精神世界を表す、老人の体が詳細に描かれる、皮膚病は描かれていない


ヨシュアの戦い

…モーセの跡を継ぐヨシュア、エリコ攻略、カナン征服、土地分配

1-25. ジャン・フーケ
【エリコの陥落】
・前景に攻めるイスラエルの人、中景に崩壊したエリコの城壁、後景に郊外の美しい風景


士師の時代

…異民族の支配から解放(士師記)、デボラ(勝利の歌)、ギデオン(王位辞退)、エフタ(娘捧げた)、サムソン(髪切られる)、ルツとボアズ(落ち穂拾い)、サムエル(ハンナの息子)、サウル(自害)

1-26. ピーテル・パウル・ルーベンス
【サムソンとデリラ】
・髪が切られる緊張の一瞬をとらえる、抵抗できないほどのいい体、肉体表現はミケランジェロの影響
・光源 1 は奥で様子を伺う人々へ視線を誘導、光源 2 は体を照らす、光源 3 は緊張を演出


1-27. ニコラ・プサーン
【夏】
・後景に広がる郊外の風景、明るい陽光と共に美しく描かれている、視点を高くとり効果的に示される
・木を体面に描く、斜めの方向が確保され視線は自然と風景へ誘導される
・パンは聖餐式のキリストの体、夫を亡くしたルツが示されている落ち穂拾いの許可を得ている


1-28. レンブラント工房
【ハンナとサムエル】
・ぼかした表現が穏やかな空間を生み出す、聖書にはない場面


1-29. ピーテル・ブリューゲル
【サウルの自害】
・中景から後景にかけての風景、逃げるイスラエル軍、街を捨てるものもいる
・垂直・斜めに描かれた多くの槍が強大さを示す、左下に自害するサウル


ダビデ

…南北統一、大罪(人妻を犯す)、息子の大罪とアブサロムの反乱

1-30. レンブラント・ファン・レイン
【サウルに琴を弾くダビデ】
・サウルを中心に明るく描き、ダビデを左端に暗く描く、この対比で主従関係が示される
・ダビデの指先に光が当たる、表情はわからない、サウロの眉間にシワ


1-31. ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ
【ゴリアテの首を持つダビデ】
・眉間にシワを表情に勝利の喜びはない、自分が殺人を犯す前の姿を描いているとも言われる
・指先には力が入っていないようにも見える、ゴリアテの首は実際に切られた首をもとに描く


1-32. レンブラント・ファン・レイン
【バト・シェバ】
・黄金に輝く体と静寂な時間、ダビデの手紙、聖書に記述はないがよく描かれるモチーフ


1-33. ヤン・ステーン
【アムノンとタマル】
・流行の衣装・物が風俗画のような印象を醸し出す
・腐りやすい果物、儚さを象徴する静物画によく描かれるモチーフ


ソロモン

…賢王の争いとソロモンの知恵(神から)、エルサレム(信仰を外れる)

1-34. ニコラ・プサーン
【ソロモンの審判】
・均整の取れた画面が堂々とした印象を与える、左は真の母、右は偽の母
・頭や視線はやや左より、正しい者によりそう、赤と対比する緑、気の失せた顔色


1-35. ピエロ・デッラ・フランチェスカ
【シバの女王とソロモン王の会見】
・流行していた髪型、様々な方向を向いていて空間に広がりが生まれる
・こちらに眼差しを向け見る人を誘い込む


イスラエル王国の分裂

…ヤロブアムの偶像崇拝、北イスラエル滅亡とアッシリア、
南イスラエル滅亡と預言者エリヤ昇天

1-36. ジャン・オノレ・フラゴナール
【ヤロブアムの偶像崇拝】
・子羊を覆う影は畏敬の象徴であると暗示、上下の空間は影となり中央のドラマチックな場面を演出
・挙げられた両手により視線が子羊へ誘導される


1-37. ディルク・ボウツ
【荒野での預言者エリヤ】
・道が視線を後景へ誘導、蛇行する道はキリスト教徒が進むべき道だという解釈がある
・力づけられたエリヤが頑張る姿、パンと水で元気を取り戻す


1-38. レンブラント・ファン・レイン
【エルサレムの滅亡を嘆く預言者エレミヤ】
・左から光が当たり周囲は影となる、影は姿を際立たせ憂いを象徴する、静寂な空間
・素早い筆致で絨毯・金属の質感を捉える


1-39. ミケランジェロ・ディ・ロドヴィーゴ・プオナローティ・シモーニ
【預言者ヨナ】
・下から見上げた時に自然に見える技術、盛り上がった筋肉、ヨナを飲み込んだ巨大魚


バビロン捕囚

…ユダヤ人の概念の形成、ユダ王国崩壊

1-40. ラファエロ・サンティ
【エゼキエルの幻視】
・神を大きく描き、不思議な生き物も一体感を持って描かれる
・四福音書記の象徴、人間・ライオン・牛・鷲、神と預言者の出会い


1-41. ピーテル・パウル・ルーベンス
【ライオンの穴の中のダニエル】
・スポットライトのような光を受け祈りが効果的に示される
・ライオンは動物園でのスケッチをもとに描く、ダニエルを等身大にして恐怖を見る人に共感させる


1-42. ティントレット
【アハシュエロスの前のエステル】
・エステルがマリアのモデルとされている、磔刑の場で失神するマリアと重ね合わせられる


エルサレム再建

…異民族支配が続く、アレクサンダー大王、セレウコス朝シリア、ハスモン朝、ヘロデ王

1-43. 作者不明
【エルサレムの再建とヘロデ神殿】
・高い視点から壮大な姿をとらえる、煙は建物内で生贄が捧げられていることを示す


2. 新約聖書 36項目

洗礼者ヨハネの誕生

…天使ガブリエルから、ザカリアとエリザベトの間

2-1. ティントレット
【洗礼者ヨハネの誕生】
・女性たちは身をかがめ体の向きが階段の線に対応することで右のザカリアから向かう奥行きを強調
・鮮やかな衣装が画面を華やかにする、光輪もほのめかす程度、動物を焼いた骨は水を清めるのに使う


受胎告知

…天使ガブリエルから、マリアとヨセフの間

2-2. ヤン・ファン・エイク
【受胎告知】
・上にはヤハウェ、周囲は暗く旧約聖書の世界を象徴、言葉は上下逆さま
・マリアは明るくメシアの誕生を象徴、百合は純潔・春の象徴
・重厚な布・宝石の質感表現はヤン・ファン・エイクが完成させた


イエスの誕生

…馬小屋で誕生(祝福)、虐殺を逃れてエジプトへ、ヘロデ王の死後にユダヤに帰還

2-3. ヘールトヘン・トット・シント・ヤンス
【キリストの降誕】
・幼児・天使・焚き火の光が画面を厳粛にする


2-4. アントニオ・アッレグリ・ダ・コレッジョ
【羊飼いの礼拝】
・筋骨隆々とした羊飼いが中央のイエスへ視線を誘導、イエスの光の強さを物語る
・母性ある表現はルネサンス以降に生まれたもの、ヨセフの働く姿は父親として役割を強調


2-5. ピーテル・パウル・ルーベンス
【嬰児虐殺】
・冷酷に幼児をつかもうとする腕、必死に抵抗する母親、兵士は爪を立てられ血を流す
・亡くなった子を優しく抱く母親、劇的な表現、これぞバロック
・日焼けした肉体と白い肌の対比、美しい風景が壮絶な場面にすこいをもたらす


2-6. ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ
【エジプトへの逃避途上の休息】
・ラファエロの聖母から着想を得る、天使を背面から描くことで見る人は天使を同じ視点を共有
・ヨセフと讃美歌、聖書に記述されていない幻想的な光景


イエスとヨハネ

…イエスは才能発揮(博士と議論)、ヨハネは人々に洗礼を、メシア(救い主)が現れる

2-7. アルブレヒト・デューラー
【博士たちの間のキリスト】
・手のポーズが対応し合いリズミカルな動きを見せる、マリアなどは排除
・イエスの若さ・美しさと博士の老い・醜さを対比させイエスの聡明さが際立つ


2-8. レオナルド・ダ・ヴィンチ
【洗礼者ヨハネ】
・メシアが天から現れると表現、微笑みと強い眼差しが見る人を離さない、輪郭線を欠くスクマート


イエスの洗礼

…ヨハネは恐縮しながらイエスへ洗礼を、サロメ(ヘロデ王の娘)がヨハネを処刑

2-9. ピエロ・デッラ・フランチェスカ
【キリストの洗礼】
・鳩・ヨハネの手・イエスの頭が一直線に中心に描かれる、木やヨハネの体の縦の線で強められる
・旧約聖書から新約聖書への移行が示された幾何学的な絵画


2-10. クラーナハ
【洗礼者ヨハネの首を持つサロメ】
・不気味な微笑み、首は見る人と視線を合わせるよう、口の隙間から見える歯、切断面の鮮やかな赤


十二弟子

…ペトロの召命(漁)、聖マタイの召命(賭博場)、カナの婚礼(水をワインへ)

2-11. ラファエロ・サンティ
【奇跡の漁り】
・ツルは用心深い、用心は支配者に求められる美徳、教皇の守護
・左手を上げる、タピストリーでは右手となる


2-12. ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ
【聖マタイの召命】
・中央に斜めから入る光が描かれ人物の頭をここに集中させる、視線は自然と人物の表情に誘導される
・神を象徴する光が効果的に示され画面が崇高な空間に変わる、奇跡の瞬間を見事に切り取る


2-13. パオロ・ヴェロネーゼ
【カナの婚礼】
・小さいイエス、かすかな光輪、大宴会の様子、宗教画っぽくない


愛の教えと奇跡

2-14. フラ・アンジェリコ
【山上の垂訓】
・三次元的な立体表現と光輪を描く中世の表現が同居する


2-15. ティントレット
【ガリラヤ湖のキリスト】
・イエスを前景に描き対角に舟を小さく描くことで遠近感を示す、神の偉大さと人間の非力さの対比
・波の表現にインパストという絵の具を厚塗りする技法、マニエリスム的な引き伸ばされた体


救われた女性や罪人

…マルタとマリア(姉妹)、サマリアの女(娼婦) 、マグダラのマリア(悪霊)

2-16. ティントレット
【マルタとマリアの家のキリスト】
・風俗画的要素が強く 17 世紀以降人気のテーマ
・実践的生活・家事に勤しむ、瞑想的生活・イエスの話を聞く


2-17. アンニーバレ・カラッチ
【キリストとサマリアの女】
・スケッチと色彩を追求したカラッチの理想美が描かれる
・背後に大きな緯度を描く安定した構図の中に鮮やかな色彩がリズミカルに配置されている


山上の説教と譬え話

…善きサマリア人(憐れみの心)、放浪息子(神と人間)、盲人(自分の言葉を理解できない)

2-18. ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ
【善きサマリア人】
・うねるような筆致、祭司、レビ人


2-19. レンブラント・ファン・レイン
【放蕩息子の帰還】
・大胆な筆使い


2-20. ピーテル・ブリューゲル
【盲人の手引き】


イエスの変容

…ペトロの信仰告白、天国の鍵、山上で光り輝く

2-21. ペルジーノ
【聖ペトロへの天国の鍵の授与】
・ユダは浅黒い、コントラポスト、鍵は金と銀の2本


2-22. ラファエロ・サンティ
【キリストの変容】
・上下に分けた 2 つの場面が時間経過を効果的に示す、手振りにより感情を示し視線をイエスへ誘導


2-23. レンブラント・ファン・レイン
【ラザロの蘇生】
・イエスの右腕とラザロの頭を対角に描きイエスに導かれて蘇生するラザロを効果的に示す
・光は極力避けられスポットライトのような光が女性の額に集中して当たる
・女性の顔、イエスの右腕の白、ラザロの布が対応して見る人の視線を主要人物へ誘導する


エルサレム入場

…ロバに乗って入場し人々に歓迎される

2-24. ジョット・ディ・ボンドーネ
【エルサレム入場】
・背景に用いられた効果なラピスラズリが商人の財力を示す、上着を地面に敷く行為は歓迎を示す


イエスを陥れようとする

…税金と宮清め(牛、羊、鶏)、弟子の誤解(ユダヤ独立)

2-25. エル・グレコ
【神殿を清めるキリスト】
・イエスの怒りの感情はルネサンスならではの表現、裸体が遺教的な雰囲気を感じさせる、悪の象徴
・鮮やかな色彩・躍動感あふれる動きはヴェネツィア派の影響


最後の晩餐

…裏切り者(ユダ)の予告、パンとワイン(肉と血)

2-26. ニコラ・プサーン
【聖体の秘蹟】
・イエスの威厳、ユダは食事に加わらない、私のことでは?と問う


ゲッセマネの祈り

…苦難と死を恐れて祈りを捧げるイエス、ユダの裏切りで捕縛(接吻が合図)

2-27. ジョット・ディ・ボンドーネ
【ユダの裏切り】
・穏やかな顔と醜い顔、黄色はユダヤ人・娼婦が着用を義務付けられた過去がある
・フードを被る姿が緊迫した場面に不気味な印象を与える、ペトロは耳を切り落とそうとしている


死刑判決

…3人の権力者(ペトロの3度の否認)、ピラト(善)と群衆(悪)、エッケ・ホモ

2-28. ジョルジュ・ド・ラ・トゥール
【聖ペトロの悔悟】
・目から溢れた涙が頬をつたう、視線の先に髪を見ているような精神性溢れる表現、左足が見事
・強い光が内省する老人を照らし静かな世界が広がる、イエスを知らないといった後悔


2-29. ヒエロニムス・ボス
【エッケ・ホモ】
・頭から発する光が十字架を暗示、悪意に満ちた顔、剣は十字架を思わせ磔刑を繰り返し強調
・ヒキガエルは悪の象徴、絵の注文主が描かれるが消されている


十字架磔刑

…ゴルゴタの丘を歩く(十字架を背負う)、最期の言葉を残して死亡、十字架降架

2-30. ティントレット
【ゴルゴダの丘への道】
・背負う十字架が苦悩を思わせる、道も十字架も対角に描かれる、上下で明暗の対比


2-31. ディエゴ・ベラスケス
【十字架上のキリスト】
・茨の冠が受難を思わせる、頭は右に傾き体は美しく照らされる、足に打たれる針は初期の表現


2-32. ロヒール・ファン・デル・ウェイデン
【十字架降架】
・しなやかな肉体は美しさを追求し解剖学を無視、イエス以外の人は固い動き
・イエスとマリアは同じポーズ、見る人にも共有、アダムの頭蓋骨は原罪の象徴、磔刑でよく使われる


イエスの復活

…弟子達の前に現れ(ラボユ)使命を捧げる、イエスは罪を背負う、神との契約を一度壊す、復活により新しい契約を交わす、マグダラのマリア

2-33. ピエロ・デッラ・フランチェスカ
【キリストの復活】
・左右均等で安定した構図、左は枯木・死、右は緑木・生、死と復活の暗示
・前景にうまく描くために写実主義は放棄されている


聖霊降臨

…イエスの昇天、十二使徒が伝道を開始、ペトロが指導者

2-34. エル・グレコ
【聖霊降臨】
・マニエリスム的、引き伸ばされた体、ねじれのポーズ、赤い衣と青いベール、教会の象徴


弟子の伝道

…信者が増え2派に分かれる、福音をめぐる


ステファノの殉教

…ユダヤ人の罪を演説、迫害される、逃亡先で伝導


パウロの回心

…パウロはキリスト教を迫害、イエスの声を聞き回心し伝道する、ローマで消息絶つ

2-35. ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ
【聖パウロの回心】
・明暗のコントラストを利用して写実を徹底、欠陥まで描く、毅然とした様子でパウロを見つめる
・瞼を閉じた目の表現が光を失っていることを示す


迫害の時代

…十二弟子は次々と殉教、ヨハネは天寿を全う


ユダヤ戦争

…ユダヤ反乱でローマ軍殲滅、ユダヤ軍内部分裂、ハドリアヌスによりユダヤ人追放


ヨハネの黙字録

…迫害を受ける信者を励ます、7つの角と7つの目を持つ子羊が7つの巻物の封印を解く
→7人の天使が順にラッパを吹く、全ての 3 分の 1 が失われる
→終末の後は千年時代
→サタンが再び現れこの世に終末が訪れる
→最後の審判、左が山羊(悪)、右が羊(善)
→キリストの支配

2-36. ミケランジェロ・ディ・ロドヴィーゴ・プオナローティ・シモーニ
【最後の審判】


3. 一神教について理解する 11項目

3-1. ユダヤ教とキリスト教はどこが違うか?
→イエス・キリストがいるかどうか、あとはほとんど同じ

・ユダヤ教を否定しつつ一部を保存してその上にキリスト教がある
・仏教はバラモン教を否定、イスラム教はユダヤ教やキリスト教の再解釈
→どちらも一神教で神に対するのに預言者を挟む、キリストはその上位、預言者が重要でなくなった


3-2. なぜ神が一人であること(Godであること)が重要なのか?
→絶対的で怖さを感じるべき対象にしたいから

・多神教では神は人間みたい、大勢と仲良くしてネットワークを構築しよう
・一神教では神は人間ではない、人間を所有する絶対的な存在
→怖い神とどう付き合うか
❶神が何を考えているか、預言者に教えてもらう
❷神が考えている通りに行動する、安全保障
→これではよそよそしいのでキリストは愛を述べて近づけた


3-3. ユダヤ教はどのようにして成立したか?
→戦争の多いカナンにイスラエル人がきてヤハウェ導入
→バビロン捕囚で偉大さを感じると同時に律法学者が残ってユダヤ教のかたちにした

・ユダヤ人はエジプトとメソポタミアの間に位置するカナンにいた
・ヤハウェは戦争の神、日本の八幡と似ている
→戦争するには王が必要、ヤハウェが選んだとすれば作りやすい、王制とユダヤ教の結びつき
・北のイスラエルはアッシリアに、南のユダはバビロニアに(バビロン捕囚)攻略される、ヤハウェの命令
・ヤハウェに仕えるには
❶儀式をする(祭司)
❷預言者に従う(預言者)
❸モーセの律法を守る(律法学者)
→❶のグループは❸になるしかない、❷が弾圧されていく、ヨハネ


3-4. なぜ連戦連敗の中で神を信じ続けることができたのか?
→神を信じていれば国が消滅しても再建できると考えたから

・弱い民族が信仰していた、一番強い民族が信仰していた訳ではない
→アメリカとの安全保障が、国連との安全保障にすり替わる感じ
❶いじめられっ子の心理、自分にも何か悪いところがあるのでは?
❷ランダム性、たまに勝てると毎度今度こそ勝つのではないかと思う
❸イスラエル人の危機が二段階で起こった、イスラエル→ユダ、強い危機感をもった
・ユダヤ教もイスラム教も生活ルールまでワンセット、負け組と勝ち組の一神教、防衛的動機
・ヤハウェはすべての民族の上に立つがユダヤ人を選んで救済を約束、理由はわからないが感謝
・一神教では神が中心、人間と神の視点、不可解であることを受け入れることが神との正しい関係


3-5. なぜ全知全能の神が作った世界に悪があるのか?
→神が人間を導いていると認識させ、人間から神への対話をさせたいから

・人間の視点からでは欠陥だらけに見えるが神の視点からは完璧という説明は納得できない
→全知全能の条件を考える、神がいったん決めたことを後で変えることができるか、変えることができれば全知ではない
・仏教は唯物論、全てが自然法則に支配されている、儒教は自然をコントロールすべきと考える
・この世界の全ての出来事の背後に唯一の原因がある、神(責任者)がいる、祈り(対話が成り立つ)
→悪いことがあると神との対話を繰り返す、アーメン(対話に異議なし)、神の言うことを確認し合意する
・ヨブ記、財産や子供、健康を奪われてなお信仰をやめない、まだマシかも、試練(悪いこと)
・模範解答に不合格をつけるが正解を示しはしない、ユダヤ人の運命そのもの
・この世界が不完全なのは楽園ではないから人間に与えられた罰だから、アダムとイヴ
→なぜエデンの園に禁断の実が作られたのかは解けない、悪の説明の根拠になるが例外的な不合理


3-6. 原罪とは何か?
→罪を犯さない人間などいないということ

・ユダヤ教にはない観念、否定的なアイデンティティを得る
・罪、神に背くこと、禁止されていることを行う、命令に従わない
・原罪、罪を犯し続ける人間は存在自体が間違っている、罪を犯さざるを得ない本性を持っている
→人間は神に救われるのは無理だが、キリストを救い主と受け入れれば特別に救われるかもしれないとした


3-7. なぜ偶像崇拝してはいけないのか?
→人間が自分自身をあがめることになるから

・偶像、目に見える、感覚や知覚で捉えられる
・存在から不在までのレベル、存在の否定が存在の極大値であるという逆説を受け入れる
・日本以外では戦争で社会がぐちゃぐちゃになり宗教が登場、共通点は神の否定
・偶像だからいけないのではない、偶像を作ったのが人間だからいけない


3-8. 神の姿は人間に似ているか?
→似ていない、次元が違う

・神は人間世界の外部にいて人間とは連続していない
・ヤハウェに姿形はなかった、バビロン捕囚前後で創世記が編集、神の姿に似せて、矛盾
・人間は神に似ているが神は人間に似ていない、4次元の神を3次元に投影すると人間に似てるだけ、4次元で見るとバケモノみたいな可能性


3-9. なぜユダヤ教は強い権力に対して否定的なところがあったのか?
→部族共同体の性質が残り、かつヤハウェが圧倒的・絶対的で民主主義的平等を可能にしたから

・普遍宗教(儒教、仏教、キリスト教)は多民族が共存した帝国の宗教となる
❶寄留者、社会の正式メンバーではない、グリーンカード、制限
❷カリテート、外国人労働者にも一定の保護を与える
・古代の奴隷社会に異を唱える、ユダヤ教には原始的な遊牧民の態度が保存されている、権力を警戒
・預言者の推薦、長老の同意、預言者の批判、神という例外によって民主制が保たれた


3-10. 預言者とは何者か?
→神の言葉を伝えているとされる者

・人間が関係できないほどに隔絶しながら絶えず人間にメッセージを送ったり介入したりしなくては
・預言者はどのようにして真正性が保証されていたのか
→前期(霊に満ちた状態、サムエル)、本格記(国への警告、エレミヤ)、後期(書物になる)
・本当の預言者とは
❶これまでを踏まえている
❷現実と合致する
❸他の預言者に認められる
・信仰における決断という要素、神と人間の共同作業が必要
・奇蹟を信じる、世界は科学的で合理的だが預言者が預言者であると示すために科学を例外的に停止しただけ
→科学は奇蹟など信じてはいけないというのはマルクス主義の考え方に過ぎない


3-11. 信仰しているとはどのようなことか?
→態度・行動に宗教観が現れること、無意識(態度)のレベルで宗教的に規定されている

・聖書はあちこち矛盾しているため皆で相談して解釈を考える
・科学は自然の解明に取り組んだ宗教の副産物
・福音派、キリスト教と矛盾しない限りで科学を信じる、矛盾律に合わせて自分を律する
→日本人は矛盾律以前の問題、気がつかないし気にしない
・信仰には意識のレベルと無意識(態度)のレベルがある、現代は無意識(態度)のレベルで考えることが大事
→宗教がどのような態度・行動を作ったのかを知ると、現代の社会現象や文化について理解できる


4. イエス・キリストについて理解する 10項目

4-1. イエスは実在したか?
→実在した

・文書記録は福音書のみだが福音書はイエスの言葉を多く伝えている、どこまで実在のイエスのことか
・キリスト教はイエスの一連の出来事と独立していない、仏教、相対性理論とアインシュタイン


4-2. なぜ福音書が複数あるのか?
→イエスの言葉ではなくイエスについて証言をする書物であるから

・福音書によって肝心な部分(イエスの十字架での言葉、ユダの行動)について証言が異なる
→福音書は預言書ではなく証言をする書物であり証言は複数あったほうがいいので残った
・パウロの書簡でキリストは成立、福音書を見てない、ユダヤ教に収まらないから成立し福音書を促す
・イエス自身は何も書いていない、作者の視点や解釈の違いをはじめから認めるところが奥深い
・福音書の共通部分は歴史的人物としてのイエス、旧約の予言や復活は後から付け加えられた枝葉
・奇蹟はあくまで信じさせるためのもの、奇蹟が人間サイズ


4-3. イエス・キリストは神なのか人なのか?
→人であり神の子でもある

・実証科学的には人、信仰の論理的には預言者、神だとすると神が2人いることになってしまう
・マトリョーシカ、一番外側は知ってるイエス、一番内側は歴史的なイエス
→知ってるイエス、ナザレで生まれ旧約聖書を勉強し預言者のように行動、エルサレムで逮捕死刑
→歴史的なイエス、汝の隣人を愛せ、上着を取られたら下着も与えろ
→上乗せ部分、処女胎児、メシア、復活と神の子(一回り大きくする、ユダヤ教の考え方にはない)
・人の子という表現はメシアという意味、軍事的リーダー、解放者、平凡な意味と含みの二重性に依拠


4-4. イエスは何の罪で処刑されたか?
→神を冒涜した罪

・ユダヤ人が処刑してくれと言いローマ人が処刑、ユダヤはローマの属州、ヘロデ王家はヘレニズム的
→死刑判決は最高法院(サンヘドリン)、死刑執行を命ずるのはローマの総督ピラト
・ヨハネを殺される、ユダヤ人に敵意を持たれていて殺されることを意識、自分は神と言うかそれ相当
・イエスは自分を神の子だとは言っていない、皆に神の子だと扱われている状況を否定しなかっただけ


4-5. 神の子というアイデアはどこから来たのか?
→神の血縁を考えているのではない、ユダヤ教の枠組みで捉えられなかった結果

・陥りやすい勘違いはイエスがキリスト教の教祖だという解釈、教祖には自分のアイデアがある
→イエスには自分のアイデアがない、旧約聖書を前提とする、もしイエスに問えば自分のアイデアは旧約聖書にあると言うのでは
・預言者は神の言葉を聞いて話すがイエスは自分の頭にあることを話している、イエスはイエスで完結
・尊敬する師匠をわが父と呼ぶときがある、イエスはそれをヤハウェに適用したのでは
・キリスト教という新宗教の開拓ではなくユダヤ教の内部の革新運動
→終末論的状況では贅沢も贅沢とならない、終末とは天国に行くのではなく神の新世界に行くこと
→ユダヤ教の終末はユダヤ人中心の世界、キリスト教の終末は誰が神の国のメンバーかはわからない
→地に預金しないで天に預金せよ、ユダヤ教は集団と神の契約、キリスト教は個人と神の契約
→救いの基準は示さない、説明しないのが一神教の本質、救うのは神で人間は努力で救われたりしない
→救われたければこの社会が間違っていると思わなければならない


4-6. なぜイエスは人間の世界に直接介入するのか?
→人間が皆救われるようにルールを変えたいから

・キリスト教では神そのものが歴史の中に入ってきて被造物のように振舞っている、特定の時間と場所
→ノアの洪水(処罰)がありモーセの律法(契約)で規範を、イエスが現れるその時が最後の審判か
・すでに神の国があるが誰も入れない、イエスの磔刑で贖罪の論理により全員救われる
→イエスが人として現れ人間の罪を背負って死ぬ、イエスは人間に復讐する資格も赦す資格もある
・律法に従わない人が多いため契約を更改する、律法に従うゲームから愛のゲーム(チャンスを信じる)へ
→ルールを変えてまで人間を救いたいという神のメッセージと受け取るかは信仰するかで決まる
・隣人愛の隣人とは罪深い人、ダメな人、よその人、嫌な人、身近な人を優先するわけではない
・愛は律法が形を変えたもの、どちらも神と人間の応答、枠組みはそのままで基準をなくす
・ヤハウェがアブラハムをナンパして応じた、これは愛、隣人愛の一番大事な点は他人を勝手に裁くなということ


4-7. 贖罪の論理とは何か?
→罪のないイエスが処刑されて死んだことはすべての人間の罪の償いである

・人間には罪があるからヤハウェに罰せられる、イエスが引き受けると済んでしまい人間は赦される
・同害報復説、目には目を、神は自分の子を殺しているので同害報復ではないがこれが神の計画
・アブラハムがイサクを殺害しようとした時に人間に借りができていた、神も契約を無視できない


4-8. イエスは自分が復活することを知っていたか?
→知らずに人間として死んだ

・イエスは100%人間であり、100%神の子であるとすれば矛盾がない
→心を動かされるのはイエスが人間として苦しむ姿を見るから、惨めに死んでしまうから
・ユダは救いようがない、イエスは最後の晩餐で裏切らずにはいられない状況を作った
・イエスは殺されるのを避けたい一方で殺されなければ終わらないことも知ってた、暗示が必要
・ユダが神の計画を完成、動かしているのは神なのかとさえ考えられる、信頼があっても相談できない


4-9. イエスの例え話で首をかしげるものはあるか?
→不正な管理人の例え、ブドウ園の労働者の例え、放浪息子の例え、九十九匹と一匹の例え、マリアとマルタ、カインとアベル

・金持ちが管理人を雇う、勝手に借金減額、金銭の貸借を友愛に変換、赦せば赦される
・労働者ABCDを順番に雇う、どの者に対しても1万円支払う、いつから洗礼をうけてもいい
・2人の息子に財産、弟は浪費して戻ってくる、自業自得なのに父は歓迎、死んだのに復活したから
・99匹の羊を置いて一匹を探しに行く、見つけた喜びは99匹を忘れるほど、社会常識を超える
・イエスが姉妹を訪れる、準備する者と話を聞く者、どうでもいいことを気にしている、嫉妬するな
・アベルの献げものを喜ぶ、カインはアベルを殺し追放される、愛される者と愛されない者がでてくる


4-10. キリスト教をつくったパウロは何者か?
→もともとキリスト教の弾圧派だった男

・キリスト教の弾圧派から擁護派へ、サウロという名前、知識は尋問で得る、キリストに会って回心
→尋問してるうちに意識できない深い罪責感と自己処罰の感情が蓄積、無理に続け爆発的な回心へ
・論文のような文章、イエスの言動の論理を取り出し意味づけたおかげで歴史全体を規定する構造になった
・ギリシャ語がよくできた、弟子はヘブライ語、ヘレニズムには伝わらない、パウロの名を借りる
・最大の貢献は教会ができたこと、日曜日に食事を済ませてから、パンとぶどう酒
・キリスト教かは服装では分からない、教会があり信仰が観察できない、ローマ人は弾圧から利用へ


5. キリスト教はいかに西洋をつくったかを理解する 11項目

5-1. 聖霊とは何か?
→キリストについての人間の解釈を聖書に組み込むための権威

・近代化とは地球的規模の西洋化とも捉えられる、西洋世界の根幹にはキリスト教があった
・三位一体、父なる神、子なるキリスト、聖霊、実態は1つ、位格は3つ
→イエスが現れる段階で預言者は用済み、残された神との連絡手段は聖霊
→ネットワーク作用はあるが空気とは異なる、人と人は結果的につながるに過ぎない
・パウロはキリストをどう考えるかという解釈を述べる、そう考えさせたのは聖霊とする
・人間の解釈を下さないと教会がまとまらない、公会議で正統を、7回繰り返す、政治的権力


5-2. どうしてキリスト教はカトリックと東方正教に分かれたのか?
→キリスト教のスポンサーであるローマ帝国が東西に分裂したから

・プロテスタントは「カトリックにプロテストする者」であり広い意味ではカトリックの流れに属する
→皆平等(ヒエラルキーをつくらない)、統一(ヒエラルキーをつくる)、二つの組織原理を組み合わせる
・長老、主教、大主教、総主教、5つあるうちコンスタンティノープルとローマが残る
・ローマ帝国分裂によって公会議が開けなくなる、解釈が食い違ったまま、ラテン語かギリシャ語か
・西ローマ帝国はすぐに滅びたがあの地域の文化の歴史的影響力は強い、EU
・政治的権力と宗教的権威が明確に二元化していた、皇帝と教皇、西側は帝国が解体し一緒にならない
・西側ではドルイド教(ケルト人)を信仰、ゲルマン民族、封建制で共存
・スポンサーがいなくなっても教会はローカル権力と繋がらずに教会の統一と独立を保つことに注力
・ラテン語にすれば商業や外交など情報戦に有利になる、ネットワークを構築しているからこそできる
・政治への介入、一神教の論理を用いる、悪魔や地獄などで脚色、政治を上回る救済権限を宣伝
・結婚への介入、正式な結婚は教会で、相続権は結婚から生まれる、聖職者は独身で問題が起きない
・東方正教は現地語を使ってく、カトリックは聖なる言語(ラテン語)限定、ルターがドイツ語に
・キリスト教は論文、学説をラテン語で、大きな役割を果たすのは絵画、音楽、儀式、弱みが強みに
・王の登場、日本でいう一円支配、教会はキングを応援、イスラム教は教会ないので戴冠できない
・カトリックの普遍性と王のナショナルな地域性により主権国家の観念が育まれる


5-3. どのようにしてキリスト教と哲学が融合したか?
→哲学における理性を宗教的な意味で再解釈することによって

・古代ギリシャで生まれた哲学が発達したのはキリスト教と一体化したから
・アリストテレスの哲学はキリスト教に都合の悪いことも書いてあるのに無理矢理整合性をつける
・自然法(神の法の見える部分)は理性で発見できる、理性の届かない先に信仰のもたらす知識がある
・宇宙に理性を適用したら神の意図が見えるのでは、自然科学へ(ニュートン)、社会科学へ(ルソー)
・神の存在証明をしようとする、中世以降は存在とは何かを問うことが哲学、自明にも関わらず
・神の存在証明は信仰なしで理性の先へ、過剰な努力、矛盾しているので気にしなくてもいいのに
・神が存在するとペンが存在するは同音異義語、存在の類似性、同じ意味ではないが類比の関係にある
・解けない問題を必死に解こうとしたからポジティブな知の体系ができた


5-4. キリスト教がリードしていたイスラム教を逆転したのはいつか?
→宗教改革のとき

・イスラム教は預言者を否定しない、クルアーンで足りない場合の法の規定、ムハンマドの後継者決定
・近代化で大事なのは自由に法律を作れること、新大陸の発見、資本主義、科学の発達と産業革命
・教会は作らない、ローマ帝国の法律、ゲルマン慣習法、コモンローも終了、議会制民主主義が始まる
・キリスト教が考えるのは何がやりたいかと禁止されていないか、禁止されていなければできる


5-5. 宗教改革とは何か?
→神からのものと人間のものを分けて、神と人間の関係を正しくする

・聖書中心主義、神からの最大のメッセージはイエス、証言による聖書、神–聖書–人間
・カトリックは根拠のない伝承に基づき聖人崇拝や煉獄の教え、免罪符を行う
・プロテスタントは教会なしでいい、投資家のような考え、教会も M&A のようなことを行なっていた
・教会なしでいいから聖書を正しく解釈してほしい、俗語の聖書も出てきた


5-6. 宗教改革と商業との関係
→宗教改革は大航海時代が始まるきっかけ、資本主義の誕生、利子の解禁

・新大陸発見、宗教改革はキリスト教内に戦争を起こし負け組に新大陸発見の動機を生む、大航海時代
・資本主義、カルヴァン派のもたらすエートス(生活態度)が資本主義につながっている、予定説
・人間は救われるかは決まっていてあらかじめ知ることはできない、宝くじ、いつ抽選してもいい
・ゲーム理論、神(救済する、救済しない)、人間(勤勉、堕落)、堕落が支配戦略
・ゲームからはみ出していることを証明したい、堕落が支配戦略のなかで勤勉な人は神の恩寵の表れ
・利子、キリスト教で禁じられていたが資本主義では必要、異教徒から借りればいい、ヴェニスの商人
・困窮した同胞に追い打ちをかけるな、ビジネスを始めるためなら、利子が認められる余地はあった
・東インド会社の設立、投資に利益を配分するシステム、煉獄の教え、利貸しが救われる可能性も
・産業資本主義が普及してから利子が発展、担い手はプロテスタント、煉獄との相関は強くはない


5-7. 宗教改革と自然科学との関係
→宗教改革は自然科学が生まれるきっかけ

・宗教の否定に自然科学を用いるのはナンセンス、自然科学はプロテスタンティズムから生まれている
・アリストテレスの自然学は根本が相容れない、科学革命以降の知は根本のロジックは今と同じ
・人間の理性に対する信頼が育まれたから、世界を神が創造したと固く信じたから、地球は空き家
・ユダヤ教、イスラム教、東方正教は宗教法がある、知識人はまず宗教法の解明と発展を考える
・キリスト教には宗教法がない、途方にくれ神学、哲学、自然科学をやって創意工夫する必要
・プロテスタントは神を絶対化、物質世界の前で理性を備えた自分を絶対化できる、公理系、絶対王政
・真理の基準が聖書などのテキストから自然そのものへ、経験科学がでる
・ガリレオ、アリストテレス主義者は真理は本の中にあると思っているが自然こそが偉大な書物である


5-8. 宗教改革と社会・政治との関係
→宗教改革は民主主義・芸術を発展させるきっかけ

・民主主義などは宗教色を脱した概念(世俗化)、実はキリスト教が生み出している、神のアナロジー
・立法権(ローカルな世俗法に従った)、人権(神が与えた)、価格決定(安価、生産量上昇は望ましい)
・芸術の内容が世界標準になったわけではない、讃美歌や宗教画にキリスト教は影響を及ぼしたが
・形式が世界標準になった、調性や平均律(音楽)や遠近法(絵画)
・音楽、イスラム教では禁止、キリスト教では曖昧だった、ユダヤ教の朗唱、楽器が教会に入る
・絵画、偶像崇拝は禁止されていたが絵で見せるしかなかった
・プロテスタントは音楽を簡素にし絵画を教会から排除、静物画や風景画を書いた、本流は宗教画


5-9. キリスト教とカントの哲学との関係
→キリスト教から脱した地点こそ、キリスト教の影響によって拓かれているという逆説を現す

・科学革命の時代のデカルトからカントの流れが近代哲学が誕生し成熟する過程
・生まれつきプロテスタントだが哲学は神やキリストを前提としていない
・カントの認識論や道徳論の妥当性を判断するとき神の存在を無視しても良い、全体はキリスト教的
・定言命法、いついかなるときも絶対に従わなければならない倫理的な命令、カント流の隣人愛
・自分が行動する原則(意思の格率)、普遍化できるか、できたらどうなるか


5-10. 無神論者は本当に無神論者か?
→無神論はほぼ不可能

・マルクス主義は無神論を主張しているが世界観や歴史観はキリスト教の終末論の再現
・宗教は行動においてそれ以上の根拠をもたない前提、証明できない前提
・日本人の考える無神論は神に支配されたくないという感情から生まれている、努力が好きで神任せが嫌い
→多神教であれば神一人当たりの勢力は低くなり人間の主体性が発揮しやすい
・像を作らない理由、キリスト教は本物の神に従いたいから、神道では拝んで従うのがいやだから


5-11. キリスト教的西洋文明の今後はどうなっていくか?
→分からない、自分たちで限界や問題を認識して乗り越えよ
・キリスト教的西洋文明と異なる文明が出会い衝突
❶イスラム世界❷ヒンドゥー世界❸中国世界
→❷と❸は資本主義モードに入って成功、残るは❶、モノを作るのが下手、商業の才能がありすぎる
・日本はアミニズムと関係、モノに魂が宿る、現場のルールが出て消えて、法の支配を実行できない
・インド、中国、日本は法律を作りやすい、イスラムはイスラム法が立派すぎて整理できない


おわりに

ここまでご覧いただき、ありがとうございます。
修正すべき点やご意見などあればXでお声をいただければと思います。
修正の際は、番号を指定して、フォーマットをなんとなく合わせていただけると助かります。

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