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UXという言葉の浸透した組織から、デザインと『実感』の必要を考える

🎄🎅MoneyForward Design Advent Calendar 2023 21日目の記事です🧑‍🎄🎄

「体験」とか、「課題」とか、「価値」とか、「品質」とか。そんなワードをこの一年でどれだけ使ったんだろうか。

こんにちは、マネーフォワードでデザインマネージャーをしているジーラムです。今年は個人的に、より広い関わりのなかでデザインに触れた一年でした!

でも、ふりかえればふりかえるほど「今年もがんばったね!」「よかったね!」で終わらせたくない想いが湧いてきました。何かが足りなかったのです。いつか忘れていた、渇望した、それは何なのか。
私が感じた気づきを、組織で実施したワークショップや社外活動とあわせて、散文として残します。

オフラインイベントが続々と復活し、それまでの世界とまた変わっていく感覚のあった今年。あなたはどこでどのような『実感』を得たでしょうか?


分かったつもりになっていた

コロナ禍からビデオ会議やチャットツールが浸透し、アフターコロナとなった現在でも、デジタルのコミュニケーション手段が便利に生活を支えてくれています。私個人もリモートワークや家庭でその多くを享受しています。

便利さを享受しながら、しかしなんとなく“分かったつもり”になって満足しているような。冒頭で挙げた「体験」や「価値」といったビッグワードを頻繁に使い、それで済んでしまうような。何か大切なことを忘れているような。そんな感覚をもっていました。

2023年はオフィスへの出社やオフラインイベントが増えてきました。私自身もそうした変化の中にありましたが、先に抱いていた対面で、生身の他者とのコミュニケーションがその感覚を思い出させてくれました。

失っていたのは『実感』です。ビッグワードでは表せない、場の空気。画面には映らない姿勢や表情。見え隠れする思惑。その他あらゆる周辺が伝える、生身で感じ取るリアルならではの実感は、やっぱ違うなと感じました。

自分は「他者の体験」を考える仕事をしてきました。他者の体験を考える、というのに、リアルな実感がなく「分かったつもりになっていた」なんて、ちょっと怖くなりました。

環境や関わる人々がそれに気付かせてくれました。

あらゆる方が「UX」を語る環境で

私の働くマネーフォワードは、自社のバリュー「User focus」を掲げており、職種に関係なくあらゆる人が「UX」という言葉を使います。

イメージしやすいところで、ユーザーとのフロントラインに立つのはビジネスの方々やカスタマーサクセスの方々、サポートの方々、マーケターの方々。他にも多くの方が「ユーザー」や「UX」のことを考えています。入社時はすごいと思いました。

制作や開発の閉じた世界だと誤解しがちですが、「UX」は作り手の既得権益でなくユーザーのもの。そして作り手であるデザイナーやエンジニアなど開発の関わる人が、ユーザーである人の前に立ち、その行動をみて、声を聞いて、解像度高くユーザーを知る機会はまだまだ少ない。と思っています。

しかし一方で、見聞きしたり知るだけでは『実感』まで進まないこともあると考えています。同じく自社のバリューには「Tech & Design」があり、それを叶え届けるカルチャーがあると思っています。(今年新たに「Design」が表現されました。)

持論にはなりますが、どれだけ強いコンサルプランをもっていても、モノがないことには何にもなりません。モノを介した体験も、それを利用する人がいなければ成立せず、相手の実感として擦り合っているのかどうかも分かりません。

デザインとテクノロジーでユーザーに新たな感動を届けたい。作り手、デザイナーである自分には何ができるんだろう?誰かになんらかのリアルな実感を届けることができるんだろうか。自分自身のバリュープロポジションを探しているような思索が増えました。

バリュープロポジションキャンバス

こういう環境で働かせてもらって、あらためて根源的な問いを浮かべながら、ある歌詞を思い浮かべるようになりました。

何がキミのしあわせ?何をしてよろこぶ?

日本の幼児には「アンパンマン」が人気ですね。泣く子に、自分の身を分け与える姿は、自分も幼少期にみて憧れに思っていたようです。

もうそんなかわいかったであろう頃の姿も記憶もない中年となり、子を授かった私ですが、特にきっかけもなく、なぜだかそのオープニングソングのアンパンマンマーチをよく思い浮かべるようになりました。

何がキミのしあわせ? 何をしてよろこぶ?

そしてこの歌い出しがバリュープロポジションのように見えてきました。どういう着想なのか、自分でもよく分かりません。探していた意味を無理やりこじつけてみました。(あくまで個人の解釈です)

バリュープロポジションマーチ

あなたと私。ユーザーと提供者。それぞれに良いと思うものは違う。何をすべきか、それはこちらの施策であり、相手の中にある何とは違う。

作ったものがいいのかわるいのか、何がなんだかわからないまま終わる。「実感」もなく、「分かったつもり」で?そんなのはイヤだ。

だからどうしようか。その意義を確かめたい。実感を得たい。けっこう悩みました。

「アレ」とそれぞれの実感

実感を得るにも、恵まれた環境以外の場所で自ら確かめたい。オフラインの「実感」をもって探求できる場所を探したい。

そんな個人的な欲求や、コロナ明けでおそらく同じ思いを持つ人がいるだろう、という期待から、今年はまだオフラインイベントの少なかった関西でローカルコミュニティを作ってみました。

わいわいたのしくやってます

その中で自分も発表してみました。ローカルな体験や価値が共有されている「アレ」。「アレ」を実感させるものは何なのか。

アレをアレさしめているものは何か?
概念や文脈を共有してるから感動できる

発表後にお話するなかで、それぞれの方がそれぞれの「実感」をもって伝えてくれました。そこには共通する文化、カルチャーがありました。カルチャーは同じなのに、実感はそれぞれに異なる。

ここでU-Siteさん掲載の設計品質(客観)と利用品質(主観)の違いや、同じ場所で働く佐々木さんの記事を思い出しました。

「アレはマグレ、ラッキーやわ」という方がいれば「アレは泣いた」という方もいて、実感は各者各様。でも、文脈も解釈も違えど、みんなでその場その時の、その出来事を楽しんでいる。そう考えると、違いはそれぞれの実感をさらに深めてくれるものなのかな、ぐらいにも思えました。

私は会社と離れたこのコミュニティ活動で、それぞれが受けたそれぞれの実感とその根底で共有しているカルチャーの関連性を強く感じました。

(この場でいうのもなんですが、コミュニティメンバーのみなさん、ありがとうございます。大変おもろいのでコミュニティは来年も続けます。)

カルチャーは実感を求める

3つほどカルチャーに関係する活動をご紹介します。

時期を同じくしてマネーフォワードの中でデザイン組織が掲げる「Designer Credo」「Designer Culture」がアップデートされました。

クレドとカルチャーの浸透させるワークショップをしてほしい。ご相談を受けたタイミングで、カルチャーと実感を考えていた私は速攻お返事させていただき、ワークボードを設計、実施しました。

ワーク導入時の期待効果「自分なりの実感を得る」

ワークを実施した2つのカンパニー組織の60名ほどのデザイナーが「Designer Credo」「Designer Culture」をそれぞれの解釈と実感で共有する機会になりました。

枝に葉をつけたり、草原で水を得るようなボード設計でした

結果を眺めると、そこにはたくさんの解釈が表されており、組織の中で多様な人々が同じものを共有しているのだと感激しました。また、違いがあってはじめて、相対的に自分個人の実感もあるのだと感じさせる結果となりました。

また別の大きな催しとして、弊社90名以上のデザイナーが一堂に集まるイベントで「感動」を叶えるアイディエーションワークに取り組む機会もありました。自分はひとりの参加者として参加しました。

ワークでチームを組んだデザイナー同士が積極的に価値観を共有、共感できたことで、他者の何が「感動」なのかは分からないがこれは絶対に良い!と自分として「実感」ができ、自然と手を挙げて発表することができました。そのうえ発表時に即興劇をしたようですが、あまり記憶がありません(アルコールは入れていません)

直接、間接のいずれでも、何かをつくろうとするとき、その人や組織のカルチャーが色濃く反映されることを、今年も個人として実感することができました。こうした実感の必要を、より広く伝えていきたい気持ちがあります。

最後に。話は社内外を行ったり来たりしてすみませんが、12月3日 Spectrum Tokyo Festival 2023で実施した「ワークショップデザイン入門ワークショップ」では、短い時間で「意思」と「場」を考える機会にしました。念頭には「同じ場所」「違う実感」があり、これも自社のカルチャーを背景につくれた機会だったと思っています。

組織を超えて、会社を超えて、しかしどれだけ遠くにいっても、人の実感に向き合うことは変わらないなと。上辺の言葉だけでないその人自身の実感とそれが活きる場が必要になる。

言うは易く行うは難し。言葉だけで分かったつもりになっていては、難しいことだってたくさんありますね。というわけで総論です。

デザインに『実感』を取り戻したい

今年一年を通して、うまくいかないこともたくさんありました。その中で「分かったつもり」を知れたこと、それが多少の「実感」をもって確かめられたことは個人的に大きな気づきでした。ふりかえると、個人だけで気づくことはできない実感ばかりでした。

つくること、表現することを恐れず、もっと誰かの『実感』に触れるような、そんなデザインやデザインコミュニケーションの機会を今後もつくりまくっていきたいなと思います。

オフラインが増えていく昨今、あなたはどう感じたでしょうか?
想像を通じて、ものづくりに関わるあなたの『実感』に触れたならうれしいです。人肌恋しくなる寒い時期。お身体に気をつけて年末までかけぬけましょう。

雑文のご拝読ありがとうございました!


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次は同じ部のボス、あかりさんです!信頼感しかない。どうぞおたのしみに!!


もし、サポートいただけるほどの何かが与えられるなら、近い分野で思索にふけり、また違う何かを書いてみたいと思います。